ローカルグローススタジオは、『地方企業にスタートアップのような成長を』というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
社員が増えると、社長が全員と直接話していたころのようには方針が伝わらなくなり、仕事で何を大事にするかの考え方が、人や部署によってばらばらになることがあります。
経営理念やビジョンを言葉にして、社員も内容を理解しているのに、日々の行動には結びついていない会社もあります。
中小企業の経営者に聞いた調査では、回答した企業の約9割が経営理念やビジョンを明文化していて、明文化している企業のうち、従業員が理解していると答えた企業は8割を超えていました。
一方で、従業員の自律的な行動にまで結びついていると答えた企業は5割を下回りました(2022年版中小企業白書が引く、東京商工リサーチの2021年11月から12月の調査。回収5,318社のうち、経営理念やビジョンを明文化していて、この問いに答えた4,319社の回答)。
MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)をすでに定めている会社では、言葉を作り直す前に、一人ひとりがそのMVVのどの言葉に共感するか、その言葉が自分の経験や考えとどう重なるかを話し合う進め方があります。
互いの話を聞いたうえで、共感が集まった言葉をもとに、部署ごとに今期(1年)のスローガンと行動の約束をまとめます。
この記事は、「従業員参加型ビジョンミーティング研修」について、2種類の読者に向けて書きました。1つは、全員でビジョンを話し合うと何が決まるのか、まだイメージを持てていない方です。もう1つは、イメージはあるものの、自社で進められるのか、外部の専門家に頼むべきか迷っている方です。
私たち(ローカルグローススタジオを運営するつなぐスタジオ)の従業員参加型ビジョンミーティング研修では、全員が参加する対話の場を設計して進行し、部署ごとに今期のスローガンと行動の約束を決め、その約束の実行を振り返る手順まで整えます。
前半は、まだイメージを持てていない方に向けて、私たちの代表が前職の営業組織で運営したビジョンミーティングの進め方と、研修の目的、費用をかけずに始める順番を書きました。
後半は、外部に頼むか迷っている方に向けて、自社で進める範囲と外部に頼む範囲の境目、外部への頼み方、費用、納品物の確かめ方を書きました。
この記事で分かること
まだイメージがない方向け
- ビジョンシートをもとに一人ずつ話す時間などの、代表が前職の営業組織で運営したビジョンミーティングの紹介
- 一人ひとりが思いを話してから、チームのビジョンと行動計画を決める
- 目的は、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)のどの言葉に共感するかを話し合い、部署のスローガンと行動の約束を決めること
- まず、会社のMVVと今期の目標を1枚にまとめる
イメージはあるが次の一手に迷う方向け
- 1つの部署でスローガンを決めるまでは自社ででき、全社で進行役が足りなければ外部に頼むと早い
- 時間割とシートを作れるなら当日の進行を、初めて全社で開くなら設計から頼む
- 頼むときの費用は参加者1人あたりに直すと比べやすく、企業が1人に使う1年分の研修費の平均も目安にできる
- 研修の後は、行動の約束を実行したかと、振り返りを開いた回数を見る
- 納品物は、スローガンに担当と期日のある行動が付いているかで確かめる
1. 代表の前職のビジョンミーティングでは、一人ひとりが思いを話してから、チームのビジョンを決めた
1日を4つの部に分け、相互理解の部で一人ずつ話してから、ビジョンと行動計画を決めた
代表は、前職の営業組織で、営業の3つのチームが参加するビジョンミーティングを設計し、進行しました。新しく入った人が増えた時期に、互いを深く理解し、組織の目指す方向を全員で言葉にするために開いた会です。この記事で提案する研修に取り入れているのは、この会の、一人ずつ思いを話してから言葉を決める順番です。
会は、全員で考えて組織のビジョンを作り上げる場、つまり共有ビジョンを作る場と位置づけました。1日の流れは、次の4つの部に分けました。
