ローカルグローススタジオは、『地方企業にスタートアップのような成長を』というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
新規の商談が紹介と既存のお客様からの追加注文に限られ、自社から営業する相手が決まらないことがあります。問い合わせフォームを使った営業の連絡やDMを数百件送っても返信がなく、営業リストの上から順に電話をしても、どんな会社ならアポイントになるのかが分からない会社もあります。
大同生命保険の中小企業経営者アンケート(2026年4月、全国の企業経営者5,268社)では、新規顧客・販路の開拓に「取り組んでいる」企業は51%(この設問の回答は5,036社)でした。
新規顧客の獲得につながった方法は、「既存顧客、取引先からの紹介」が58%で最も多くなっています。開拓に取り組んでいる企業の37%は、課題に「市場・顧客ニーズなどの情報収集・調査分析ノウハウの習得」を挙げています(出所:大同生命サーベイ(2026年4月度調査))。
紹介以外で新しい顧客をどこで探せばいいか分からないときは、すでに受注している会社を業種、規模、受注の決め手で分け、どんな会社なら受注しやすいかを確かめるところから始めます。受注しやすい会社の条件が決まれば、同じ条件でまだ取引のない会社が、次の営業候補先になります。
この記事は、「顧客分析・ターゲット設定」について、2種類の読者に向けて書きました。顧客分析・ターゲット設定は、過去の受注先を分類し、傾向の似た会社をターゲット群としてまとめ、ターゲット群ごとの提供価値と必要なコンテンツを書き出す支援です。
1つは、受注先を分析すると何が決まるのか、まだイメージを持てていない方です。もう1つは、イメージはあるものの、自社で進められるのか、外部の専門家に頼むべきか迷っている方です。
前半は、まだイメージを持てていない方に向けて、私たち(ローカルグローススタジオを運営するつなぐスタジオ)が行った受注先の分析と、分析で決まること、費用をかけずに始める順番を書きました。
後半は、外部に頼むか迷っている方に向けて、自社で進める範囲と外部に頼む範囲の境目、外部への頼み方とデータの渡し方、費用、納品物の確かめ方を書きました。
この記事で分かること
まだイメージがない方向け
- 製造卸の会社の法人顧客を分類し、受注しやすい属性を一覧にした、私たちの支援事例の紹介
- 受注先を業種や受注の決め手で分けると、受注しやすい会社の条件が分かる
- 分析の目的は、受注しやすい営業候補先の条件と、その会社に伝える内容を決めること
- 直近1年の受注先を売上の順に並べた表と、売上の大きい3社への聞き取りから始める
イメージはあるが次の一手に迷う方向け
- 受注している会社を並べた表と、お客様への聞き取りまでは自社ででき、似た会社のまとめ方は専門家に頼むと早い
- 受注している会社の表を自社で作れるなら助言を、分け方を決めきれないなら分類までを頼む
- 受注している会社の表は、担当者の氏名や連絡先を外してから渡す
- 自分で進めるなら、ExcelやGoogleスプレッドシートだけで始められる
- 目標は、似た会社のまとまりごとの受注率と商談の数を、分析の前と比べて決める
- 納品物は、分類の軸に受注の決め手が入っているかと、営業リストの条件に置き換えられるかで確かめる
1. 受注先を業種や受注の決め手で分けると、受注しやすい会社の条件が分かる
製造卸の支援先では、法人顧客を分類し、受注しやすい属性を一覧にした
支援先の1社は、法人と取引している製造卸です。私たちはこの会社の法人顧客を分類し、受注しやすい属性を一覧にして納めました。受注しやすい属性が分かると、まだ取引のない会社の中から、同じ属性を持つ会社を次の営業候補先として選べます。
受注先を売上の大きい順に並べ、業種ごとの受注率と選ばれた理由を見ると、受注しやすい会社の条件が分かる
便益整理の始め方|受注データから顧客を分類する3ステップでは、受注企業の情報を1つの表(この記事では受注先の表と呼びます)に並べたあと、並べ替えや集計をしてパターンを見つける方法を書きました。記事で挙げた並べ方と整理のしかた、それぞれで分かることは次のとおりです。
| 分かること | 並べ方と整理のしかた | 記事で挙げた例 |
