既存のお客様へのフォローまで手が回らないときは、カスタマーサクセスの代行を検討しよう|カスタマーサクセス代行の発注ノウハウ

ローカルグローススタジオは、『地方企業にスタートアップのような成長を』というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。

営業担当や窓口の担当者が、新しいお客様の獲得や納品の対応に追われ、既存のお客様へのフォローや、更新と追加の提案まで手が回らないことがあります。更新の時期に解約の相談を受けてから、お客様の状況を知る会社もあります。

カスタマーサクセスの入り口は、お客様が機能を使いこなし、満足して使い続けられるようにするフォローです。そのうえで目指すのは、やり取りする現場の担当者の満足にとどまらず、既存のお客様への営業として事業の成果を上げることです。

契約を続けてもらって解約を減らし、上位のプランや別の商品を提案して1社あたりの取引額を増やします。そうして、1社のお客様が取引の期間全体を通じて自社にもたらす価値(LTV、顧客生涯価値)を上げることを目指します。

LTVが上がると、新しいお客様1社の獲得にかけた広告や営業の費用に対して、取引の期間を通じて回収できる額が増えます。1社あたりの採算(ユニットエコノミクス)が良くなり、新しいお客様の獲得だけに頼らずに売上を伸ばせます。

進めるときは、受注のあとを、使い始め、使い続ける、取引を続ける、取引を広げるの4つの段階に分け、段階ごとに何社のお客様が残っているかを数える進め方をおすすめしています。どの段階でお客様が離れているかによって、打つ手が変わるためです。

担当者の手が回らないときは、段階ごとに見る数字と提案の型を代行会社と一緒に決め、毎週の連絡と提案、その記録を任せる方法があります。どの数字を目標にするかと、どのお客様の決裁者に深く関わるかは、自社で決めます。

この記事は、「カスタマーサクセス代行」について、2種類の読者に向けて書きました。カスタマーサクセス代行は、既存のお客様へのフォローと提案、記録の実作業を、社外に任せる業務代行です。

1つは、カスタマーサクセスで何をするのか、代行に何を任せられるのか、まだイメージを持てていない方です。もう1つは、イメージはあるものの、社内で時間を作って進められるのか、外部に頼むべきか迷っている方です。

前半は、まだイメージを持てていない方に向けて、カスタマーサクセスで行うことと代行に任せられること、何を目的にし、どこから始めるかを書きました。

後半は、外部に頼むか迷っている方に向けて、社内で進める範囲と外部に頼む範囲の境目、外部への頼み方と契約の前に確かめる法律、費用、目標にする数字と納品物の確かめ方を書きました。

この記事で分かること

まだイメージがない方向け

  • カスタマーサクセスはフォローから始める既存のお客様への営業で、連絡と提案は代行に任せられる
  • 目的は、現場の担当者の満足にとどまらず、LTV(顧客生涯価値)を上げること
  • 受注のあとを段階に分け、お客様が離れている段階から手を打つ

イメージはあるが次の一手に迷う方向け

  • 段階ごとにお客様を数えるまでは自社ででき、毎週の連絡と提案は代行に頼むと早い
  • 提案の型が無ければ、段階の分け方と見る数字を決めるところから頼む
  • 見積もりは、担当するお客様の数、稼働の量、契約期間をそろえて比べる
  • 目標は、顧客継続率と1社あたりの取引額を、頼む前の数字と比べて決める
  • 納品物は、段階ごとのお客様の数、お客様ごとの連絡の記録、翌週の提案で確かめる

1. カスタマーサクセスはフォローから始める既存のお客様への営業で、連絡と提案は代行に任せられる

カスタマーサクセスは、機能の活用を支えるフォローから始め、契約の更新と追加の提案までを受け持つ

カスタマーサクセスから学ぶ顧客満足度のための考え方:ライトサクセスとディープサクセスでは、カスタマーサクセスが受け持つことを、次の4つに分けました。

  • お客様がサービスを使いこなせるように支援すること
  • 契約を更新してもらうこと(リテンション)
  • 上位のプランへの移行を提案すること(アップセル)
  • 別の商品やサービスを提案すること(クロスセル)

