社長の方針が現場に伝わらなくなったときは、マネージャー育成から|マネージャー育成研修の発注ノウハウ

ローカルグローススタジオは、『地方企業にスタートアップのような成長を』というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。

社員が増えて社長が全員と直接話せなくなると、社長の方針はマネージャーを通して現場に届くようになります。マネージャーが方針の理由まで説明できないと、現場には指示だけが届き、なぜそうするのかが伝わらないことがあります。

2022年版中小企業白書が引く東京商工リサーチの調査(2021年11月から12月。経営者が答えた調査です)では、回答した中小企業5,224社のうち、経営戦略が「全社的に浸透している」と答えたのは20.0%でした。

最も多かった答えは「部長・課長クラスまでは浸透している」の29.3%でした。経営戦略が部長・課長クラスまでで止まっていると答えた経営者が、いちばん多かったことになります。

社長の方針が現場に伝わらなくなったときは、社長がマネージャーに何を求めるかを自分の言葉で書き出し、マネージャー一人ひとりが何を受け取っているかを聞いて、書き出したこととのずれを確かめたうえで、社長が繰り返し説明できる資料にまとめる進め方をおすすめしています。

資料ができた後も、マネージャーが判断に迷った場面を持ち寄り、その資料に照らして一緒に考える場を続けます。

この記事は、「マネージャー育成研修」について、2種類の読者に向けて書きました。1つは、マネージャーを育てると何が変わるのか、まだイメージを持てていない方です。もう1つは、イメージはあるものの、自社で進められるのか、外部の専門家に頼むべきか迷っている方です。

私たち(ローカルグローススタジオを運営するつなぐスタジオ)のマネージャー育成研修では、私たちがまとめたマネジメントの考え方13項目(マネジメント業務の理解6項目と心構え7項目)を素案にして経営者へのインタビューを重ね、その会社がマネージャーに求めることを、その会社の言葉で書いた文書を作ります。この記事では、この文書を「マネージャー育成の原本」と呼びます。

そのうえで、経営者からマネージャーへの説明資料を作り、マネージャーへのインタビューと、判断に迷っている場面を一緒に考える悩みのコーチングを続けます。

前半は、まだイメージを持てていない方に向けて、私たちがまとめたマネジメントの考え方13項目と、それを素案にした育成の進め方、研修の目的、費用をかけずに始める順番を書きました。

後半は、外部に頼むか迷っている方に向けて、自社で進める範囲と外部に頼む範囲の境目、外部への頼み方、費用と助成金、納品物の確かめ方を書きました。

この記事で分かること

まだイメージがない方向け

  • 代表がマネージャーとして使ってきた考え方から絞った、私たちのマネジメントの考え方13項目の紹介
  • 13項目を素案に、マネージャーに求めることを社長の言葉で書き直す
  • 目的は、マネージャーが社長の方針を自分の言葉で説明し、判断できるようにすること
  • まず、社長がマネージャーに任せたいことと求めることを書き出す

イメージはあるが次の一手に迷う方向け

  • 求めることを書き出し、マネージャーに話を聞くまでは自社ででき、社長の言葉にまとめる作業は外部に頼むと早い
  • 一般的な知識なら既製の研修を、社長の方針を届けたいなら求めることを言葉にするところから頼む
  • 自社で進める分には新しい費用はかからず、外部に頼むならまとめる作業と面談の費用を見込む
  • 研修の効果は、部署の数字を目標に置き、マネージャーの理解と行動を直後から見る
  • 納品物は、私たちの13項目から変えた点と理由、社長の説明資料、面談と相談の記録で確かめる

1. 私たちは、マネジメントの考え方13項目を素案にし、会社ごとに社長の言葉で書き直している

私たちは、マネージャーに求めることを13項目の素案にまとめている

私たちは、マネージャー育成研修を始めるにあたって、まず私たち自身がマネージャーに何を求めるかを言葉にしました。代表がこれまでマネージャーとして使ってきた考え方を、リーダーとマネージャーに求めることとして1つずつ書き出すと、128項目になりました。そこから代表が選び、マネジメント業務の理解6項目と、心構え7項目の、合わせて13項目に絞りました。

