ローカルグローススタジオは、『地方企業にスタートアップのような成長を』というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
この記事は、「AIの活用」について、2種類の読者に向けて書きました。1つは、AIで何ができるのか、まだイメージを持てていない方です。もう1つは、イメージはあるものの、自社でできるのか、外部の専門家に頼むべきか迷っている方です。
1章から3章を前者向けに、4章から7章を後者向けに書きました。私たち(ローカルグローススタジオを運営するつなぐスタジオ)が実際に動かしているものから始めます。
題名の「SaaS費用ゼロ」は、業務ごとの専用SaaS(月額で使うクラウドのソフト)を使っていないという意味です。ダッシュボードのためのBIツール(経営データを図にするツール)、営業管理のためのSFA(営業支援ツール)、レポートのための集計ツールが、その例です。
費用としてかかっているのは、生成AIの月額利用料と、ドメインやサーバーのような実費に限られます。
この記事で分かること
2026年版中小企業白書では、AIを業務で活用していない理由の最多が「活用する業務がイメージできていない」でした。何に使えるかが見えないと、検討は始まりません。
まだイメージがない方向け(1章から3章)
- 私たちがAIで実際に作ったもの(売上ダッシュボード、週次レポート、1万ページ超のサイトなど)
- 中小企業に多い業務で、AIに何を頼めるかと、実際の質問の例
- 目的の決め方と、今日から始める順番
イメージはあるが次の一手に迷う方向け(4章から7章)
- 自社でできることと、外部の専門家が要ることの見分け方
- 外部に頼むなら何を頼むか(研修、実装の代行、Claude Codeの設定支援)
- 自分でやるときのツール代、頼むときの相場、2026年度の補助金
- 目標にする数字と、納品物の確認のしかた
1. 私たちがAIで実際に作ったもの
ChatGPTやClaudeと、Claude Codeの違い
AIは、最初に2種類に分けて考えると分かりやすくなります。1つは、ChatGPT、Claude、Geminiのように、ブラウザで質問して答えをもらうAIです。
もう1つは、Claude Code、Codex、Gemini CLIのように、自分のパソコンの中で動き、フォルダのファイルを読み、集計し、ページを作り、決まった時刻に作業を実行するAIです。
後者は、黒い画面(ターミナル)で動かすため難しそうに見えますが、指示は日本語の文章で足ります。2種類の違いは、【前編】Claude Codeとは?聞いて答えるAIから、実行してくれるAIへの進化。15の使い方実例(以下、前編)に詳しく書きました。
Claude Codeで作ったもの
次の表は、前編に書いた15の使い方のうち、地方企業の業務にそのまま当てはまる8つです。どれも、業務ごとの専用SaaSは契約していません。
| 作ったもの | 何をしたか | 何が変わったか |
|---|---|---|
| 週次のマーケティングレポート(自社) | Search Console(検索の表示回数)、GA4(サイトの訪問)、Google広告、YouTubeのデータを自動で集計し、毎週土曜の朝に社内チャットへ先週の流入と問い合わせの状況を届けます | 4つの管理画面を見て回る作業がなくなり、週1回の確認で、どの記事から問い合わせが来ているかが分かります |
| 売上ダッシュボード(支援先に代わって作成) | ExcelやGoogleスプレッドシートに分かれていた受注、営業、顧客のデータを読み込み、顧客の区分別、指標別に集計した画面を作りました。設計書と、AIへの指示書も納めました | 月初の集計の手作業がなくなり、先方が自分たちの環境で画面を作り直せます |
| 問い合わせフォームの仕分け(自社) | フォームに届く問い合わせと営業の売り込みを全件読み、本命の見込み客、様子見、対応不要の3つに分け、返信の下書きを社内チャットに置きました | 売り込みに紛れた本命の問い合わせを見落とさず、返信の着手が速くなりました |
| 営業リストと文面の生成(自社) | 新しいエリアのベンチャーキャピタル45社とスタートアップ50社を調べてリストにし、相手に合わせた挨拶文のたたき台を作りました | 半日で、95社分のリストと文面がレビューできる状態になりました |
| 求人原稿の自動掲載(自社の人材紹介事業) | 企業からもらった求人票のPDFを読み取り、職種、勤務地、年収、必要スキルを整理して、WordPressの求人ページを自動で作ります | PDFを開いて管理画面に1項目ずつ入力する作業がなくなりました |
| 評価制度のたたき台(支援先の地方の製造業) | 過去のヒアリング記録と事業資料を読み込ませ、その会社の文化に合った等級表と評価制度のたたき台を作りました | その会社の実態から、制度の議論を始められました |