入り口は1つ目の、お客様が機能を使いこなし、満足して使い続けられるようにするフォローです。そのうえで、残りの3つの、契約の更新と追加の提案までを受け持ちます。

地方企業におけるファネル分解を考える(ザモデルの分業は地方企業でも可能なのか?)でも、カスタマーサクセスを、「既存顧客営業」としての専門性が求められる役割だと書きました。

ライトサクセスとディープサクセスの記事では、名前の似たカスタマーサポートを、主に消費者向けの事業で、お客様からの問い合わせに答える仕事とし、対応時間の短さや解決率で評価されることが多いと書きました。同じ記事では、カスタマーサクセスは主に法人向けの企業で取り入れられることが多く、担当するお客様の契約の更新で評価されることが多いとも書いています。

代行で受注のあとの段階と、段階ごとに見る数字、提案の型を決めておくと、担当者が替わっても同じ基準で提案を続けられる

私たち(ローカルグローススタジオを運営するつなぐスタジオ)のカスタマーサクセス代行で作るものと、それぞれによって自社でできるようになることは、次のとおりです。

作るもの中身自社でできるようになること
受注のあとの段階と見る数字使い始めから取引を広げるまでの段階と、段階ごとに見る数字ですどの段階でお客様が離れているかを、数字で早く見つけられます
連絡の基準と予定どの数字がどの値になったら連絡するかと、取引が始まってから更新の前までに、いつ、誰に連絡するかです担当者が替わっても、同じ時期に同じ基準で連絡を続けられます
提案の型お客様の段階と状況ごとに、何を提案するかを決めた見本です担当者によって提案の中身がばらつかず、同じ型で提案できます
担当の業務内容社内の営業や窓口の担当者と、代行の担当者が、毎週それぞれ何をするかを決めたものです誰が何をするかが決まり、連絡の抜けや重なりが減ります
毎週の提案と記録お客様ごとの連絡の内容、提案、お客様の反応です毎週の定例で、どのお客様に次に何をするかを決められます

2. 何を目的にするか

目的は、現場の担当者の満足にとどまらず、解約を減らし、取引額を増やして、LTVを上げること

フォローで現場の担当者の満足を高めたうえで、既存のお客様への営業として事業の成果を上げることを目指します。解約を減らし、1社あたりの取引額を増やして、LTVを上げます。

LTV(顧客生涯価値)は、1社のお客様が取引の期間全体を通じて自社にもたらす価値の合計です。毎月や毎年の契約で取引する事業では、代表的な計算式は「顧客の平均単価 ÷ チャーンレート(解約率)」です(グロービス経営大学院 MBA用語集「ユニット・エコノミクス」)。

この式では、解約率が下がるか、1社あたりの単価が上がると、LTVが上がります。カスタマーサクセスの4つの仕事のうち、契約の更新は解約率を下げることに、上位のプランや別の商品の提案は1社あたりの単価を上げることにつながります。

LTVの計算に使う数字は、契約の形で変わります。ブレンデッドCPAを理解するでは、毎月の契約の法人向けサービスは月額単価、想定の契約期間、粗利率を掛け、ECの事業は1回の購入単価、年間の購入回数、続く年数、粗利率を掛けて計算する例を挙げました。

そのため、毎月や毎年の契約で取引するお客様では契約の更新と上位のプランへの移行を、注文ごとに取引するお客様では次の注文と別の商品の注文を、増やすことを目指します。

LTVが上がると、1社あたりの採算(ユニットエコノミクス)が良くなり、獲得にかけられる費用も増える

新しいお客様を獲得するには、広告や営業の費用が先にかかります。毎月や毎年の契約で取引する事業では、獲得した時点では通常は費用のほうが大きく、取引が続く間にその費用を回収していきます。回収し終える前に解約されると、獲得にかけた費用を取り戻せません。

このお客様1社あたりの採算をユニットエコノミクスと呼び、LTVを1社の獲得にかかった費用(CAC)で割って見ます(グロービス経営大学院 MBA用語集「ユニット・エコノミクス」)。LTVが上がれば、同じ獲得の費用で回収できる額が増え、1社の獲得にかけられる費用も増えます。