代表は、会社員時代に営業組織のマネージャーとして30名の組織を率い、3度の組織表彰を受けました。その後も、カスタマーサクセスのマネージャー、スタートアップの執行役員、フィンテック事業の責任者として、チームを持つ立場で働いてきました。

マネジメント業務の理解は、数字の見方から言葉の磨き方までの6項目にまとめた

マネジメント業務の理解の6項目は、次のとおりです。

項目マネージャーがすること
「数字の構造を理解する」事業の数字を工程ごとに見て、どこが一番詰まっているかを考え、最小のコストで最大のリターンがあるものから順に手を打ちます
「動機づけと要望を高いレベルで両立させる」メンバーへの要望と動機づけを、両方とも高く保ちます。すぐに否定する、細かく指図する、手柄を横取りすることをしません
「守破離を意識する」新人には基礎を細かく教え、次に自分のやり方を試させて見守り、最後は信じて任せて、結果を出すための後方支援に回ります
「リーダーシップとマネジメントを使い分ける」共感で高い目標を一緒に目指させることと、一人ひとりの個性を理解してチームとして勝つやりくりをすることを、場面で使い分けます
「近いリーダーであり、迎合しない」過去の壁や失敗から学んだことを自分から話します。ただし、ご機嫌取りはせず、会社の方針を実現するための芯を持ちます
「曖昧さを減らし、言葉を磨き続ける」意思決定には理由を添え、言葉の定義をすり合わせます。伝えたで終わらせず、伝わるまで話します

心構えは、役割の受け止め方から、トラブルへの向き合い方までの7項目にまとめた

心構えの7項目は、次のとおりです。

項目中身
「マネージャーは役割である」偉くなったわけではありません。上からの話を伝えるだけにせず、自分の解釈と、組織への影響と、背景も話します
「根拠を共有できない変化は納得されない」現状を見極める前に変えません。いつまで現状を確かめ、いつ方針を話すかを先に伝えます
「最初はお手並み拝見。3か月の無力感は普通」着任直後は、あえてメンバーを立て、感謝を大げさなくらい伝えます。3か月ほど無力感を覚えるのは普通のことです
「褒めるときはみんなの前で、叱るときは見えないところで」認める場面と注意する場面で、場所を分けます
「小さな約束を絶対に守る」嘘をつかない、裏切らないことが、信頼関係のもとになります
「相談と報告は必ず手を止めて聞く」小さな変化や、小さな受注と失注にも気づけるようにします
「トラブルは叱るより、整理して解決に向かわせる」起こったことを叱るより、落ち着いて状況を整理し、解決に向かわせます

13項目は素案として使い、会社ごとの原本と社長からの説明資料を作り、マネージャーへのコーチングを続ける

私たちがお客様に納品するのは、13項目そのものではありません。13項目を素案にして経営者へのインタビューを重ね、その会社の言葉で書き直したマネージャー育成の原本を作ります。原本には、素案から変えた点と、その理由も書きます。

作るもの誰が使うかこれがないと起きること
その会社のマネージャー育成の原本経営者です判断の基準が経営者の頭の中にとどまり、人に渡せません
経営者からマネージャー(候補)への説明資料経営者が、マネージャーに話すときに使います原本ができても、経営者が自分の言葉で繰り返し話すための資料がなく、マネージャーへの説明が続きません
マネージャーへのインタビューと悩みのコーチングマネージャー本人です原本と説明資料が届いても、一人ひとりが判断に迷っていることは解決しません