|---|---|---|
| 売上を支えている会社の共通点 | 売上の大きい順に並べ、累積で売上全体の80%に達するまでの会社の業種、従業員数、担当者の役職、抱えていた課題を見ます | 受注企業20社、年間売上5,000万円のうち、上位5社で4,000万円に達した場合は、この5社の共通点を見ます |
| 受注しやすい業種 | 商談した会社と受注した会社を業種ごとに数え、全体の受注率と比べます | 商談100社のうち受注20社で全体の受注率が20%のとき、製造業の受注率が33%、サービス業が4%なら、製造業が受注しやすい業種だと分かります |
| 受注しにくい業種と、その理由 | 受注率の低い業種で、なぜ負けたのかの仮説を立てます | 予算が限られている、必要な機能がない、同じ業種の事例が少ない、などの仮説です |
| 選ばれた理由 | 競合と比べられたときに、なぜ自社が選ばれたのかを整理します | 同じ業種での実績、地方でも訪問できる対応力、低価格で始められること、などです |
同じ記事では、サービスを始めて間もなく受注企業が少ない場合(例えば20社以下)は、受注企業だけでは分析の精度が低くなるため、提案まで進んだ会社、見積もりを出した会社、競合に負けた会社も受注先の表に含めると書きました。受注できなかった会社も入れると、どんな会社が興味を持ちやすく、どんな会社からは受注しにくいのかが見えてきます。
2. 何を目的にするか
目的は、受注しやすい営業候補先の条件と、その会社に伝える内容を決めること
受注先の分析で決めるのは2つです。1つは、まだ取引のない会社の中から次に営業する会社を選ぶための条件です。もう1つは、その会社に、どんな課題に対して何を伝えるかです。
便益整理の始め方の記事では、受注率の高いターゲット群が分かったら、まだ受注や商談に至っていない会社を、業種、従業員数、地域などの条件で選び、営業リストを作ると書きました。
例に挙げたのは、製造業で従業員30〜100名、関東・中部地方にあり、まだ商談していないか、失注から半年以上たっている会社です。
伝える内容は、ターゲット群ごとに変えます。同じ記事では、相手が抱えている課題、その課題の解決の仕方、同じターゲット群の会社の事例の3つを、ターゲット群ごとに変えて提案やメールの文面を作ると書きました。
紹介で受注した会社も受注先の表に入れると、紹介を待たずに同じ条件の会社へ自社から営業できる
紹介で受注した会社についても、業種、規模、受注の決め手を受注先の表に書き込むと、紹介で来た会社に共通する条件が分かります。その条件の会社には、紹介を待たずに自社から営業できます。
3. どこから始めるか
まず、直近1年の受注先を売上の大きい順に表に並べ、業種、規模、受注の決め手を書き込む
ターゲットと便益を5-10パターンに整理するでは、どんな属性の顧客に、どんな提供価値を、他社と比べてどんな独自性で届けるかを整理することを、便益整理と呼んでいます。
同じ記事では、地方企業で便益整理を始めるときの最初の作業として、直近1年の売上上位20社で受注先の表を作ることを挙げました。受注先の表は、ExcelやGoogleスプレッドシート1枚で、次の順に作れます。
1. 直近1年の受注先を、売上の大きい順に並べます
2. 業種、従業員数、その会社の年間の売上高、所在地を書きます
3. 窓口になった担当者の部署と役職、決裁権の有無を書きます
4. お客様が発注の前に抱えていた課題と、受注の決め手を、商談のメモや営業担当者の記憶から書きます
5. 提案まで進んだものの受注できなかった会社も、別の行に加え、負けた理由を書きます
受注の記録や商談のメモをChatGPTやClaudeなどのAIに読ませて、受注先の表の形に整理させることもできます。お客様の社名や担当者の名前、連絡先が入った記録を読ませる時は、AIに入力してよい情報の決まりを先に社内で決めておきます。
次に、売上の大きい会社から3社を選び、自社を選んだ理由を直接聞く
受注の決め手は、社内の記録だけでは分からないことがあります。ターゲットと便益の記事では、売上の大きな顧客から3社程度を選び、「なぜ自社のサービスを選んでくれているのか」を聞くことを、便益整理の最初の一歩として書きました。
