ローカルグローススタジオは、『地方企業にスタートアップのような成長を』というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
新しい事業の案はあっても、何から決めればいいかが分からず、話が進まないことがあります。設備や人の手配が先に動き出し、いくら売れば黒字になるのかが決まらないまま、準備だけが進む会社もあります。
新しい事業に取り組んでも、結果が出るとは限りません。日本政策金融公庫総合研究所の調査(2026年9月公表)は、最近5年間に、これまで自社でまったく扱っていなかった分野の新しい事業に取り組んでいる会社に、その事業をどう評価しているかを聞いています。
「成功」か「どちらかといえば成功」と答えたのは、中小企業(原則として従業員20人以上)でも小企業(原則として従業者20人未満)でも約半数でした。4割強は「まだわからない」と答えています。
進め方が分からないときは、スタートアップが事業を立ち上げるときの型を参考にできます。その型のうち、この記事で取り上げるのは、誰に何を届けるかを決めるターゲット設定と便益整理、お客様1人あたりの採算が合うかを確かめるユニットエコノミクスの検証、必要最小限の機能ですぐに市場に出して反応を見るMVPの3つです。
この型を参考に、誰に何を売るか、いくらで何個売れば黒字になるか、何をどの順で小さく試すかを、1つの事業計画にまとめるところから始めます。計画があれば、設備や人に大きなお金を使う前に、小さく試した結果の数字を見て、続けるか、広げるか、やめるかを判断できます。
この記事は、新しい事業を作る「新規事業開発」について、2種類の読者に向けて書きました。1つは、事業計画を作ると何が決まるのか、まだイメージを持てていない方です。もう1つは、イメージはあるものの、自社で進められるのか、外部の専門家に頼むべきか迷っている方です。
私たち(ローカルグローススタジオを運営するつなぐスタジオ)の新規事業開発の支援では、新しい事業の便益(誰に、何を、どんな独自性で届けるか)を整理し、収支モデル(価格と売れる数の見込みから売上、費用、利益を並べた表)と検証計画を作ります。そのうえで受け皿(サイトと問い合わせ導線)を用意して最初の問い合わせや注文の数を記録し、事業計画とタスク管理表にまとめます。
前半は、まだイメージを持てていない方に向けて、私たちが支援した新規事業の進め方と、事業計画で決まること、費用をかけずに始める順番を書きました。
後半は、外部に頼むか迷っている方に向けて、自社でやる範囲と外部に頼む範囲の境目、外部への頼み方、費用と補助金、納品物の確かめ方を書きました。
この記事で分かること
まだイメージがない方向け
- 観光農園の収支モデルづくりや、D2Cブランドの新商品の便益整理などの、私たちの支援事例の紹介
- 大きな支出の前に、誰に何をいくらで売るかと、何から試すかを決める
- 赤字が続く場合に備え、既存事業の利益で何年支えられるかを先に計算する
- 既存のお客様を書き出し、収支モデルを作るところから始める
イメージはあるが次の一手に迷う方向け
- 収支モデルを作るまでは自社ででき、見込みの裏付けと試す順番は専門家に相談すると早い
- 収支モデルを自社で作れるなら助言を、試す順番から決めたいなら計画づくりの伴走を頼む
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、事業計画を自社で書き、外部には助言を頼む
- 自分で進めるなら、ExcelやGoogleスプレッドシートと公的な相談窓口で始められる
- 新しい事業の売上とお客様の数は、収支モデルの見込みを目標にして毎月比べる
- 納品物は、売上の根拠、次に進むかを決める数字、担当と期日が書かれているかで確かめる
1. 私たちの支援では、大きな支出の前に、誰に何をいくらで売るかと、何から試すかを決めている
製造業の会社が始めた観光農園では、収支モデルと事業計画づくりを支援している
支援先の1社は製造業の会社で、新しい事業として観光農園を立ち上げています。私たちは、この観光農園の収支モデルと事業計画づくりを支援しています。
D2Cブランドの新商品では、誰が何のために買うかを分ける便益整理を行い、価格の組み合わせを提案した
便益整理は、便益整理の始め方|受注データから顧客を分類する3ステップで「自社のサービスの提供価値を、ターゲット群別に2〜10個程度に分類すること」と説明している作業です。D2Cブランドの支援先では、新商品を買う人と買う理由をパターンに分けたうえで、どの理由で買う人に向けて、どの価格の商品を用意するかを提案しました。