私たちは、原本だけを渡すと、社長が繰り返し語るための道具がないまま、原本が使われずに終わりやすいと考えています。そのため、説明資料を原本と別に作ります。

2. 何を目的にするか

目的は、社長の方針を受けたマネージャーが、自分の言葉で現場に説明し、判断できるようにすること

私たちは、マネージャー育成研修の目的を、社長の方針を受けたマネージャーが、その理由を自分の言葉で現場に説明し、方針に沿って判断できる状態を作ることに置いています。

私たちの13項目でも、「曖昧さを減らし、言葉を磨き続ける」と「マネージャーは役割である」は、方針を伝えるときに理由を添えて言葉の定義をすり合わせることと、上からの話に自分の解釈と背景を添えることを求めています。

上位の方針を踏まえて組織を動かすことは、業種や職種ごとに求める能力を4つのレベルで示した厚生労働省の職業能力評価基準でも、課長やマネジャーにあたるレベル3の水準として書かれています。

マネージャーに求めることは、公的な基準や研修の中身をそのまま使わず、自社の言葉に置き換える

マネージャーに求めることを一般的な研修の言葉のままにしておくと、社長が自分の言葉として話しにくく、マネージャーも、研修の言葉が自社のどの場面の話なのかを思い浮かべにくいことがあります。私たちが13項目を素案として使い、その会社の言葉で書き直して原本にするのはそのためです。

職業能力評価基準のような公的な基準を下書きに使うときも、同じように自社の言葉に置き換えます。この基準をもとにした職業能力評価シートの導入・活用マニュアルでも、自社版に組み替える方法の1つに、自社であまり使わない用語を自社で使っている言葉に置き換えることが挙がっています。

マネージャーには、研修の場だけでなく、職場での相談の場を続けて用意する

研修で学んだことを職場で使えるようにするために、私たちは、マネージャーが判断に迷った場面を持ち寄って原本に照らして考える相談の場を、研修の後も続ける進め方をおすすめしています。原本と説明資料が届いても、マネージャー一人ひとりが職場で判断に迷っていることは、それだけでは解決しないためです。

職場で計画を立ててマネージャーを育てている事業所は、マネージャーに職場を離れた研修を受けさせている事業所の半分ほどです。

厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査(常用労働者30人以上の事業所が対象)では、正社員の管理職層に職場を離れた研修(OFF-JT)を行った事業所は49.0%、担当者や期間、内容を決めて職場で育てる計画的なOJTを行った事業所は24.9%でした。

3. どこから始めるか

育成は、初めてマネージャーを置くとき、マネージャーの間で判断の基準がそろわなくなったとき、その下にマネージャーができるときに考え始める

私たちは、マネージャー育成を考え始める時期を、会社の規模よりも、組織に起きる次の3つの出来事で考えています。時期によって、マネージャーに求めることも変わります。

時期このときに求められること
初めてマネージャーを置くとき社長が初めて人に任せ、最初のマネージャーを作ります
マネージャーが複数になり、人によって判断の基準が違ってきたときマネージャーの間で、言葉と判断の基準をそろえます
マネージャーの下にマネージャーができるとき社長と現場の間に2つの階層が入り、マネージャーがマネージャーを育てます

まず、社長がマネージャーに任せたいことと求めることを書き出し、社内にある言葉を集める

マネージャー育成の準備は、費用をかけずに、次の4つから始められます。

1. 社長が、マネージャーに任せたいことと求めることを書き出します。13項目の1つずつに、自社に必要か、不要か、自社では言い方が違うかの印を付けていくと、書き出す手がかりになります

2. 社内にある、マネジメントについて書いたもの(行動指針、過去の研修資料、評価シート、社長が社員に送ってきたメッセージ)を集めます

3. 代替わりした社長は、先代のやり方で続けたいこと、変えたいこと、先代のころからいるマネージャーにまだ伝えられていないと感じることを書きます

4. 書き出したものに、自社の業務での例を1つずつ添えます

次に、マネージャーが社長から何を期待されていると受け取っているかを聞き、社長が書き出したこととのずれを確かめる

社長が書き出したことと、マネージャーが受け取っていることがそろっているかは、マネージャーに聞くと分かります。聞くことは、次の4つです。

  • 社長から何を期待されていると理解しているか
  • 判断に迷うのはどんな場面か
  • 自分で決めてよいことと、上に確かめることの境目がはっきりしているか
  • いま一番困っていることは何か