| 長期プロジェクトの資料の棚卸し(自社) | フォルダの資料を全部読み、現状の体制、KPI(目標にしている数字)、残りの作業を1枚にまとめます | 中断していたプロジェクトを、数十のファイルを読み直さずに再開できます |
| 1万ページ超のデータメディア(自社、2026年10月サービス終了) | 公開データを集めて表の形に整え、27日でサイトを立ち上げ、月次で全件を更新しました | 1ページずつ書く制作を、データから自動で作る形に置き換えました |
サイトの実装、ダッシュボード、評価制度のたたき台のように、以前なら外部に発注していた仕事も含まれます。私たちはClaude Codeを1人で運用し、月数千円から数万円の費用で動かしています。
1万ページ超のメディアで起きた失敗と対策は、【後編】Claude Codeで1万ページ超えのメディアを27日で作成した実践解説。落とし穴と解決策を紹介(以下、後編)に書きました。
ChatGPTやClaudeで、毎日使っているもの
Claude Codeを使う前に、ChatGPTやClaudeのブラウザ版だけでできることがあります。私たちが日々使っている場面を1人起業や地方企業でも使えるAI活用の具体事例7選に書きました。そこから、実際の質問の例と一緒に引用します。
| 場面 | 実際の使い方 | 補足 |
|---|---|---|
| 法律や経理のルールの確認 | 「飲食店を開業するのに必要な許認可を教えてください。福岡県で開業予定です」「取引先との打ち合わせで使ったカフェ代3,000円は、どの勘定科目で処理すればよいですか」と聞きます | 基礎を先に押さえてから専門家に聞くと、相談の時間が短く済みます。最終判断は税理士や弁護士に確認します |
| ツールの選定と、サイトの実装 | 「建設業向けのマーケティングサイトを作りたいです。WordPressの無料テーマでおすすめはありますか」「このコードを実装したら、スマホ表示が崩れました。レスポンシブ対応に修正してください」と頼みます | WordPressと無料テーマで作った私たちのサイト2つは、本来は制作会社に頼む種類のものですが、費用はドメインとサーバー代だけで、1サイトあたり年1万円前後でした |
| 技術系の細かな質問 | 「WordPressのCocoonテーマで、GA4のタグを埋め込む方法を教えてください」と聞きます | 使っているツール名、エラー文の全文、実現したい動作を添えると、そのまま使える答えが返ります |
| 採用候補者とチームの相性 | 代表、チーム、候補者の性格診断の結果を入れたうえで「この人を採用した場合、チームとしてどのような相乗効果が期待できますか。また、注意点があれば教えてください」と聞きます | 性格診断の結果は参考情報の1つとして使います |
| 文章の推敲 | 「専門用語に注釈を加える」「長い文章を短く分割する」「具体例を追加すべき箇所を指摘する」と頼みます | まず自分で書いてから頼みます。丸投げはしません |
| テーマ別の情報の蓄積 | 会話をテーマ別にまとめる「プロジェクト」の機能で、経理・法務、マーケティングのように3つから5つ程度に分け、自社の情報を最初に登録します | 新しいチャットでも文脈を引き継げます |
| 複数の記事や動画の要約 | Googleの資料読み込みツールNotebookLMに記事や動画を10個ほど登録し「地方企業がM&Aで成長するために、最も重要なポイントを3つにまとめてください」と聞きます | リサーチの時間が短くなります |
中小企業の業務別に、頼めること
上の実例を、中小企業に多い業務に当てはめると次のようになります。表の真ん中の列はChatGPTやClaudeで今日からできること、右の列はClaude Codeかデータの連携が要ることです。
| 業務 | ChatGPTやClaudeに頼めること | Claude Codeで作れるもの |
|---|---|---|
| 見積と請求 | 見積書の文面の下書き、過去の見積書を貼って条件の違いを整理 | 見積書のPDFを読み取った一覧、過去に納めた品目の検索 |
| 顧客管理と営業 | 営業メールの下書き、商談メモの要点整理、提案書の構成案 | 問い合わせの自動仕分け、営業リストの作成、HubSpotなど顧客管理システム(CRM)の棚卸し |
| 採用 | 求人票の下書き、面接の質問案、候補者とチームの相性の整理 | 求人票のPDFから作る採用ページ、応募から面接、内定までの通過率の集計 |
| 販促とWeb | 記事の推敲、SNS投稿の案出し、競合サイトの要約 | サイトの構築、週次の流入レポート、1万ページ超のメディア |
| 経営の数字 | 月次の数字を貼って「前月と何が違うか」の説明 | 売上ダッシュボード、受注・在庫・顧客データの横断集計 |