| 部 | 何をしたか | 残ったもの |
|---|---|---|
| はじめに | 参加のルールを確かめ、自社と他社のビジョンを例に、ビジョンとは何か、行動指針とどう違うかを説明しました | 参加のルールと、ビジョンという言葉の意味です |
| 相互理解 | チームごとに、一人ずつビジョンシートに書いたことを5分で話し、7分の質疑を受けました | 互いの価値観と、今の会社に入った動機の理解です |
| チームのビジョンづくり | 大事にしたいことを付箋に書き出し、対話で1つのビジョンにまとめ、スローガンにしました | チームごとのビジョンとスローガンです |
| ビジョンを形にする | 明日から何をするかを行動計画にまとめ、チームごとに発表しました。チームによっては、行動ごとに担当の委員も決めました | 行動計画と、チームによっては委員の担当です |
行動計画には期限を決めました。
ビジョンシートに学生時代のこと、入社の動機、将来の夢などを書いて話し、仲間の考え方とその背景を互いに知る
参加者は全員、次の問いに答えるビジョンシートを書き、それをもとに話しました。
1. 学生時代はどんな人だったか(忘れられない思い出や出来事)
2. 前職から、今の会社に入った動機
3. 将来実現させたいことと夢
4. これまででいちばん夢中で取り組んだ瞬間
5. 自分が考える理想の組織(自社、取引先、お客様の観点を入れて)
1人あたり話す5分と質疑の7分を合わせて12分なので、10人のチームなら共有だけで2時間かかります。この会では、チームごとに分かれて、共有の時間を午前の2時間に取りました。
時間をかけて共有したのは、考え方や物事の捉え方が人によって違うからです。同じビジョンを目指すには、まず一緒に働く仲間の考え方と、その背景を互いに知る必要があると考えました。
対話は、意見を言う、相手の背景を聞く、判断を保留する、結論を急がない、という4つのルールで進める
会の始めには、参加のルールとして、対等で自由な立場で参加すること、断定的な言い方をしないこと、自分の考えや背景をオープンにすること、人の意見の背景を理解しようとすること、全員が発言することを確かめました。
チームのビジョンを作る部では、会議の進め方を、アイデアを出すブレインストーミング、議題について参加者同士で議論するディスカッション、2つの意見を戦わせるディベートと分けて説明しました。
そのうえで、ビジョンづくりには、問いかけ続けて考えを深めるダイアログ(対話)を使い、次の4つを対話のルールにしました。
- 自分の意見を主張する: 自分の考えと、そう考える背景を先に話します
- 他人の意見を尊重する: 他人の意見とその背景を聞き、「そういう考え方もあるか」と受け止めます
- 判断を保留する: 否定をせず、相手の意見の欠点を探したり、自分の見解にこだわったりしません
- 探求のプロセスであることを意識する: 結論を急がず、沈黙を恐れず、自分たちの思い込みや常識を疑います
「判断を保留する」というルールは、物理学者デヴィッド・ボームの『ダイアローグ』(英治出版)の考え方と重なります。出版社の紹介では、対話とは、情報やアイデアではなく「意味」を共有することであり、あらゆる「想定」を保留することが重要だと説明されています。
スローガンを決めたあと、明日から何をするかを決め、チームによっては行動ごとに担当の委員も置いた
チームのスローガンが決まったところで、明日から何をするかを具体的に決める時間を取りました。
行動計画には、週や月ごとに何をするかを書きました。チームによっては、行動ごとに担当の委員を決めました。委員は、その行動が続くように周りに声をかけたり、自分から先に取り組んだりする役を受け持ちました。取り組みの内容をまとめて共有する委員もいました。行動と担当まで決めておくと、会の後に誰が何を進めるかが分かります。
この記事で提案する研修では、この行動計画にあたるものを、部署の「行動の約束」と呼びます。
2. 何を目的にするか
目的は、すでにあるMVVのどの言葉に共感するかを一人ずつ話し、その話をもとに部署のスローガンと行動の約束を決めること