設備や採用にお金を使う前に、売る相手、黒字になる売上の額、試す順番を決めておく
新規事業開発で私たちが作るものは、次の6つです。どれも、設備の発注や採用のような大きな支出の前に作り、中身を確かめておきます。
| 作るもの | 中身 | できるようになること |
|---|---|---|
| 便益整理シート | 誰に、何を、どんな独自性で届けるかです | 新しい事業で、既存の技術や販路のどれを使うかを決められます |
| 収支モデル | 価格と売れる数の見込みから、売上、費用、利益を並べた表です | いくら売れば黒字になるかと、赤字が続いた場合に何年支えられるかが分かります |
| 検証計画と結果 | 何をどの順で小さく試し、何が分かれば次に進むかです | 大きな投資の前に、どの見込みを先に確かめるかを決められます |
| 受け皿 | 新しい事業を知った人が内容を確かめ、問い合わせできるサイトと問い合わせ導線です | 広告や営業にお金を使い始める時期を決められます |
| 初期の獲得データ | 最初の問い合わせや注文の数です | 収支モデルの見込みが合っているかを、早い段階で確かめられます |
| 事業計画とタスク管理表 | 誰が、いつまでに、何をするかです | 定例の打ち合わせで計画と実績の差を見て、次の一手を決められます |
2. 何を目的にするか
新しい事業の数字は、会社全体の売上と分けて見る
日本政策金融公庫総合研究所の調査(中小企業編)では、新しい事業が売上全体に占める割合は、「0%超10%以下」が60.9%で、「0%」も21.1%ありました。最近5年間に取り組んでいる事業について聞いた数字で、多くの会社では、新しい事業の売上は会社全体の1割以下です。
会社全体の売上だけを見ていると、新しい事業が計画どおりに進んでいるのかを判断できません。新しい事業の売上、利益、新しいお客様の数は、既存事業と分けて記録し、事業計画の数字と比べる進め方をおすすめしています。
黒字になるまで赤字が続く場合に備え、既存事業の利益で何年支えられるかを先に計算しておく
久原本家グループの事例では、初めての自社ブランドだった辛子明太子「椒房庵」は、黒字化まで9年かかりました。
記事では、9年間の赤字を許容できたのは、業務用のたれやスープを作るOEM(相手先のブランドで生産する事業)が生む資金と、家業として長期で判断できる立場の両方があったからだと書いています。
新しい事業に取り組むうえでの問題点として、「新事業に必要な資金の確保が難しい」を挙げた小企業は28.7%でした(日本政策金融公庫総合研究所、小企業編)。
収支モデルで、黒字になるまでに必要な資金と、既存事業の利益で何年支えられるかを計算しておくと、途中で続けるかやめるかを決める基準になります。
3. どこから始めるか
まず、既存のお客様と受注の理由を書き出し、新しい事業で誰に何を届けるかを言葉にする
新しい事業の分野を選んだ理由で最も多かったのは「自社の技術・ノウハウを生かせるため」で、中小企業で55.6%、小企業で61.2%でした。中小企業では、「自社製品・サービスの提供ルートを生かせるため」が42.6%で続きます。
自社の新しい事業を「成功」か「どちらかといえば成功」と答えた中小企業では、この2つを理由に挙げた割合が、「失敗」か「どちらかといえば失敗」と答えた中小企業より高くなっていました。技術・ノウハウは57.3%と49.3%、提供ルートは43.6%と34.7%です。
自社のどの技術や販路が選ばれてきたかは、既存のお客様の注文の決め手から分かります。私たちの新規事業開発も、既存事業のお客様と受注の理由を整理するところから始めます。この整理は、費用をかけずに自社で始められます。既存のお客様から便益を整理する手順は、便益整理の始め方で詳しく説明しています。
1. 既存のお客様を1社ずつ並べ、業種、規模、注文の決め手を書き出します
2. 注文の決め手が似ているお客様をまとめ、自社のどの技術や販路が選ばれているかを見ます
3. 新しい事業で、誰に、何を、どんな独自性で届けるかを1行で書きます
受注の記録や商談のメモをChatGPTやClaudeなどのAIに読ませて、お客様ごとに業種、規模、注文の決め手を並べた表に整理させることもできます。お客様の社名や担当者の名前、連絡先が入った記録を読ませる時は、AIに入力してよい情報の決まりを先に社内で決めておきます。