社長が書いたことと、マネージャーの答えがずれていれば、そのずれが、原本と説明資料で最初に言葉にするところになります。

4. どこまで自社でやり、どこから外部に頼むか

社長が求めることの書き出しと、マネージャーへの聞き取りまでは自社ででき、原本と説明資料にまとめる作業は外部に頼むと早い

社長がマネージャーに求めることを書き出し、社内にある言葉を集めるところまでは、自社で進められます。マネージャー一人ひとりに話を聞いて、書き出したことを定例の1対1の面談で読み合わせることも、自社でできます。

書き出したことを全体の会議で話すのか、1対1の面談で話すのか、マネージャーに任用するときに話すのかを社長が決め、時間がたっても同じ言葉で話せているかを確かめることも、社内でできます。

社長が日々の業務で手一杯のときは、書き出す作業が後回しになることがあります。社長が書き出す時間を取れず、何か月も手が付いていないときは、社長への聞き取りから原本と説明資料にまとめる作業を外部に頼むと早く進みます。

マネージャーが判断に迷う場面や困っていることを、本音で話せる相手が社内にいないこともあります。社長がマネージャーの直属の上司である会社では、評価する立場の社長に、マネージャーが困っていることを話しにくい場合があります。

人事や総務にマネージャーの相談を受けられる人がいなければ、マネージャーとの面談と相談を、評価する立場にない外部の人に頼む方法があります。

マネージャーが複数になり、人によって言葉と判断の基準が違ってきたときは、そろえるための原本と説明資料づくりから外部に頼むと早く進みます。代替わりした社長が、先代のころからいるマネージャーに求めることを話しにくいときは、求めることを言葉にして説明資料にまとめるところから外部に頼む方法があります。

社長が書き出す時間を取れるなら自社で進め、取れないときは外に頼む

選択肢向いている会社進め方と注意点
自社で進める社長が自分で求めることを書き出せて、マネージャー全員と直接話せる会社です社長が書き出したことを、定例の1対1の面談でマネージャーと読み合わせ、迷った場面を書き足していきます
社内で担当者を決める人事や総務に、マネージャーの相談を受けられる人がいる会社です担当者が社長の書き出したことを預かり、マネージャーの相談を受けて、迷った場面を社長に伝えます
外に頼む社長が書き出す時間を取れない会社、マネージャーが複数になり、言葉と判断の基準をそろえたい会社、代替わりして先代のころからいるマネージャーに、求めることを話しにくい会社です研修の日だけを頼む場合は、研修の後のマネージャーの相談を社内の誰が受けるかを、先に決めておきます

5. 外部に頼むときの3つの頼み方

頼む範囲は、既製の研修への参加、自社向けの研修、自社のマネージャー像づくりからの伴走の3つから選ぶ

マネージャー育成を頼める相手には、研修会社、組織開発のコンサルティング会社、個人の講師やコーチがいます。相手が違っても、頼み方は次の3つのどれかになります。

頼み方何を頼むか納品物向いている会社
既製の研修への参加研修会社が開く公開講座に、マネージャーを参加させます受講の記録と、講座の教材ですマネージャー一人ひとりに、一般的なマネジメントの知識を学ばせたい会社です
自社向けの研修講師に自社へ来てもらい、マネージャーを集めて研修をしてもらいます研修の資料と、当日の記録ですマネージャーが複数いて、同じ内容を同じ日に学ばせたい会社です
自社のマネージャー像づくりからの伴走自社がマネージャーに求めることを言葉にし、説明資料を作り、マネージャーとの面談と相談を続けてもらいます原本、説明資料、面談と相談の記録です社長の方針が届いていないと感じている会社、代替わりした会社です