従業員参加型ビジョンミーティング研修の目的は、会社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を新しく作ることより、すでにあるMVVのどの言葉に共感するか、その言葉が自分の経験や考えとどう重なるかを一人ひとりが話し、共感が集まった言葉をもとに部署の今期のスローガンと行動の約束を決めることです。
MVVをすでに定めている会社には、言葉を作り直す前に、一人ひとりがその言葉をどう受け止め、どんな行動につなげるかを話し合うところから始めることをおすすめしています。言葉は理解されていても、行動には結びついていない会社が多いためです。
経営者に聞いた東京商工リサーチの調査では、経営理念やビジョンを明文化している企業のうち、従業員が理解していると答えた企業は8割を超えた一方で、従業員の自律的な行動にまで結びついていると答えた企業は5割を下回りました。
部署の目標は期ごとに決まるので、部署のスローガンは今期(1年)の言葉にしておくと、1年で振り返り、次の期に作り直せます。
経営者の説明と、社員どうしの対話を、同じ研修の中に入れる
研修の最初に経営者が自分の言葉でMVVに込めた考えを話し、そのあとに社員どうしが自分の受け止め方を話す構成にします。こうすると、経営者からの発信と、社員が納得するための対話を、1日の中で両方行えます。
同じ調査でも、全社的に浸透している企業の経営者は、浸透していない企業の経営者より、浸透に向けて「経営者からの積極的なメッセージの発信」と「従業員の納得感を得られる経営理念・ビジョンの内容であること」を重視する割合が高くなっていました。
部署のスローガンは、一人ひとりが自分のビジョンを話したあとに決める
代表が運営したビジョンミーティングでは、相互理解の部で一人ひとりのビジョンを話してから、チームのビジョンを作る部に進みました。先に一人ひとりの考えを聞いておくと、部署のスローガンの言葉を選ぶときに、会社のMVVのどの部分と、誰のどの思いが重なるかを確かめながら決められます。
3. どこから始めるか
まず、会社のMVVと今期の会社の目標を1枚にまとめ、部署ごとに何を決めるかをはっきりさせる
従業員参加型ビジョンミーティング研修の準備は、費用をかけずに、次の4つから始められます。
1. 会社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)、行動指針、社長が社員に伝えてきた言葉を1枚にまとめます
2. 今期の会社の目標と、部署ごとの目標の数字を並べます
3. 研修で部署ごとに決めるもの(今期のスローガン、行動の約束、委員の担当)と、それを誰が承認するかをはっきりさせます
4. ビジョンシートの問いを決め、参加者に研修の前に書いてもらいます。代表が運営した会の5つの問い(学生時代のこと、今の会社に入った動機、将来の夢など)に加えて、「会社のMVVのどの言葉に、自分の経験や考えが重なるか」を問いに入れると、研修の場で、一人ひとりがMVVをどう受け止めているかを話せます
全員が話し終えるまでの時間は、1人の話と質疑の時間に人数を掛けて見積もり、人数が多いときは部署ごとに場を分ける
代表が運営した会と同じく1人12分で見積もると、30人が1つの場で話すだけで6時間かかります。そこからスローガンと行動の約束まで1日で決めるには、部署ごとに場を分けて、それぞれの場に進行役を置く方法があります。
最後に全員が集まり、部署ごとのスローガンと行動の約束を発表し合うと、ほかの部署が何を大事にするかも全員が知ることができます。
費用をかけずに試すなら、定例の会議で毎回1人ずつビジョンシートに書いたことを話す
1日の研修を開く前に試す方法として、部署の定例の会議の最初の12分を使い、毎回1人ずつビジョンシートに書いたことを話してもらう進め方があります。
10人の部署で週1回の定例なら、10週で全員の話を聞けます。全員が話し終えた時点で、部署のスローガンと行動の約束を決める回を設けると、1日の研修を開かなくても、一人ひとりの話を聞くところからスローガンを決めるところまでを進められます。
4. どこまで自社でやり、どこから外部に頼むか
1つの部署でスローガンを決めるまでは自社ででき、全社で進行役が足りなければ外部に頼むと早い