次に、価格と月に売れる数の見込みから収支モデルを作り、いくら売れば黒字になるかを出す
収支モデルは、価格と、月に売れる数の見込みから売上を出し、原価、人件費、設備の費用を引いて作ります。売上の見込みには、単価と数量の根拠と、売る予定の相手を書いておきます。売上と費用をお客様の数で割った金額も出しておくと、お客様1人あたりの採算が合うかも確かめられます。
価格について、間違ってはいけない戦略の順番|ビジョン→事業→商品→営業→組織では、社内や知人の意見で決めず、ターゲットが感じる価値をもとに決めると書きました。
同じ記事では、価格設定の出発点として、ターゲットがその商品のない今、課題をどう解決し、その代替策にいくら払っているかを調べることを挙げています。
試す順番を決め、受け皿を用意してから集客にお金を使う
検証計画では、収支モデルの見込み(価格、売れる数、売り先)のうち、どれを先に小さく試して確かめるかを決めます。試すことごとに、続けるか、変えるか、やめるかを決める数字を、試す前に書いておきます。
新サービス開始時のステップをおさらいでは、新しいサービスを始めるときは、サービスの設計と受け皿の整備を、集客の施策より先に行う順番を書きました。
受け皿は、顧客がサービスを知り、理解し、安心して問い合わせできる環境のことです。同じ記事では、受け皿が整う前に広告を出すと、問い合わせに至らなかった理由が、サイトにあるのか、広告にあるのか、サービス自体にあるのかを切り分けられないと書きました。
4. どこまで自社でやり、どこから外部に頼むか
収支モデルを作るまでは自社ででき、見込みの裏付けと試す順番は専門家に相談すると早い
既存のお客様と注文の決め手を書き出し、新しい事業で誰に何を届けるかを1行で書くところまでは、自社で進められます。価格と月に売れる数の見込みから収支モデルを作るのも、ExcelやGoogleスプレッドシートがあれば自社でできます。
外部の専門家に相談すると早いのは、価格と売れる数の見込みの裏付けを取ることと、何をどの順で小さく試すかを決めることです。検証計画の案は自社でも書けますが、どの見込みから確かめるかは、ゼロから事業を立ち上げた経験がないと決めにくくなります。
日本政策金融公庫総合研究所の調査(中小企業編)でも、新しい事業に取り組むうえでの問題点として、「製品・サービスの開発に必要な専門知識・ノウハウが不足している」を挙げた会社が34.4%ありました(3つまでの複数回答)。
受け皿のサイトを作り、最初のお客様を獲得するところまで進める人手が社内に足りない場合は、その実務も代行に頼めます。
新しい事業の案が社長の頭の中にあるだけなら、まず既存のお客様を書き出し、収支モデルを自社で作ります。設備や人の手配が先に動き始めていて、いくら売れば黒字になるかを急いで決めたい場合や、立ち上げの経験者が社内にいない場合は、見込みの裏付けと試す順番を専門家に相談すると早く進みます。
新しい事業が既存のお客様の延長なら社長が自分で進め、お客様が既存事業と違うなら外に頼む
| 選択肢 | 向いている会社 | 進め方と注意点 |
|---|---|---|
| 自分で進める | 新しい事業が既存のお客様や販路の延長にあり、社長が収支モデルを作れる会社です | 既存のお客様を書き出して収支モデルを自社で作り、商工会議所・商工会などの公的な相談窓口で計画への助言を受けられます |
| 社内で担当者を決める | 新しい事業を続けて検討する予定があり、担当者が既存事業とは別に時間を使える会社です | 担当者が新しい事業に使う時間を、既存事業の仕事とは分けて先に確保します |
| 外に頼む | 新しい事業のお客様が既存事業と違う会社、設備や人の手配がすでに動き始めている会社、立ち上げの経験者が社内にいない会社です | 価格と売れる数の見込みの裏付けと、試す順番を決めることを頼みます。頼む範囲を計画書の作成で止めると、計画と実績の差を見て次の一手を決める場が社内に残りにくくなります |
5. 外部に頼むときの3つの頼み方
収支モデルを自社で作れるなら助言を、試す順番から決めたいなら計画づくりの伴走を頼む
頼み方は、大きく次の3つに分けられます。
| 頼み方 | 何を頼むか | 納品物 | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| 計画への助言 | 自社で作った計画を見てもらい、数字の根拠や抜けを指摘してもらいます | 助言の記録です。計画そのものは自社で作ります | 収支モデルまで自社で作れる会社です |