私たちのブレンデッドCPAの記事では、1社の獲得にかける費用をLTVの3分の1以下に収めることを目安に挙げました。マーケティング施策の全体像の記事では、この比率は業界や成長の段階によって変わるとも書きました。

契約の更新を決めるのは決裁者なので、現場の担当者の満足に加えて、決裁者の満足も目標に置く

ライトサクセスとディープサクセスの記事では、サービスを実際に使う現場担当者(エンドユーザー)の満足度をライトサクセス、経営者や決裁者の満足度をディープサクセスと呼びました。

法人向けのサービスで契約の更新を決めるのは、多くの場合、経営者や決裁者です。現場の担当者が満足していても、経営者が費用対効果に見合わないと判断すれば、契約は打ち切られます。予算を減らす時期、安い競合が出てきたとき、経営者が交代したときには、決裁者の満足が特に大事になります。

地方企業の法人向けのサービスでも同じです。Webサイトの制作会社と取引先のWeb担当者、研修の会社と人事の担当者、システム開発の会社と情報システムの部門のように、ふだんは現場の担当者とやり取りするので、担当者が満足していれば次も発注してもらえると考えがちです。ライトサクセスとディープサクセスの記事では、こうした取引でも決裁者の満足まで目指すことを挙げました。

記事では、導入時に決裁者から導入の目的と期待する成果を聞き、3か月後、6か月後、契約更新の2か月から3か月前に、決裁者へ成果を報告する進め方を挙げました。報告では、作業時間の削減や売上への貢献を数字で示し、かかった費用と比べます。

更新前の報告では、次の年に向けて上位のプランや追加の機能の活用を提案することも挙げています。決裁者への報告は、解約を減らすことと、取引額を増やすことの両方につながります。

お客様の数が多いと、すべてのお客様の決裁者に報告の機会を作るのは難しくなります。その場合は、取引額の大きいお客様や更新の時期が近いお客様から報告の機会を作ることをおすすめしています。

ほかのお客様には、成果をまとめた資料を作って、現場の担当者から決裁者に共有してもらいます。ライトサクセスとディープサクセスの記事でも、決裁者が会議に出られないときの方法として、資料の共有を挙げました。

3. どこから始めるか

まず、受注のあとを段階に分け、段階ごとに何社のお客様が残っているかを数える

ファネル分解の記事では、ファネルを「見込み客が顧客になるまでの導線」と説明し、獲得から育成までの全工程を段階に分け、段階ごとの転換率を数字で見て、改善する段階を見つけることを挙げました。同じ記事は、四半期ごとに見る数字として、顧客継続率とアップセル率も挙げています。

この考え方を、受注のあとに当てはめます。ライトサクセスとディープサクセスの記事で挙げた、使い始めの支援(オンボーディング)、使い続けてもらうこと、契約の更新、アップセルとクロスセルを、次の4つの段階として数えます。同じ記事の数え方は、毎月や毎年の契約のお客様に向けたものなので、注文ごとに取引するお客様は、右の列のように置き換えると数えられます。

段階毎月や毎年の契約で数えるもの注文ごとの取引での数え方の例
使い始め導入から3か月ほどの間に、決めた小さな目標を達成したお客様の数です初めての注文の後、2回目の注文があったお客様の数です
使い続けるログインの回数や主な機能を使った回数が、下がっていないお客様の数です前の注文からの間隔が、いつもより空いていないお客様の数です
取引を続ける契約を更新したお客様の数です前の年に取引があり、今年も取引が続いたお客様の数です
取引を広げる上位のプランや別の商品を追加したお客様の数です前の年より取引額が増えたお客様の数です

数えるときは、既存のお客様を1社1行で並べた、お客様ごとの取引の表を作ります。ExcelやGoogleスプレッドシートで作れます。

1. 取引が続いているお客様ごとに、取引が始まった日、直近1年の取引額、次の更新や注文が見込まれる時期を書きます

2. お客様ごとに、自社の窓口の担当者、お客様側の担当者と決裁者、最後に連絡した日と内容を書きます

3. お客様ごとに、使い始めから取引を広げるまでの4つの段階のどこまで進んでいるかを書き、段階ごとのお客様の数を数えます

取引の記録やお客様とのメールをChatGPTやClaudeなどのAIに読ませて、お客様ごとの取引の表に整理させることもできます。お客様の社名や担当者の名前、連絡先が入った記録を読ませる時は、AIに入力してよい情報の決まりを先に社内で決めておきます。