1つの部署なら、部署の今期のスローガンと行動の約束を決めるところまで、自社で進められます。定例の会議で毎回1人ずつビジョンシートに書いたことを話し、全員が話したあとにスローガンと行動の約束を決め、約束をどの定例で振り返るかも決めます。
このとき、参加のルールにある「対等で自由な立場で参加する」を守るには、参加者を評価する立場にない人が進行役を務める必要があります。社長や部長が進行すると、参加者は自分を評価する人の前で会社に入った動機や将来の夢を話すことになり、思っていることを話しにくくなる場合があります。
全社で開くときは、部署ごとに場を分けるので、場の数だけ進行役が要ります。評価する立場にない進行役を社内で場の数だけそろえられないときや、社長が進行役でなく一人の参加者として話したいときは、研修の設計と当日の進行を外部に頼むと早く進みます。
研修で決めた行動の約束は、どの定例で誰が振り返るかを部署ごとに決めておきます。振り返りを続ける担当が決まっていないときや、以前にスローガンを決めたものの振り返りが続かなかったときは、振り返りの手順づくりまで外部に頼むと早く進みます。
1つの部署で評価する立場にない人が進行できれば自社で進め、初めて全社で開くときは外に頼む
| 選択肢 | 向いている会社 | 進め方と注意点 |
|---|---|---|
| 自社で進める | 1つの部署から始め、その部署で参加者を評価する立場にない人が進行役を務められる会社です | 定例の会議で1人ずつビジョンシートに書いたことを話す形から始め、全員が話したあとにスローガンを決めます |
| 社内で進行役を育てる | 部署が多く、毎年続けて開く予定がある会社です | 進行役になる人が、参加のルールと対話の4つのルールを使って、まず小さな場を進行してみます |
| 外に頼む | 初めて全社で開く会社、社長が参加者として話したい会社、部署が多く1日で終えたい会社です | 当日の進行だけを頼むと、研修の後の振り返りが社内で続きにくくなります |
5. 外部に頼むときの3つの頼み方
時間割とシートを自社で作れるなら当日の進行だけを頼み、初めて全社で開くなら設計から頼む
ビジョンを話し合う研修を頼める相手には、研修会社、組織開発のコンサルティング会社、個人のファシリテーター(会議の進行役)がいます。相手が違っても、頼み方は次の3つのどれかになります。
| 頼み方 | 何を頼むか | 納品物 | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| 当日の進行 | 自社で決めた時間割とシートで、当日の進行役を頼みます | 当日の記録です | 時間割とシートを自社で作れて、進行役だけが足りない会社です |
| 設計と進行 | 参加のルール、時間割、ビジョンシート、部署の分け方を一緒に決め、当日の進行もしてもらいます | 研修の設計書と、部署ごとのスローガンと行動の約束です | 初めて全社で開く会社です |
| 振り返りまでの伴走 | 設計と進行に加えて、研修の後の定例で行動の約束を振り返る手順を作り、最初の振り返りに同席してもらいます | 上の納品物に加えて、振り返りの手順です | 研修の後に振り返りを続ける担当が決まっていない会社です |
私たちの従業員参加型ビジョンミーティング研修は、会社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)の確認、対話のルールと時間割の設計、当日の進行、部署ごとの今期のスローガンと行動の約束、振り返りの手順までを、1つのプロジェクトとして進めます。
頼む前に、会社のMVVと今期の目標をまとめ、参加者と日程、スローガンを承認する人を決めておく
| 頼む前に用意するもの | 中身 |
|---|---|
| 会社のMVVと、社長の言葉 | MVVと行動指針の文書に、社長が社員に伝えてきた言葉を添えます |
| 今期の会社と部署の目標 | 今期の目標の数字を、会社全体と部署ごとに並べます |
| 参加者の名簿と日程 | 部署ごとの人数と、全員が集まれる日を決めます |
| スローガンを承認する人と、振り返りの場 | 部署で決めたスローガンを誰が承認するかと、どの定例で振り返るかを決めます |