| 計画づくりと検証の伴走 | 便益整理、収支モデル、検証計画を一緒に作り、定例で計画と実績の差を見ます | 便益整理シート、収支モデル、検証計画と結果、事業計画とタスク管理表です | 案はあるが計画になっていない会社、試す順番を決めたい会社です |
| 立ち上げの実務まで含めた支援 | 計画づくりと検証に加えて、受け皿を作り、最初のお客様を獲得するところまで進めます | 上の納品物に加えて、公開済みのサイトと問い合わせ導線、初期の獲得データです | 社内に立ち上げを担う人が足りない会社です |
計画への助言は、商工会議所・商工会、都道府県等中小企業支援センター、よろず支援拠点(国が各都道府県に設置している経営相談所)、認定経営革新等支援機関でも受けられます。
認定経営革新等支援機関は認定支援機関とも呼ばれ、財務や会計の専門知識と中小企業の支援の経験があるとして国が認定した機関で、税理士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関などが認定されています。
私たちの新規事業開発は、計画づくりと検証の伴走に、受け皿づくりと初期の獲得データの記録までを含めた1つのプロジェクトとして進めます。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を使うなら、事業計画は自社で書き、外部には助言を頼む
中小企業庁の案内では、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金で、認定支援機関を含む外部の支援者から助言を受けることは認められていますが、事業計画の作成そのものを申請者以外が行うことは認められていません。
申請者以外が作ったことが分かった場合は、不採択、採択取消、交付決定取消になります。
外部の支援を受けた場合は、電子申請の中で、支援者の名前、支援の内容、報酬(予定)額、契約期間を入力する必要があります。事業計画書の作成支援者に払う費用は、補助金の対象になりません。
口頭審査には申請する会社の代表者などが対応し、コンサルタントや社外顧問の同席は認められていません。公募要領は、サービスの内容とかけ離れた高額な成功報酬を請求する業者に注意するよう呼びかけています。
この補助金を前提に外部に頼むときは、助言と作業の範囲、報酬の決め方を、契約の前に書面で確かめます。
頼む前に、既存のお客様と注文の決め手を書き出し、投資の上限を決めておく
| 頼む前に用意するもの | 中身 |
|---|---|
| 既存のお客様と注文の決め手 | 主なお客様ごとに、業種、規模、注文の決め手を書き出したものです。新しい事業で、どの技術や販路を使うかを決める材料になります |
| 新しい事業の案 | 誰に、何を届けたいかを1行で書きます。案が複数あれば並べておきます |
| 投資の上限と、赤字を支えられる期間 | 設備や人にかけられる金額の上限と、赤字が続いた場合に既存事業の利益で何年支えられるかです |
| 社内の担当者と、決める人 | 定例に出て計画と実績の差を見る担当者と、続けるかやめるかを決める人です |
個人の専門家に頼むときは、フリーランス法の取引条件を書面かメールで示す
個人の専門家に頼む場合は、2024年11月に施行されたフリーランス法の対象になることがあります。対象になる取引では、発注する側は、仕事の内容や報酬の額など9つの取引条件を、書面かメールなどで示す必要があります。
6. 費用
自分で進めるなら、ExcelやGoogleスプレッドシートと、公的な相談窓口で始められる
既存のお客様を書き出したり収支モデルを作ったりするのに必要なのは、ExcelやGoogleスプレッドシートだけです。
公的な相談窓口には、費用をかけずに相談できるところもあります。例えば、国が47都道府県に設置しているよろず支援拠点では、経営の相談を何度でも無料で受けられます。
頼むときの費用は、専門家の派遣を1日あたりの料金で頼むか、伴走を月単位で頼むかで変わる
中小企業基盤整備機構は、専門家を一定期間派遣して助言するハンズオン支援を行っています。費用は専門家1人1日あたり1万7,500円(消費税込)で、期間は数か月から10か月程度(20回程度)です。
私たちは、マーケティング支援の月額4万円を基本とし、必要な施策と制作物の分だけご発注いただく形で受けています。