同じ記事では、業種や規模だけでなく、利用の動機に注目して分けると書いています。同じ製造業でも、品質を重視する会社と、納期の正確さを重視する会社では、求める価値が違うためです。
受注しやすい会社の条件が決まったら、業種、規模、地域で、同じ条件の会社が何社あるかを数える
受注の決め手は統計では数えられないので、条件に合う会社の数は、業種、規模、地域の条件で数えます。数えるときは、総務省と経済産業省の経済センサス‐活動調査を使えます。企業と事業所の数を、業種別、規模別、都道府県や市区町村などの地域別に公表している統計です。
条件に合う会社の数が少なければ、隣の地域まで広げるか、条件を1つゆるめるかを、営業リストを作る前に決められます。
4. どこまで自社でやり、どこから外部に頼むか
受注先の表と聞き取りまでは自社ででき、ターゲット群への分け方は専門家に頼むと早い
受注先の表に直近1年の受注先を売上の大きい順に並べ、業種、規模、受注の決め手を書き込むところまでは、自社で進められます。受注できなかった会社も加えて業種ごとの受注率を出すことと、売上の大きい3社への聞き取りも、自社でできます。商談した会社と受注した会社の記録が残っていなければ、記録をつけるところから自社で始められます。
外部の専門家に頼むと早いのは、受注先の分け方とターゲット群のまとめ方を決めることと、ターゲット群ごとの提供価値を言葉にすることです。受注先が多いと分ける軸の候補が多くなり、社内では1つに決めきれないことがあります。
受注の決め手をお客様から聞き出せないときは、聞き取りを社外の人に任せることもできます。新しい業種や地域に売り先を広げたいときは、まだ取引のない会社へのアンケートやインタビューを調査会社などに頼みます。
例えば、新規の商談が紹介と追加注文に限られている場合は、紹介で受注した会社も含めて受注先の表を作れば、共通する条件を自社で探せます。DMや電話で連絡しても反応がない場合も、連絡した相手の条件を、受注先の表に書いた受注先の条件と比べるところまでは自社でできます。
提案資料を案件のたびに一から作っている場合は、ターゲット群の分け方が決まると、共通にできる部分が分かります。分け方を社内で決めきれないときは、そこを専門家に頼むと早く進みます。
社長の記憶か社内の記録で受注先の表を作れるなら社内で進め、分け方を決めきれなければ外に頼む
| 選択肢 | 向いている会社 | 進め方と注意点 |
|---|---|---|
| 自分で進める | 社長か営業の責任者が、受注先ごとの受注の経緯を覚えている会社です | 直近1年の受注先の表を作り、売上の大きい3社に選んだ理由を聞きます |
| 社内で担当者を決める | 営業担当者が複数いて、商談の記録を営業支援システム(SFA)やExcel、Googleスプレッドシートに残している会社です | 担当者が受注先の表を作る時間を、営業の仕事とは別に先に確保します。年に1回など、受注先の表を見直す時期も決めておきます |
| 外に頼む | 受注先が多く分け方を決めきれない会社、お客様への聞き取りを社外の人に任せたい会社です | 分類の結果だけを受け取ると、次に受注先を分類し直すときの手順が社内に残りません。分け方と見直しの手順も納品物に含めておくと、その後の見直しを社内で進められます |
5. 外部に頼むときの3つの頼み方
受注先の表を自社で作れるなら助言を、分け方を決めきれないなら分類までを頼む
受注先の分析を相談できる相手には、中小企業診断士などの専門家、マーケティングの支援会社、アンケートやインタビューを行う調査会社があります。頼み方は、大きく次の3つに分かれます。
| 頼み方 | 何を頼むか | 納品物 | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| 分析への助言 | 自社で作った受注先の表を見てもらい、分け方や見落としを指摘してもらいます | 助言の記録です。受注先の表と分類は自社で作ります | 受注先の表まで自社で作れる会社です |
| 受注先の分類とターゲット群の設定 | 受注先の表をもとに、分類、ターゲット群のまとめ、提供価値の整理までを一緒に進めます | 受注先の分類、受注しやすい属性の一覧、ターゲット群ごとの提供価値と必要なコンテンツの一覧です | 受注先の表はあるが分け方を決めきれない会社、営業リストや営業資料を作る前に条件を決めたい会社です |