次に、お客様が多く離れている段階を見つけ、その段階の打つ手から始める

段階ごとのお客様の数を前の段階と比べると、どこでお客様が多く離れているかが分かります。打つ手は段階によって変わるので、お客様が離れている段階で打つ手から始めます。

お客様が離れている段階打つ手
使い始め導入の目的と期待する成果を決裁者から聞き、最初の3か月ほどで使いこなせるように支援します
使い続ける数字が下がったお客様に早めに連絡し、理由を聞いて使い方を提案します
取引を続ける更新の2か月から3か月前に、決裁者に1年間の成果を、かかった費用と並べて報告します
取引を広げる追加の提案をする時期をそろえ、更新前の報告で次の年の提案をします

使い始め、使い続ける、取引を続けるの3つの段階で打つ手は、ライトサクセスとディープサクセスの記事で挙げた進め方です。ファネル分解の記事は、受注のあとのケアとして、定期的なフォローの予定を決めることと、追加の提案をする時期をそろえることを挙げています。

連絡する時期を決め、連絡する日を担当者の週の予定に先に入れる

ファネル分解の記事では、専任のカスタマーサクセスの担当者を置きにくい地方の少人数の組織に向けて、既存の営業担当者の業務時間の20%から30%をカスタマーサクセスに充てることや、週や月の特定の日をカスタマーサクセスの日にすることを挙げました。

同じ記事で、最低限の連絡の予定として挙げたのは、次のとおりです。

  • 新しい契約の後、1週間、1か月、3か月の時点で連絡します
  • 四半期に1回、利用の状況を確かめ、満足度を聞きます
  • 契約の更新の3か月前から、計画を立てて連絡します

お客様ごとの取引の表にこの連絡の時期を書き込み、連絡する日を担当者の週の予定に先に入れます。予定に入れた連絡を続けられるなら、代行を頼まずに自社で進められます。

4. どこまで自社でやり、どこから外部に頼むか

段階ごとにお客様を数えるまでは自社ででき、毎週の連絡と提案は代行に頼むと早い

お客様ごとの取引の表を作り、受注のあとの段階ごとに何社残っているかを数え、離れている段階を見つけるところまでは、自社で進められます。段階ごとに何を提案するかを決められる人が社内にいれば、提案の型づくりも自社で進められます。

代行に頼むと早いのは、毎週の連絡と提案、その記録です。連絡する日を週の予定に先に入れても、新しい注文や問い合わせの対応が優先されて連絡が続かない場合は、連絡を続ける人手が社内に足りていません。

段階の分け方、見る数字、提案の型を決めることは、専門家に頼むと早く進みます。どの数字が更新や追加の注文より先に動くかや、決裁者に何を報告するかは、既存のお客様への営業を受け持った経験がないと決めにくいためです。

代行に頼む場合も、どの数字を目標にするかと、どのお客様の決裁者に深く関わるかは、自社で決めます。代行会社は、その目標と判断に沿って、数字の確認、連絡と提案、記録を受け持ちます。

社内で連絡の時間を取れる人がいれば社内で進め、取れないときは代行に頼む

選択肢向いている会社進め方と注意点
自分で進める既存のお客様が少なく、社長か営業の責任者が、お客様の決裁者と直接話せる会社ですお客様ごとの取引の表と連絡の予定を作り、決裁者への報告の時期を予定に入れます
社内で担当者を決める担当者が複数いて、そのうち1人の時間の一部を既存のお客様への営業に充てられる会社です既存のお客様に使う時間を、新しい注文の対応とは分けて先に決めます。担当者が新しい注文の対応に戻されると、連絡が止まります
外に頼むお客様の数が多く、担当者の全員が新しい注文の対応で手一杯な会社や、段階と提案の型を決める人が社内にいない会社です提案の型がないまま連絡の作業だけを頼むと、提案の中身を決める人がいなくなるので、型づくりも頼むことに含めます