私たちのマネージャー育成研修は、自社のマネージャー像づくりからの伴走にあたります。原本の作成、説明資料の作成と、マネージャーとの面談と相談を、1つのプロジェクトとして進めます。面談と相談は、私たちのメニューではマネージャーへのインタビューと悩みのコーチングにあたり、その記録を「インタビューとコーチングの記録」として納品します。

頼む前に、社内にある言葉を集め、マネージャーの名簿を作り、社長が話す場を決めておく

頼む前に用意するもの中身
社内にあるマネジメントの言葉行動指針、過去の研修資料、評価シート、社長が社員に送ってきたメッセージです
社長が書き出したことマネージャーに任せたいことと、求めることです。箇条書きで足ります
マネージャーと候補の名簿部署、担当している人数、マネージャーになった時期です
社長が話す場説明資料を使って、いつ、どの場で、誰に話すかです

個人の講師やコーチに頼む場合は、2024年11月に施行されたフリーランス法の対象になることがあります。対象になる取引では、発注する側は、仕事の内容や報酬の額など9つの取引条件を、書面かメールなどで示す必要があります。

6. 費用

自社で進める分には新しく払う費用はかからず、外部に頼むなら、原本と説明資料にまとめる作業とマネージャーとの面談の費用を見込む

自社で進めるときに必要なのは、社長が書き出す時間と、マネージャーと話す時間です。定例の1対1の面談を使って読み合わせる形なら、新しく払う費用はかかりません。

書き出す作業は日々の業務に押されて後回しになりやすいので、始める日と、読み合わせる定例を、先に予定に入れておく進め方をおすすめしています。

社長が書き出す時間を取れないときや、マネージャーの相談を受けられる人が社内にいないときは、外部に頼む費用を見込みます。社長の書き出しとマネージャーへの聞き取りを自社で済ませられれば、頼む範囲を、原本と説明資料にまとめる作業と、マネージャーとの面談と相談に絞れます。

私たちのマネージャー育成研修は、単発のプロジェクト発注として、1か月単月15万円からお受けしている

私たちは、マーケティング支援の月額4万円を基本とし、必要な施策と制作物の分だけご発注いただく形で受けています。

必要な施策だけ取り組みたい、ウェブサイトやダッシュボードを制作したい、といったニーズに合わせて、単発のプロジェクト発注を1か月単位から受けています(1か月単月15万円から)。

マネージャー育成研修も、この単発のプロジェクト発注で受けています。原本の作成、説明資料の作成、マネージャーへのインタビューと悩みのコーチングを、私たちが進行を管理しながら一緒に進めます。

人材開発支援助成金を見込むなら、研修のどの時間が対象になるかを申請の前に労働局で確かめる

研修の費用に国の人材開発支援助成金(人材育成支援コース)を見込む場合は、研修のどの時間が対象になるかを、申請の前に管轄の労働局で確かめます。社長が自社の経営方針を説明する時間のように、研修の目的によっては対象にならない時間があるためです。

令和8年8月3日版の案内では、このコースの対象は職務に関連した専門的な知識や技能を身につける訓練で、職場を離れて行う研修は、対象外の時間を除いて10時間以上行う必要があります。

リーダーシップやコミュニケーションを身につける訓練が対象になる例もあります。案内では、社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるプロジェクトのリーダーに、プロジェクトを進める力を身につけさせる訓練が、事業の内容を問わず職務に関連した訓練と判断される例に挙がっています。

一方で、コンサルタントによる経営改善の指導、社内制度や組織に関する説明、自社の経営方針の説明、意識改革研修は対象になりません。カリキュラムの一部に含まれる場合も、その時間は対象外です。