| まだ取引のない会社への調査まで | 受注先の分析に加えて、まだ取引のない会社へのアンケートやインタビューを行います | 上の納品物に加えて、調査の設計と結果です | 新しい業種や地域に売り先を広げたい会社、受注先が少なく社内の記録だけでは分け方を決めにくい会社です |
私たちの顧客分析・ターゲット設定は、このうちの「受注先の分類とターゲット群の設定」に当たります。
受注先の表を渡すときは、分析に必要のない担当者の氏名や連絡先を外してから渡す
受注先の表には、取引先の担当者の氏名やメールアドレスのような個人データが入っていることがあります。
個人情報保護委員会のガイドラインでは、利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取扱いを委託し、それに伴って個人データを提供する場合は、提供先は第三者に当たらず、その個人データの本人(取引先の担当者)の同意は要らないとされています。
同じガイドラインは、委託する業務に必要のない個人データを提供しないことを、当然のこととしています。受注先の分析に使うのは、業種、規模、取引の金額、担当者の部署や役職、受注の決め手で、担当者の氏名や連絡先を使わずに進められます。
頼む前に、受注先の表と、商談や失注の記録をそろえておく
| 用意しておくもの | 中身 |
|---|---|
| 受注先の表 | 直近1年の受注先と、業種、規模、取引の金額です。担当者の氏名や連絡先は外しておきます |
| 商談と失注の記録 | 提案まで進んだ会社、見積もりを出した会社、負けた会社と、その理由です。記録がなければ、営業担当者の記憶で分かる範囲を書きます |
| 聞き取りを頼む受注先 | 自社を選んだ理由を聞かせてもらえそうな受注先を、売上の大きい会社から3社ほど選びます |
| 社内の担当者と、最終判断をする人 | 受注先の表を用意する担当者と、どのターゲット群から営業するかを最終的に判断する人です |
受注先の分析を個人の専門家に頼むときは、フリーランス法の取引条件を書面かメールで示す
個人の専門家に頼む場合は、2024年11月に施行されたフリーランス法が関わります。発注する側は、仕事の内容や報酬の額など9つの取引条件を、書面かメールなどで示す必要があります。
6. 費用
自分でやるなら、ExcelやGoogleスプレッドシートだけで始められる
受注先の表を作って並べ替えるのに必要なのは、ExcelやGoogleスプレッドシートだけです。
私たちは、顧客分析・ターゲット設定を、1か月単位のプロジェクト発注でお受けしている
私たちは、マーケティング支援の月額4万円を基本とし、必要な施策と制作物の分だけご発注いただく形で受けています。
必要な施策だけ取り組みたい、ウェブサイトやダッシュボードを制作したい、といったニーズに合わせて、単発のプロジェクト発注を1か月単位から受けています(1か月単月15万円から)。
顧客分析・ターゲット設定も、この単発のプロジェクト発注で、受注先の分類からターゲット群ごとの提供価値と必要なコンテンツの一覧まで、私たちが進行を管理しながら一緒に進めます。
7. 目標にする数字と、納品物の確認のしかた
目標は、ターゲット群ごとの受注率と商談の数を、分析の前の自社の数字と比べて決める
受注率や商談の数は、商材や受注までの流れによって変わります。そのため目標は、分析の前の自社の数字を出しておき、それと比べて決めます。
| 目標 | 測り方 | 見方 |
|---|---|---|
| ターゲット群ごとの受注率 | 商談した会社と受注した会社を、ターゲット群ごとに数えます | ターゲット群ごとの受注率が全体の受注率より高いかを見て、高いターゲット群から営業します |
| 連絡した会社からの商談の数 | 受注しやすい条件で選んだ会社に連絡した数と、そこから生まれた商談の数を、月ごとに記録します | 分析の前の月と比べます。商談が増えなければ、営業先を選んだ条件と、伝えた内容のどちらに原因があるかを確かめます |