必要な施策だけ取り組みたい、ウェブサイトやダッシュボードを制作したい、といったニーズに合わせて、単発のプロジェクト発注を1か月単位から受けています(1か月単月15万円から)。
新規事業開発も、この単発のプロジェクト発注で受けています。便益整理、収支モデル、検証計画、受け皿づくりと初期の獲得データの記録、事業計画とタスク管理表を、私たちが進行を管理しながら一緒に進めます。
2026年度は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を使える場合がある
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の新事業進出枠(第1回)は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を対象にしています。締切は2026年10月30日18時です。
新たな市場とは、既存事業で対象にしていなかった顧客層の市場を指します。既存の製品の生産量を増やす場合や、商圏を変えるだけの場合は、新事業進出枠の対象になりません。
補助上限は従業員数で4段階に分かれ、1〜20人は2,500万円、21〜50人は4,000万円、51〜100人は5,500万円、101人以上は7,000万円です。賃上げの特例を満たすと、上限は従業員数に応じて3,000万円、5,000万円、7,000万円、9,000万円になります。
補助下限は750万円です。補助率は中小企業で2分の1で、最低賃金の特例を満たすと3分の2になります。
申請には、3〜5年の事業計画で、付加価値額の年平均成長率4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上を満たすことなどが必要です。採択の発表は2027年1月頃の予定です。
申請締切日の時点で経営革新計画(新事業活動を行うことで経営の相当程度の向上を図る計画で、都道府県または国が承認します)の承認を受けている会社は、審査で加点されます。
7. 目標にする数字と、納品物の確認のしかた
新しい事業の売上とお客様の数は、収支モデルの見込みを目標にして毎月比べる
新しい事業の売上と新しいお客様の数は、既存事業と分けて毎月記録し、収支モデルの見込みを目標にして比べます。
| 目標 | 測り方 | 見方 |
|---|---|---|
| 新しい事業の売上と新しいお客様の数 | 既存事業と分けて毎月記録し、収支モデルの見込みと比べます | 見込みとの差が続くときは、価格、売れる数、売り先のどの見込みが外れたかを確かめます |
| 黒字になるまでの期間 | 収支モデルの黒字化の時期と、既存事業の利益で支えられる期間を比べます | 支えられる期間を超えそうなときに、続けるか、規模を変えるか、やめるかを決めます |
| 会社全体の付加価値額 | 営業利益、人件費、減価償却費の合計を、計画を始めた年と比べます | 経営革新計画を申請する場合は、3年計画で9%以上の伸びが承認の要件の1つです |
経営革新計画の承認を目指す場合は、会社全体の付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費の合計)か1人当たり付加価値額が3年計画で9%以上、4年計画で12%以上、5年計画で15%以上伸び、あわせて給与支給総額が3年計画で4.5%以上、4年計画で6%以上、5年計画で7.5%以上伸びる計画が必要です。
納品物は、売上の根拠、次に進むかを判断する数字、担当と期日が書かれているかで確かめる
| 確かめること | 見方 |
|---|---|
| 便益整理シートに、誰に、何を、どんな独自性で届けるかが書かれているか | パターンごとに、新しい事業でどの既存の技術や販路を使うかが書かれているかを見ます |
| 収支モデルの売上に、積算の根拠があるか | 単価と数量の根拠と、売る予定の相手が書かれているかを見ます |
| 検証計画に、何が分かれば次に進むかが書かれているか | 試すことごとに、続けるか、変えるか、やめるかを決める数字があるかを見ます |
| 事業計画とタスク管理表に、担当と期日があるか | 外部の支援者がいなくても、社内の誰が、いつまでに何をするかが分かるかを見ます |
納品の後も、計画と実績の差を見て次の一手を決める定例を社内で続けられるかを、契約の前に確かめます。
ローカルグローススタジオの観点