7. 目標にする数字と、納品物の確認のしかた

研修の効果は、部署の数字を目標に置いたうえで、マネージャーの理解と行動を研修の直後から見る

私たちは、マネージャー育成研修の目標をマネージャーの部署が追う数字に置いたうえで、マネージャーが社長の期待を理解したか、職場での行動が変わったかを、研修の直後から見ていく進め方をおすすめしています。部署の数字は研修だけで決まらないので、数字だけを見ていると、説明資料や面談のどこを直せばよいかが分からないためです。

研修の効果を反応、学習、行動、成果の4つのレベルで測るカークパトリックモデルも、評価を組織の成果から考え始め、職場での行動の測定を研修の90日後まで待たないことを勧めています。職場で目指す行動を促す支えの例に挙がっている上司との確認の場、行動の観察、仕事で使う道具は、マネージャー育成では説明資料と、マネージャーとの面談と相談にあたります。

目標測り方見方
期待がマネージャーに伝わったかマネージャーに、社長から何を期待されていると理解しているかを聞き、原本と比べますずれがあれば、原本か説明資料の言葉を直します
社長が説明資料で話したか説明資料を使って社長が話した回数と、その場を記録します決めた場で、決めた回数だけ話せているかを見ます
マネージャーが自分で判断したか面談と相談の記録で、判断に迷った場面と、原本のどの項目に照らして決めたかを見ます同じ種類の相談が減り、マネージャーが自分で決めた例が増えているかを見ます
部署の数字と離職マネージャーの部署が追う数字と、離職の人数を、始める前と比べます研修だけで決まる数字ではないので、推移として見ます

納品物は、素案から変えた点と理由、社長が使える説明資料、面談と相談の記録がそろっているかで確かめる

確かめること見方
原本に、素案から変えた点と理由が書かれているか数年後に見直すとき、なぜこの言葉にしたかが分かるかを見ます
原本の項目に、自社の業務での例があるかマネージャーが、自分の仕事のどの場面の話なのかを思い浮かべられるかを見ます
説明資料が、社長が話す場に合わせて作られているか全体の会議か1対1の面談かなど、使う場を決めてから作られているかを見ます
面談と相談の記録が残っているか何に迷い、どう決めたかが残っていて、次のマネージャーの育成に使えるかを見ます

ローカルグローススタジオの観点

私たちはマネジメントとは、今のリソースでやりくりすること、リソース調達力を上げること。バフ人材とデバフ人材を見極める。で、マネジメントの本質を、与えられた条件の中で最大の成果を出す「やりくり」の技術と書きました。

私たちの13項目でも、「リーダーシップとマネジメントを使い分ける」の説明に、常にA5和牛やタラバガニがそろっているわけではなく、冷蔵庫の中にあるものから美味しい料理を提供し続けるやりくりがマネジメントだと書いています。同じ項目には、素材の調達作業もマネジメントであり、採用活動への強い関与がチームの成果を変えるとも書いています。

今いる人で成果を出すには、マネージャーが社長の方針を自分の言葉で話し、メンバー一人ひとりの個性に合わせて仕事を任せる必要があります。

社長の考えを社員全員で話し合う場を作りたい場合は従業員参加型ビジョンミーティング研修を、評価と給与のルールを整えたい場合は人事評価制度設計を、別のメニューとしてお受けしています。

事例

ダナハーでは、トップが日々の改善を全社員に書いて伝え、幹部はリーダーが事業の課題を話せる場を作っていた

私たちのマガジンの「先進企業に学ぶ」シリーズで取り上げたダナハーは、従業員約6万人の米国の企業です。トップが自分の言葉で繰り返し伝えることと、リーダーが自分の課題を話せる場を続けることを、会社の仕組みにしていました。

記事で紹介した元幹部の説明によると、2001年にCEOを継いだラリー・カルプ氏は、社内のイントラネットに毎日、全社員向けの短い文章を載せ、その日の改善(カイゼン)について書いていました。