5. 外部に頼むときの3つの頼み方

提案の型が無ければ、段階の分け方と見る数字を決めるところから頼む

カスタマーサクセスを頼める相手には、カスタマーサクセスの支援を専門にする会社、営業代行などとあわせて広く受ける会社、個人で請け負うフリーランスがあります。

代行会社を選ぶときも、体制の立ち上げを頼むときと、人手不足を補うときでは、選ぶサービスが変わります。比較サイトのBOXILの記事(2025年7月24日更新)も、立ち上げなら戦略の立案から運用の設計までを一貫して支援するサービスを、人手不足を補うなら使い始めの支援や追加の提案などの実務を代行するサービスを選ぶとしています。

頼み方何を頼むか納品物向いている会社
連絡と記録の作業だけ自社で決めた予定と文面で、お客様への定期的な連絡と記録を行ってもらいます連絡の記録です何を伝えるかが決まっていて、連絡の人手が足りない会社です
決めた型での提案まで自社で決めた段階と提案の型に沿って、お客様ごとの提案と記録を行ってもらいます連絡と提案の記録です提案の型があり、提案を続ける人手が足りない会社です
段階の分け方と見る数字、提案の型を決めるところから毎週の提案まで段階と見る数字、連絡の基準、提案の型、担当の業務内容を一緒に決め、毎週の提案と記録と、型の手直しを行ってもらいます段階と見る数字、連絡の基準と予定、提案の型、担当の業務内容、毎週の提案と記録ですどの段階で何を提案するかが決まっていない会社、立ち上げから任せたい会社です

私たちのカスタマーサクセス代行は、このうち「段階の分け方と見る数字、提案の型を決めるところから毎週の提案まで」に当たります。

お客様の情報を渡すときは、渡す項目を絞り、代行会社での扱い方を契約で決め、取扱いの状況を確かめる

代行会社には、お客様ごとの取引の表や連絡の記録を渡します。お客様の会社そのものの情報は個人情報に当たりませんが、担当者の氏名やメールアドレスは個人情報に当たります。そのため、渡す項目は代行の業務に必要なものに絞り、代行会社での扱い方を契約で決めておくことをおすすめしています。

利用目的の達成に必要な範囲で業務を任せるために渡すことは、個人情報保護法の委託に当たるので、担当者本人の同意は要らず、代行会社は任された業務の外ではそのデータを使えません(第27条第5項第1号)。

その代わり、委託する会社には代行会社を監督する義務があります(第25条)。代行会社での取扱いの状況の確かめ方として、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、データを扱う場所に出向くことや、口頭で確かめることを挙げています。

BOXILの比較記事も、顧客管理のツール(CRM)などを代行会社と共有する場合は、閲覧や編集の権限と、操作の記録をどう管理しているかを事前に確かめることを挙げています。代行会社の担当者のアカウントを作るときは、見られる項目、書き換えられる項目、データを書き出せるかを決めておきます。

定例に代行会社の担当者が同席しても、作業の順番や割り振りの指示は代行会社の責任者を通す

カスタマーサクセス代行の毎週の定例では、お客様ごとの状況と次の提案を一緒に確かめます。担当するお客様の順番や提案の型を変えたいときは、代行会社の責任者に伝え、責任者から担当者に指示してもらいます。

発注した会社が代行の担当者に、作業の順番や割り振りを細かく指示したり、方針の変更を日常的に指示したりすると、契約が請負や業務委託の形でも、実態として労働者派遣と判断されることがあるためです(厚生労働省・都道府県労働局のガイドの問答。判断の基準は、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準、昭和61年労働省告示第37号)。

代行会社の責任者の判断で担当者が定例に同席することや、責任者の了解のもとで依頼のメールを担当者にも写し(CC)で送ることは、それだけでは労働者派遣と判断されません(同じガイドの問答)。

追加の商品をメールで案内してもらうときは、受信を断ったお客様の連絡先を代行会社と共有する

代行会社に追加の商品の案内メールを任せるときは、受信を断ったお客様の名前とメールアドレスを代行会社と共有しておきます。

取引中のお客様には、事前の同意がなくても広告や宣伝のメールを送れますが(特定電子メール法第3条第1項第3号)、受信を断る連絡を受けた相手には送れません。断る連絡を受けたのが自社でも、送信を任された代行会社はその相手に送れなくなります(第3条第3項)。