個人のファシリテーターに頼む場合は、2024年11月に施行されたフリーランス法の対象になることがあります。対象になる取引では、発注する側は、仕事の内容や報酬の額など9つの取引条件を、書面かメールなどで示す必要があります。
6. 費用
定例の会議で進めれば新しい費用はかからず、全社で1日開くなら、社内で足りない進行役を外部に頼む費用を見込む
自社で進めるときに必要なのは、ビジョンシートの用紙、付箋、会場と、参加者の時間です。定例の会議で1人ずつ話す形なら、新しく払う費用はかかりません。
1日の研修を開く場合は、参加者全員が1日仕事を離れます。10人なら10人分の1日の勤務時間を使うことを前提に、繁忙期を避けて日程を決めます。
全社で開くときは、部署ごとに分けた場の数だけ、参加者を評価する立場にない進行役が要ります。社内でその人数をそろえられないときは、研修の設計と当日の進行を外部に頼む費用も見込みます。
頼むときの費用は、参加者1人あたりに直すとほかの研修と比べやすく、企業が1年間に研修に使う1人あたりの平均額も目安にできる
外部に頼むときの費用は、参加者1人あたりに直すと、ほかの研修と比べやすくなります。比べる目安には、企業が職場を離れて行う研修(OFF-JT)に1年間で使った、労働者1人あたりの平均額が使えます。2024年度は2.0万円でした(厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査。OFF-JTに費用を支出した、常用労働者30人以上の企業)。
この額は、2024年度の1年間にOFF-JTに支出した費用を、労働者1人あたりの平均額にしたもので、1回の研修の費用ではありません。そのため、この研修1回の1人あたりの費用が、1年分の研修費の平均のどのくらいに当たるかを見る目安として使えます。
私たちは、マーケティング支援の月額4万円を基本とし、必要な施策と制作物の分だけご発注いただく形で受けています。
必要な施策だけ取り組みたい、ウェブサイトやダッシュボードを制作したい、といったニーズに合わせて、単発のプロジェクト発注を1か月単位から受けています(1か月単月15万円から)。
従業員参加型ビジョンミーティング研修も、この単発のプロジェクト発注で受けています。研修の設計、当日の進行、部署ごとのスローガンと行動の約束、振り返りの手順までを、私たちが進行を管理しながら一緒に進めます。
人材開発支援助成金を見込むなら、ビジョンを話し合う研修が対象になるかを申請の前に労働局で確かめる
ビジョンを話し合う研修の費用に、厚生労働省の人材開発支援助成金を見込む場合は、対象になるかを申請の前に管轄の労働局で確かめる必要があります。この助成金の人材育成支援コースは職務に関連した知識や技能を身につける訓練が対象で、ビジョンを話し合う研修は、対象にならない研修の例に近い面があるからです。
対象にならない例として、同コースの案内(令和8年8月3日版)には、職業や職務に関する知識・技能の習得を目的としていない「意識改革研修」「モラール向上研修」と、自社の経営方針や部署の事業の説明が挙がっています。職場を離れて行う研修の場合は、対象外の時間を除いて10時間以上行う必要もあります。
7. 目標にする数字と、納品物の確認のしかた
研修の後は、行動の約束を実行したかと、振り返りを開いた回数を見る
| 目標 | 測り方 | 目安 |
|---|---|---|
| 全員が話したか | 当日、ビジョンシートに書いたことを話し、質疑を受けた参加者の人数を数えます | 参加者全員です。話していない人がいれば、定例の会議で話す回を作ります |
| 行動の約束を実行したか | 定例で、約束ごとに実行したかを記録し、実行した割合を出します | 前回の振り返りより上がっているかを見ます |
| 振り返りを開いたか | 決めた頻度で振り返りの回を開いたかを数えます | 決めた回数どおりかを見ます。開かれていなければ、担当と場を決め直します |
| 期の終わりに見直したか | 1年後に、スローガンを次の期に向けて作り直したかを見ます | 期ごとに1回です |