私たちの新規事業開発では、既存事業のお客様と受注の理由から、自社がどんな価値で選ばれてきたかを確かめたうえで、新しい事業で誰に、何を、どんな独自性で届けるかを決めます。次に収支モデルと検証計画を作って小さく試す順番を決め、受け皿を整えてから集客を始めます。そのあとは定例で計画と実績の差を見ながら、次の一手を決めます。
新しい事業で誰に何を届け、何から試すかを決めるこの進め方は、スタートアップの型と重なります。地方経営者、地方人材向け:スタートアップとは何か?では、どの顧客層をターゲットにするかなどを、優先順位を明確にして決める姿勢が、地方企業にも参考になると書きました。
同じ記事では、地方企業にも応用できる取り組み方としてMVP戦略を挙げ、「完璧な商品を目指すのではなく、最小限の機能ですぐに市場の反応を見る手法」と説明しています。私たちの新規事業開発では、この考え方で、設備や人に大きなお金を使う前に、何をどの順で小さく試すかを検証計画で決めます。
ユニットエコノミクスは、グロービス経営大学院のMBA用語集で「1顧客当たりの採算性を表す指標」と説明されています。私たちの新規事業開発では、収支モデルを作るときに、お客様1人あたりの採算が合うかを確かめます。
事例
地方の会社の事例では、既存の技術や設備で作った新しい商品を、それまでと違う売り先に売っている
既存の事業で持っていた設備や技術を使って新しい事業を始めた地方の会社と、新しい事業での売り先を、私たちのマガジンの「先進企業に学ぶ」シリーズから並べます。
| 会社 | 既存の事業で持っていたもの | 始めた新しい事業 | 新しい事業での売り先 |
|---|---|---|---|
| 久原本家グループ(福岡県久山町) | 醤油の醸造設備と、ほとんど動いていなかったたれのパック機械です | 業務用のたれやスープのOEM、辛子明太子「椒房庵」、「御料理 茅乃舎」と「茅乃舎だし」です | OEMのたれやスープは、全国の食品メーカーや外食チェーンに売りました。椒房庵は本店と通販で直接売り、茅乃舎だしは通信販売と百貨店や商業施設の直営店で売っています |
| 能作(富山県高岡市) | 仏具・茶道具・花器の下請けで続けてきた鋳物の技術です | 錫100%の食器などの自社ブランドと、工場見学を受け入れる産業観光型の新社屋です | 自社商品は、セレクトショップなど800軒の取扱店に同じ価格で卸し、本社の直営店でも売っています |
| 浅野撚糸(岐阜県安八町) | 下請けとして続けてきた撚糸の技術です | 特殊撚糸「SUPER ZERO」と、それを使ったタオル「エアーかおる」の自社での販売です | 問屋や小売店に頼らず、公式オンラインショップ、安八町のふるさと納税の返礼品、本社隣の直営店で、最終消費者に直接売っています |
| 甲子化学工業(大阪府) | 商社経由で受注してきたプラスチック射出成形の技術です | 廃棄されるホタテ貝殻を使った新素材と、ヘルメット「HOTAMET」です | HOTAMETは、Makuakeでの先行販売を経て2023年春に発売し、Wolt Japanの配達パートナー用にも導入されました |
自社で進められることと、相談したほうが早いこと
既存のお客様を書き出すこと、収支モデルを作ること、公的な窓口に相談することは、専門家に費用を払わずに自社で進められます。
- 既存のお客様を1社ずつ並べ、業種、規模、注文の決め手を書き出します
- 注文の決め手が似ているお客様をまとめ、新しい事業で誰に何を届けるかを1行で書きます
- 価格と売れる数の見込みから収支モデルを作り、いくら売れば黒字になるかと、赤字が続いた場合に何年支えられるかを出します
- 経営革新計画や補助金の対象になるかは、商工会議所・商工会などの公的な相談窓口でも相談できます
ここまでを自社で進めれば、外部に頼む範囲を、価格と売れる数の見込みの根拠づくり、小さく試す順番と検証、受け皿づくりと初期の獲得データの記録に絞れます。
一方で、外部に頼むほうが早く進むのは、次のような状況です。
- 新しい事業のお客様が既存事業と違い、売り先の当てがないときです
- 設備や人の手配がすでに動き始めていて、いくら売れば黒字になるかを急いで決めたいときです
- 立ち上げの経験者が社内におらず、何から試すかを決められないときです
私たちは新規事業開発を、単発のプロジェクト発注(1か月単位から、1か月単月15万円から)でお受けし、便益整理シート、収支モデル、検証計画と結果、受け皿(サイトと問い合わせ導線)、初期の獲得データ、事業計画とタスク管理表を納品します。定例で計画と実績の差を見ながら、次の一手を一緒に決めます。