また、CEOを含む上位25人の幹部は、全員が年に2週間以上、社内で改善の手法を教えていました。その場では教えるだけでなく、事業会社のリーダーが自分の事業の課題を話せるようにしていたと、元幹部が説明しています。

ダナハーの記事では、上位25人が年2週間教える会社は真似できなくても、経営者が年に2日教える会社にはなれると書きました。教える側に回ると、やり方が言葉になり、言葉になったものは人に渡せます。

社長が求めることを書き出して説明資料にまとめ、マネージャーに繰り返し話す進め方も、同じ考え方です。私たちのマネージャー育成研修でも、コーチングの題材は、マネージャーが実際に判断に迷った場面にします。

自社で進められることと、相談したほうが早いこと

社長が求めることを書き出すこと、社内にある言葉を集めること、マネージャーに話を聞くことは、専門家に費用を払わずに自社で進められます。

  • 社長が、マネージャーに任せたいことと求めることを書き出します。13項目の1つずつに、自社に必要か、不要か、自社では言い方が違うかの印を付けていくと、書き出す手がかりになります
  • 行動指針、過去の研修資料、評価シート、社長のメッセージを集め、書き出したことに自社の業務での例を添えます
  • マネージャー一人ひとりに、何を期待されていると思うか、判断に迷うのはどんな場面かを聞きます
  • 書き出したことを、定例の1対1の面談でマネージャーと読み合わせます

ここまでを自社で進めれば、外部に頼む範囲を、社長が書き出したことを社長の言葉で原本にまとめる作業、説明資料づくり、マネージャーとの面談と相談に絞れます。

一方で、外部に頼むほうが早く進むのは、次のような状況です。

  • 社長が書き出す時間を取れず、何か月も手が付いていないときです
  • マネージャーが複数になり、人によって言葉と判断の基準が違ってきたときです
  • 代替わりした社長が、先代のころからいるマネージャーに、求めることを話しにくいときです

私たちはマネージャー育成研修を、単発のプロジェクト発注(1か月単位から、1か月単月15万円から)でお受けし、その会社のマネージャー育成の原本、経営者からマネージャーへの説明資料、インタビューとコーチングの記録を納品します。

詳しくはプロジェクト発注のページにまとめました。社長が求めることを書き出し、マネージャーに話を聞いてみて、原本や説明資料にまとめるところで手が足りないと感じたときは、よかったらご相談ください。

参考資料

まとめ:社長が求めることを書き出してマネージャーとのずれを確かめ、繰り返し説明できる資料と、迷う場面を相談できる場を用意する

社員が増えて社長が全員と話せなくなると、社長の方針はマネージャーを通して現場に届きます。マネージャー育成の目的は、マネージャーが社長の方針を自分の言葉で現場に説明し、方針に沿って判断できるようにすることです。

最初の一歩は、社長がマネージャーに任せたいことと求めることを書き出し、社内にある言葉を集め、マネージャー一人ひとりに、何を期待されていると思うかと、判断に迷う場面を聞くことです。ここまでは費用をかけずに自社で進められます。

社長が書き出したことと、マネージャーの答えのずれは、原本と説明資料で最初に言葉にするところです。資料ができた後も、マネージャーが判断に迷った場面を持ち寄り、原本に照らして考える相談の場を続けます。

社長が書き出す時間を取れないときや、マネージャーが複数になって言葉と判断の基準をそろえたいとき、代替わりして先代のころからいるマネージャーに、求めることを話しにくいときは、外部に頼んだほうが早く進みます。

頼むときは、頼む範囲を研修の日だけにせず、社長が使う説明資料づくりと、研修の後の面談と相談までを含める進め方をおすすめしています。納品物は、素案から変えた点と理由が書かれているか、説明資料が社長の話す場に合っているか、面談と相談の記録が残っているかで確かめます。

「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。