研修の前と1年後に社員に簡単なアンケートを取ると、会社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)が社員にどの段階まで浸透したかを比べられます。段階の分け方には、東京商工リサーチの調査が経営者に聞いた4段階(認知、理解、共感・共鳴、行動への結びつき)を使えます。
納品物は、スローガンに担当と期日のある行動が付いているかで確かめる
| 確かめること | 見方 |
|---|---|
| 研修の設計書に、参加のルール、時間割、ビジョンシートがあるか | 次の期に自社だけで同じ研修を開けるかを見ます |
| 部署のスローガンが、会社のMVVとどうつながるか書かれているか | スローガンの言葉が、MVVのどの部分をどう受け止めたものかが説明されているかを見ます |
| 行動の約束に、担当と期日があるか | 約束ごとに、誰が、いつまでに、何をするかが書かれているかを見ます |
| 振り返りの手順があるか | どの定例で、誰が、何を見て振り返るかが書かれているかを見ます |
ローカルグローススタジオの観点
私たちは間違ってはいけない戦略の順番|ビジョン→事業→商品→営業→組織で、戦略の最上位にあるのは会社のビジョンであり、ビジョンがあることで、どの事業に取り組むべきかの判断基準ができること、戦略は上から順番に決めるのが原則であることを書きました。
この考え方を部署に当てはめると、部署の今期のスローガンも、会社のビジョンの下に置いて決めることになります。部署のスローガンを決めるときに会社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を最初に確かめるのは、そのためです。
マネジメントとは、今のリソースでやりくりすること、リソース調達力を上げること。バフ人材とデバフ人材を見極める。では、ビジョンフィットを「会社のビジョンと個人が目指す方向性が一致しているかどうか」と説明し、採用で見極める質問例を挙げました。
ビジョンシートで一人ひとりが将来実現させたいことを話す場は、会社のビジョンと一人ひとりが目指す方向が一致しているかを、入社後に全員で確かめ直す場にもなります。
事例
公開されている事例では、ビジョンを軸に置いたまま、何を自社らしいと考えるかを社員と共有し続けている
会社のビジョンを作り直さずに、何が自社らしいかと、なぜそう考えるかを社内で共有し続けている会社を、私たちのマガジンの「先進企業に学ぶ」シリーズから紹介します。
中川政七商店は、2007年に掲げた「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを、2018年に創業家以外から社長を迎えた後も経営の軸に置いています。
千石あや社長は就任後、何が自社らしいかを言葉や映像にして社内の共通認識をそろえる作業に取り組み、なぜそれを自社らしいと考えるのかを共有し続けていると語っています。現場から上がる声を受けて、社長がその「らしさ」を調整することもあるそうです。
利益とビジョンがせめぎ合ったときはビジョンを優先するという「ビジョン51対、利益49」の基準は、人事考課にも入っています。千石社長によれば、年2回の人事考課の「マインド」の項目の最初に「ビジョン51%、利益49%で自分の仕事を進められたか」を置き、自己評価と上司評価で振り返る仕組みです。
この記事で提案する研修も、MVVの言葉は変えずに、一人ひとりがその言葉をどう受け止めているかを話して部署の行動の約束を決め、研修の後は定例で振り返る進め方です。
自社で進められることと、相談したほうが早いこと
会社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)をまとめること、ビジョンシートの問いを決めること、定例の会議で1人ずつ話すことは、専門家に費用を払わずに自社で進められます。
- 会社のMVV、行動指針、社長の言葉と、今期の会社と部署の目標を1枚にまとめます
- ビジョンシートの問いを決め、会社のMVVのどの言葉に自分の経験や考えが重なるかを聞く問いも入れて、部署の全員に書いてもらいます
- 定例の会議の最初の12分で、毎回1人ずつビジョンシートに書いたことを話してもらいます
- 全員が話し終えたら、部署の今期のスローガンと行動の約束を決め、約束をどの定例で振り返るかを決めます