詳しくはプロジェクト発注のページにまとめました。既存のお客様を書き出し、収支モデルを作ってみて、価格や売れる数の見込みを裏付けられないときや、立ち上げの経験者が社内にいないときは、よかったらご相談ください。
参考資料
- 自社の記事: 地方経営者、地方人材向け:スタートアップとは何か?、便益整理の始め方、間違ってはいけない戦略の順番、新サービス開始時のステップをおさらい、先進企業に学ぶの久原本家グループ、能作、浅野撚糸、甲子化学工業
- 日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の新事業への取り組みに関する調査」結果(2026年9月9日。小企業編は2026年3月調査・有効回答4,779企業、中小企業編は2026年6月調査・有効回答4,755社)
- 中小企業庁 経営革新計画 進め方ガイドブック(2025年4月改定)
- よろず支援拠点全国本部、独立行政法人中小企業基盤整備機構 ハンズオン支援(専門家派遣)
- 中小企業庁 ミラサポplus 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開(2026年6月30日、9月25日更新)、第1回公募の申請受付を開始(2026年9月30日)、独立行政法人中小企業基盤整備機構 公募要領(第1回)1.3版(令和8年9月)
- 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト
- グロービス経営大学院 MBA用語集「ユニット・エコノミクス」
まとめ:新しい事業は、スタートアップの型を参考に、既存のお客様を書き出して収支モデルを作るところから始め、外部に頼むときは検証と定例まで含めて頼む
新しい事業の進め方が分からないときは、スタートアップの型を参考に、誰に何を売るか、いくらで何個売れば黒字になるか、何をどの順で小さく試すかを、1つの事業計画にまとめるところから始めます。新しい事業の売上は会社全体の1割以下にとどまることが多いので、数字は既存事業と分けて見ます。
最初の一歩は、既存のお客様と注文の決め手を書き出すことです。新しい事業の分野を選んだ理由として中小企業で多いのは、自社の技術・ノウハウと提供ルートを生かせることでした。自社のどの技術や販路が選ばれてきたかは、既存のお客様の注文の決め手から分かります。
そのうえで収支モデルを作り、いくら売れば黒字になるかと、赤字が続いた場合に既存事業の利益で何年支えられるかを計算します。ここまでは費用をかけずに自社で進められます。
価格と売れる数の見込みを裏付けられないときや、立ち上げの経験者が社内にいないときは、外部に頼んだほうが早く進みます。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を申請する場合は、事業計画を申請する会社が自分で作る決まりがあるので、事業計画は自社で書き、外部には計画への助言と検証を頼む進め方をおすすめしています。
頼む前に、既存のお客様と注文の決め手を書き出し、新しい事業の案、投資の上限と赤字を支えられる期間、社内の担当者を決めておきます。
納品物は、便益整理の中身、収支モデルの売上の根拠、次に進むかを決める数字、担当と期日が書かれているかで確かめます。あわせて、計画と実績の差を見る定例を社内で続けられるかを見ます。
「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。

執筆者 : 佐久間 一己 (さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカルグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャーを経て、福井県小浜市で道の駅・古民家ホテルの集客支援と行政の産業6次化に4年携わり、その後ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ執行役員、フィンテック事業責任者を務め、2025年に地方企業向けのマーケティング代理店を設立。BtoB事業でWEBメディアを立ち上げオーガニック流入を3か月で20倍に伸ばすなど、知名度や予算が限られる時期に効くマーケティングと採用の手法を、地方企業の規模に合わせて伴走します。