| 新しいお客様の数と、ターゲット群ごとの売上 | 受注した新しいお客様を、どのターゲット群に入るかと一緒に記録します | どのターゲット群が売上を支えているかを、年に1回、受注先の表を作り直して確かめます |
納品物は、分類の軸に受注の決め手が入っているかと、営業リストの条件に置き換えられるかで確かめる
| 確かめること | 見方 |
|---|---|
| 分類の軸に、受注の決め手が入っているか | 業種や規模だけで分けず、品質や納期のように、お客様が自社を選んだ理由でも分けているかを見ます |
| ターゲット群ごとに、受注の実績が数字で書かれているか | ターゲット群ごとの社数、売上、受注率が書かれているかを見ます |
| ターゲット群ごとに、誰に、何を、どんな独自性で届けるかが書かれているか | 誰に(どんな属性の会社に)、何を(どんな提供価値を)、他社と比べてどこが良いか、の3つが、ターゲット群ごとに埋まっているかを見ます |
| 営業リストの条件に置き換えられるか | 業種、従業員数、地域など、まだ取引のない会社を探すときに使える条件で書かれているかを見ます |
| 必要なコンテンツが決まっているか | ターゲット群ごとに、営業資料、記事、事例のどれを用意するかが書かれているかを見ます |
ローカルグローススタジオの観点
ターゲットと便益を5-10パターンに整理するでは、顧客起点マーケティングの第一人者である西口一希さんが提唱する、便益整理の考え方を紹介しました。
記事では、「このサービスは○○な人向け」というより、「このサービスは○○な人にはこんな価値があり、△△な人にはまた別の価値がある」ととらえると書きました。
同じ記事では、属性ごとに、Who(どんな属性の人に)、What(どんな提供価値を)、独自性(他社と比べてもより良い形で)の3つを整理すると書いています。
便益整理の始め方では、最初の分析でターゲット群を2〜5個まとめられれば十分だと書いています。私たちは受注先を3つから5つのターゲット群にまとめています。
受注先の分析のあとには、まとめたターゲット群に入る会社の営業リストと、ターゲット群ごとの営業資料が必要になります。
事例
3社は、いまの顧客や取引先を分けて見たり、出向いて確かめたりしてから、誰に何を届けるかを決めた
いまの顧客や取引先を分けて見たり、相手のところへ出向いて確かめたりして、誰に何を届けるかを決めた地方の会社を、私たちのマガジン「先進企業に学ぶ」の記事から3社並べます。
| 会社 | 決める前に確かめたこと | 何を決めたか |
|---|---|---|
| ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町) | 顧客を熱狂度のレベルで分け、上位10%の顧客の売上が全体の60%以上を占めることを把握していました | ファンが集まるイベントを、イベント単体では赤字でも続けています。赤字を許容する根拠の1つとして、同社は上位10%の顧客が売上を支えていることを挙げています |
| 黒龍酒造(福井県永平寺町) | 8代目の水野直人氏が全国の得意先を一度回り、生酒や吟醸酒が常温の棚に置かれていることを確かめました | 冷蔵管理を求めても理解されなかった得意先との取引を終え、生産量を半分以下(1,000石程度から500石以下)に落として、特約店に限った流通にしました |
| いろどり(徳島県上勝町。料理に添える葉や花を「つまもの」として料亭へ出荷) | 横石知二氏(当時は農協の営農指導員、のちにいろどりを設立)は、返品が続いた理由を、料亭のカウンターで女将や料理長に聞いて回りました | 10月のどの週に欲しいのか、南天の葉はどの大きさが良いのかといった情報を生産者に伝え、葉を発注に合わせて育てる商品に変えました |
3社に共通しているのは、いまの顧客や取引先を分けて数えるか、相手のところへ出向いて確かめるかして、その結果で誰に何を届けるかを決めていることです。この記事で書いた、受注先の表を作ることと受注先への聞き取りも、同じ確かめ方を自社の受注先で行う方法です。
自社で進められることと、相談したほうが早いこと
受注先の表を作ることと、受注先への聞き取りは、専門家に費用を払わずに自社で進められます。
- 直近1年の受注先を売上の大きい順に並べ、業種、規模、受注の決め手を書き込みます