追加の商品やサービスを案内するメールには、送信に責任を持つ者の氏名か名称と、受信を断る連絡の受け付け先を表示する必要があります(第4条)。代行会社に送信を任せた場合は、自社と代行会社のうち、その送信に責任を持つほうの氏名か名称を表示します。

あわせて、受信を断れること、送信に責任を持つ者の住所、苦情や問い合わせの受け付け先(電話番号、メールアドレス、URLのいずれか)も表示する必要があります(施行規則第9条)。

頼む前に、お客様ごとの取引の表を用意し、提案してよい商品と条件、社内で判断する人を決めておく

用意しておくもの中身
お客様ごとの取引の表取引が始まった日、直近1年の取引額、次の更新や注文の時期、最後に連絡した日、決裁者を1社1行で書いた表です
取引と問い合わせの記録お客様ごとの注文の履歴と、これまでの問い合わせや要望の記録です
提案してよい商品と条件追加で提案してよい商品やサービス、価格、値引きできる幅と、値引きを決める人です
社内に引き継ぐ話の種類解約の相談やクレームのように、代行の担当者が答えず、社内の担当者に引き継ぐ話の種類です
社内の窓口と決める人代行会社とやり取りする社内の担当者と、目標の数字や深く関わるお客様を最終的に決める人です

個人に代行を頼むときは、フリーランス法の取引条件を書面かメールで示す

従業員を雇わずに個人で請け負うフリーランスに頼む場合は、フリーランス法の対象になることがあります。仕事を任せたら、すぐに、仕事の内容、報酬の額、支払期日などを、書面かメールなどで示す必要があります(第3条)。

従業員を使う会社などが6か月以上の期間で行う委託(更新で6か月以上続くことになるものを含みます)では、契約を解除するときや更新しないときに、少なくとも30日前までに予告する必要があります(第13条、第16条、施行令第3条)。

カスタマーサクセスの代行は毎月続く仕事なので、やめる時期を決めるときは、この予告の期間も見込んでおきます。

6. 費用

自分で進める場合は、担当者の業務時間の20%から30%を充てる分の人件費を見込み、代行の料金と比べて頼むかを決める

自分で進める場合、お客様ごとの取引の表と連絡の記録はExcelやGoogleスプレッドシートで足ります。費用として見込むのは、連絡と提案、記録を受け持つ担当者の人件費です。

ファネル分解の記事が挙げたように、既存の営業担当者の業務時間の20%から30%をカスタマーサクセスに充てるなら、その担当者の人件費の20%から30%が目安になります。その分、新しい注文や商談に使える時間も減るので、頼むかどうかは、この人件費と減る時間を、代行の毎月の料金と比べて決めます。

代行会社の見積もりは、お客様の数、稼働の量、契約期間をそろえて比べる

比較サイトBOXILの記事(2025年7月24日更新)によると、カスタマーサクセスの代行で料金を公開しているサービスは多くなく、料金の形には、月ごとの固定報酬、成果報酬、その組み合わせがあります。

同じ記事は、料金は、頼む仕事の範囲、業界の専門性、担当者のスキルによって変わるとして、複数の会社から見積もりを取って比べることを挙げています。見積もりを比べるときは、担当するお客様の数、月の稼働時間、毎週の報告の中身、最低契約期間をそろえます。

私たちのカスタマーサクセス代行は、基本プランに加える業務代行として、月額35万円からお受けしている

私たちは、マーケティング支援の基本プラン(月額4万円から)に加えて、必要な施策をプロジェクト単位でご発注いただく形(プロジェクト発注)で受けています。営業や採用などの実作業を私たちが行う業務代行も、このプロジェクト発注の形の1つです。

カスタマーサクセス代行は、この業務代行として、0.5人月(1人が1か月働く量の半分)の単位でお受けしています(月額35万円から)。見る数字と判定の基準、提案の型、担当の業務内容を決めるところから、毎週の提案と記録までを担当します。