ここまでを自社で進めれば、外部に頼む範囲を、全社で開くときの設計と当日の進行、研修の後の振り返りの手順づくりに絞れます。
一方で、外部に頼むほうが早く進むのは、次のような状況です。
- 社長が進行役でなく、一人の参加者として自分の考えを話したいときです
- 部署が多く、全社で1日に開いて、部署ごとのスローガンまで決めたいときです
- 以前にスローガンを決めたものの、振り返りが続かなかったときです
私たちは従業員参加型ビジョンミーティング研修を、単発のプロジェクト発注(1か月単位から、1か月単月15万円から)でお受けし、研修の設計書、部署ごとの今期のスローガンと行動の約束、振り返りの手順を納品します。
詳しくはプロジェクト発注のページにまとめました。会社のMVVをまとめ、定例の会議で1人ずつ話す形を試してみて、全社で研修を開くときの設計や進行で手が足りないと感じたときは、よかったらご相談ください。
参考資料
- 自社の記事: 間違ってはいけない戦略の順番、マネジメントとは、今のリソースでやりくりすること、リソース調達力を上げること、「先進企業に学ぶ」シリーズの中川政七商店
- 中小企業庁 2022年版中小企業白書 第2部第2章第3節 中小企業経営者の経営力を高める取組(東京商工リサーチ「中小企業の経営理念・経営戦略に関するアンケート」、2021年11月から12月、回収5,318社)
- 英治出版 デヴィッド・ボーム『ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ』(2007年)
- 厚生労働省 令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します(2026年7月31日)
- 厚生労働省 人材開発支援助成金、令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年8月3日版)
- 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト
まとめ:MVVはそのままに、どの言葉に共感するかを一人ずつ話し、部署で今期のスローガンと行動の約束を決める
会社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を定めていて、従業員も内容を理解しているのに、日々の行動には結びついていない会社があります。
そのため、言葉を作り直す前に、全員が自分のビジョンシートに書いたことを話し、会社のMVVのどの言葉に共感しているかを互いに知る場を作ります。そのうえで、共感が集まった言葉をもとに部署ごとの今期(1年)のスローガンを作り、担当と期日のある行動の約束を決めます。
最初の一歩は、会社のMVVと今期の目標を1枚にまとめ、定例の会議で1人ずつビジョンシートに書いたことを話すことです。ここまでは費用をかけずに自社で進められます。
参加者を評価する立場にない人が社内で進行役を務められないときや、部署が多く全社で1日に開きたいときは、外部に頼んだほうが早く進みます。頼むときは、頼む範囲を当日の進行だけにせず、研修の後の振り返りの手順までを納品物に入れます。受け取った納品物は、スローガンに担当と期日のある行動が付いているかで確かめます。
「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。

執筆者 : 佐久間 一己 (さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカルグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャーを経て、福井県小浜市で道の駅・古民家ホテルの集客支援と行政の産業6次化に4年携わり、その後ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ執行役員、フィンテック事業責任者を務め、2025年に地方企業向けのマーケティング代理店を設立。BtoB事業でWEBメディアを立ち上げオーガニック流入を3か月で20倍に伸ばすなど、知名度や予算が限られる時期に効くマーケティングと採用の手法を、地方企業の規模に合わせて伴走します。