- 提案まで進んだものの受注できなかった会社も加え、業種ごとの受注率を出します
- 売上の大きい3社に、自社を選んだ理由を聞きます
ここまでを自社でやれば、外部に頼む範囲を、分け方とターゲット群のまとめ方を決めること、ターゲット群ごとの提供価値を言葉にすること、営業リストの条件と必要なコンテンツを決めることに絞れます。頼む範囲が狭くなる分、見積もりの金額も下がります。
一方で、外部に頼むほうが早く進むのは、次のような状況です。
- 受注先が多く、どの軸で分ければいいかを社内で決めきれないときです
- 新しい業種や地域に売り先を広げたいが、受注先の記録だけでは条件を決められないときです
私たちは顧客分析・ターゲット設定を、単発のプロジェクト発注(1か月単位から、1か月単月15万円から)でお受けし、受注先の分類、受注しやすい属性の一覧、ターゲット群ごとの提供価値と必要なコンテンツの一覧を納品します。受注先の分析のあとに必要になる営業リストと営業資料の作成も、別のメニューとしてお受けしています。
詳しくはプロジェクト発注のページにまとめました。受注先の表を作ってみて、分け方やターゲット群のまとめ方を社内で決めきれないときは、よかったらご相談ください。
参考資料
- 自社の記事: 便益整理の始め方、ターゲットと便益を5-10パターンに整理する、先進企業に学ぶの売上の悩みを、15社はどう解決したか、ヤッホーブルーイング、黒龍酒造、いろどり
- 大同生命保険 中小企業経営者アンケート「大同生命サーベイ」2026年4月度調査レポート(2026年5月26日。調査期間2026年4月1日から28日、全国の企業経営者5,268社、うち約5割が同社の契約企業)
- 個人情報保護委員会 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(令和8年6月14日施行版)
- 総務省統計局 令和3年経済センサス‐活動調査
- 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト
まとめ:新しい顧客を探す前に、受注先を業種、規模、受注の決め手で分け、受注しやすい営業候補先の条件を決める
新しい顧客をどこで探せばいいか分からないときは、すでに受注している会社を業種、規模、受注の決め手で分け、受注しやすい会社の条件を決めるところから始めます。条件が決まると、同じ条件でまだ取引のない会社が、次の営業候補先になります。
最初の一歩は、受注先の表に直近1年の受注先を売上の大きい順に並べ、売上の大きい3社に自社を選んだ理由を聞くことです。紹介で受注した会社も受注先の表に入れると、紹介を待たずに、似た条件の会社へ自社から営業できます。ここまでは費用をかけずに自社で進められます。
受注先の分け方を社内で決めきれないときや、受注の決め手を聞き出せないときは、外部に頼んだほうが早く進みます。受注先の表を渡すときは、分析に必要のない担当者の氏名や連絡先を外しておきます。
納品物は、分類の軸に受注の決め手が入っているか、ターゲット群ごとに受注の実績と提供価値が書かれているか、営業リストの条件に置き換えられるかで確かめます。目標は、ターゲット群ごとの受注率と商談の数を、分析の前の自社の数字と比べて決めます。
「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。

執筆者 : 佐久間 一己 (さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカルグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャーを経て、福井県小浜市で道の駅・古民家ホテルの集客支援と行政の産業6次化に4年携わり、その後ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ執行役員、フィンテック事業責任者を務め、2025年に地方企業向けのマーケティング代理店を設立。BtoB事業でWEBメディアを立ち上げオーガニック流入を3か月で20倍に伸ばすなど、知名度や予算が限られる時期に効くマーケティングと採用の手法を、地方企業の規模に合わせて伴走します。