7. 目標にする数字と、納品物の確認のしかた

目標は、顧客継続率と1社あたりの取引額を、代行を頼む前の自社の数字と比べて決める

顧客継続率や取引額の増え方は、商材、契約の形、お客様の数によって変わります。そのため、代行を頼む前の自社の数字を出しておき、目標はその数字と比べて決めます。

目標測り方見方
顧客継続率前の年に取引があったお客様のうち、今年も取引や契約が続いた割合を出します代行を頼む前の年の割合と比べます。続かなかった分が、解約や取引の終了にあたります
1社あたりの取引額続いているお客様の取引額の合計を、お客様の数で割り、前の年と比べます上位のプランや別の商品の追加で増えた額を分けて見ます
段階ごとのお客様の数使い始めから取引を広げるまでの4つの段階に、何社残っているかを四半期ごとに数えます離れるお客様が多い段階が変わったかを見て、打つ手を見直します
予定どおりに連絡できたお客様の割合連絡の予定があったお客様のうち、実際に連絡できた割合を月ごとに出します下がっていれば、担当の業務内容か連絡の予定を見直します

更新の結果を待たずに、段階ごとのお客様の数と、提案から注文になった件数で、代行を続けるか見直すかを決める

契約の前に、続けるか、見直すか、やめるかを判断する時期と、その時に見る数字を、代行会社と決めておきます。

更新や次の注文が1年に1回のお客様が多いと、取引が続いたかの結果が出るまでに時間がかかります。その間は、使い始めと使い続ける段階のお客様の数と、提案から注文につながった件数を見て判断します。

ライトサクセスとディープサクセスの記事も、更新の時期が1年後のことが多いので、更新より先に動く数字を決めて管理すると書きました。

納品物は、段階ごとのお客様の数、お客様ごとの連絡の記録、翌週の提案、決裁者への報告の材料が残っているかで確かめる

確かめること見方
段階ごとのお客様の数4つの段階に何社残っているかが、決めた時期ごとに数えられているかを見ます
お客様ごとの連絡の記録誰に、いつ、何を伝え、お客様が何と答えたかが、お客様ごとに残っているかを見ます
連絡の基準に沿った印見る数字が基準を下回ったお客様に印があり、連絡の予定が入っているかを見ます
翌週の提案毎週の報告に、どのお客様に何を提案するかと、その理由が書かれているかを見ます
社内に引き継いだ話解約の相談やクレームのような話が、決めたとおりに社内の担当者へ引き継がれているかを見ます
決裁者への報告の材料お客様がかけた費用と、お客様の作業時間や売上の変化を並べた材料が、報告の時期までに用意されているかを見ます

これらが記録に残っていれば、代行をやめたあとも、どのお客様にいつ何を伝えるかを、社内の担当者が引き継げます。

代行会社に任せると社内にノウハウがたまらない場合があるので、段階的な引き継ぎや資料の整備に応じるかを、契約の前に確かめておきます。BOXILの比較記事も同じ点を挙げています。

ローカルグローススタジオの観点

ライトサクセスとディープサクセスの記事では、地方企業がディープサクセスを目指すためのポイントとして、経営者に報告する機会をこちらから作ることと、一度の報告で終えず、新しい提案を続けることも挙げました。

私たちのカスタマーサクセス代行も、現場の担当者への連絡で終えず、決裁者に示す数字と次の提案まで用意することを大事にしています。解約を減らすことと取引額を増やすことは、どちらもLTVを上げ、新しいお客様の獲得にかけた費用の回収につながるためです。進め方は次のとおりです。

1. 既存のお客様との取引の継続と追加の注文につながる数字を決め、会社全体の数字をお客様ごとに分けて、数字ごとに連絡する基準を置きます

2. 営業や窓口の担当者と「毎週何を出すか」をすり合わせ、提案の型と担当の業務内容、毎週の手順を決めます

3. 代行の担当者が型に沿って提案と記録を行い、最初の数回をレビューして型を固めたうえで、毎週の定例で続けます

お客様の情報が担当者ごとのExcelとメールに分かれているときは、情報を一か所にまとめるツールを導入する「SFA/CRM導入」も、別のメニューとしてお受けしています。

事例

代表は前職で社内のカスタマーサクセスのチームを率い、フォローにとどまらず、追加の契約と解約の数字で成果を出した

代表の佐久間は、以前に勤めた会社の法人向けの高単価なソフトウェアのサービスで、カスタマーサクセスのマネージャーを務め、担当するお客様の契約の更新と追加の契約を受け持つチームを率いました。

チームの組織図を設計し、追加の契約(アップセル)の実績を約5倍にしました。チーム全体では、解約と取引の縮小で減った取引額から追加の契約で増えた取引額を差し引き、期の初めの取引額で割った割合(NETchurn率)が、それまでで最も良い水準になりました。

自社で進められることと、相談したほうが早いこと

お客様ごとの取引の表を作ること、受注のあとの段階ごとにお客様を数えること、連絡の予定を決めることは、専門家に費用を払わずに自社で進められます。

  • 既存のお客様を1社1行で並べ、取引が始まった日、直近1年の取引額、次の更新や注文の時期、決裁者、最後に連絡した日を書きます
  • 使い始め、使い続ける、取引を続ける、取引を広げるの4つの段階ごとに、何社のお客様が残っているかを数えます
  • お客様が多く離れている段階を見つけ、その段階の打つ手から始めます
  • 新しい契約の後と更新の前に連絡する時期を決め、連絡する日を担当者の週の予定に先に入れます

ここまでを自社で進めておけば、外部に頼むときに、どの段階で手を打ってほしいかを先に伝えられます。

一方で、外部に頼むほうが早く進むのは、次のような状況です。

  • お客様の数が多く、担当者の全員が新しい注文の対応で手一杯で、連絡の時間を週の予定に入れても続かないときです
  • 連絡はしているものの、担当者ごとに提案の中身が違い、段階ごとに何を提案するかを決める人が社内にいないときです
  • 解約や取引の縮小に、更新の時期になって気づくことが続き、段階の分け方と見る数字から決めたいときです

私たちはカスタマーサクセス代行を、基本プラン(月額4万円から)に加えるプロジェクト発注の業務代行として、0.5人月単位(月額35万円から)でお受けしています。受注のあとの段階と見る数字、提案の型、担当の業務内容を一緒に決め、毎週の提案と記録を担当します。

カスタマーサクセス代行は、業務代行のメニューとしてプロジェクト発注のページに載せています。お客様ごとの取引の表を作って段階ごとに数えてみて、連絡が続かないときや、何を提案するかを決める人が社内にいないときは、よかったらご相談ください。

参考資料

まとめ:受注のあとを段階に分けて数え、離れている段階から手を打ち、手が回らなければ代行に任せる

カスタマーサクセスは、機能の活用を支えて満足を高めるフォローから始め、現場の担当者の満足にとどまらず、既存のお客様への営業として事業の成果を目指す仕事です。解約を減らし、1社あたりの取引額を増やしてLTVを上げると、新しいお客様1社の獲得にかけた費用に対して回収できる額が増え、新しいお客様の獲得だけに頼らずに売上を伸ばせます。

契約を続けてもらうには、現場の担当者の満足を高めることに加えて、更新を決める決裁者に、かかった費用と成果を並べて報告します。お客様の数が多いときは、取引額の大きいお客様や更新の時期が近いお客様から報告の機会を作ります。

最初の一歩は、既存のお客様を1社1行で並べたお客様ごとの取引の表を作り、使い始め、使い続ける、取引を続ける、取引を広げるの段階ごとに何社残っているかを数えることです。お客様が多く離れている段階が分かれば、その段階の打つ手から始められます。

連絡する日を週の予定に入れても続かないときは、毎週の連絡と提案を代行に頼むと早く進みます。段階の分け方と提案の型を決める人が社内にいないときは、設計から外部に頼むと早く進みます。どの数字を目標にするかと、どのお客様の決裁者に深く関わるかは、頼む場合も自社で決めます。

契約の前には、お客様の情報の渡し方と代行会社での扱い方、定例での指示の出し方、受信を断ったお客様へメールを送らない手順を決めます。見積もりは、担当するお客様の数、稼働の量、契約期間をそろえて比べます。

目標は、顧客継続率と1社あたりの取引額を、代行を頼む前の自社の数字と比べて決めます。段階ごとのお客様の数と、お客様ごとの連絡の記録、翌週の提案が自社に残れば、代行をやめたあとも、社内の担当者が同じやり方で既存のお客様への営業を続けられます。

「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。