| 経理と法務 | 仕訳の科目の確認、契約書の条文の意味、補助金の要件の整理 | 請求書や注文書の読み取りと基幹システムへの連携 |
| 社内の情報整理 | 議事録の要約、マニュアルの下書き | フォルダ横断の社内ナレッジ検索、引き継ぎ資料の再構成 |
右の列は、自社のデータをAIに読ませる作業が入るため、4章で扱う「自社でできるか、外部に頼むか」の判断が出てきます。
2. 何を目的にするか
目的は、どの作業の時間を空けるかで決める
前編で整理したとおり、Claude Codeが得意なのは、ダッシュボードの構築、データのリサーチ、サイトの設計と実装、定型レポートの自動化、長文の整理や社内資料の検索です。
SNS投稿の言葉選びやブランドの世界観づくりのような感性の部分は、人が判断する前提で使います。画像生成は、Claude Codeではなく画像専用のツールに任せたほうが品質が高くなります。
得意な仕事から始めるなら、目的は「どの作業の時間を空けるか」です。集計、下書き、調べもの、転記のように毎回ゼロからやっていた作業が短くなり、空いた時間で別の仕事ができます。私たちの週次レポートと問い合わせの仕分けが、この例です。
AIを使うと、時間が空くほかに次の2つが起きます。1つは、経理の担当がいなくても仕訳を確かめられ、マーケティングの担当がいなくても記事を推敲できるようになり、少人数で専門の領域をまたげることです。
もう1つは、サイト、ダッシュボード、求人ページのように、外注していた制作を自社で作れるようになることです。
初年度の目的を「売上を上げる」にすると、成果が売上の変化として表れにくくなります。情報処理推進機構(IPA)の2025年度の調査(回収1,799社)でも、AIを導入して効果があったと答えた企業(853社)が挙げた効果は「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%で、「売上や利益が向上した」は3.9%でした。
空いた時間で何をするかまで決めておくと、変化を実感しやすくなります。
分担は、人が決め、AIが形にし、人が仕上がりを判断する
AIと人の分担を、前編では「0→1」「1→9」「9→10」の3段階で整理しました。何を作るか、誰のために作るかを決める「0→1」は人が担います。
「いい感じのメディアを作って」と頼むだけではうまくいきません。最初の基準を人が立てて渡すと、その先はAIが進められます。
決まったことを大量に形にする「1→9」はAIが速く、できあがった制作物のクオリティと精度を判断する「9→10」は再び人の役割です。
時間を空ける作業を選ぶときは、「AIに何をさせるか」より先に「自分がどの判断を担うか」を考えます。
3. どこから始めるか
始め方は、習慣的に作る資料と、毎回発生する入力や読み込みから
AIに何ができるかを確かめるには、自社の業務で実際にやらせてみるのが一番早い方法です。
ChatGPTやClaudeの有料版は月3,000円前後で、無料版より長い資料を読み込めるので、最初から有料版で始めます。Claudeを選ぶなら、同じ料金でClaude Codeも使えます。私たちが勧める始め方は、次の3段階です。
1. 習慣的に作る資料と、毎回発生する入力や読み込みから始める: 経営者か担当者がClaudeかChatGPTの有料版を契約し、議事録や週報のような資料を作らせ、請求書の転記や資料の読み込みのように毎回発生する入力や読み込みをやらせてみます
2. 試す幅を広げ、時間短縮や手間の削減につながったものをまとめる: そのなかで何ができるかを試す幅を広げていき、時間短縮につながったものや、手間を減らせたものをまとめていきます
3. 担当者ごとのナレッジを社内の集合知にする: それぞれの担当者の活用ナレッジや事例を定期的に社内の集合知として共有し、全体の活用を高める情報交換を行います。プロンプト(AIへの指示文)や、Claude Codeへの指示書のファイル(CLAUDE.md)を共有し、他の従業員でも再現できる状態を目指します
1人で試している間は、顧客名と個人情報を入力しないことを暫定のルールにします。
Claude Codeは、インストールと「見てよい資料」のフォルダから始める
Claude Codeは、前編に書いた2つの手順が出発点です。1つ目はインストールで、ターミナルで1行のコマンドを実行し、アカウントでログインするまで30分程度で終わります。
2つ目が実際の始まりで、新しいフォルダに初期資料を入れ、AIには「この中だけ見てよい」と伝えます。
製造業なら会社概要、主要製品の仕様書、過去3年の売上推移、主要顧客の業界一覧、求人票、設備一覧が候補です。小売業なら店舗一覧、商品カテゴリ別の売上推移、POSデータのサマリ、顧客アンケートが候補です。
完璧な構成を作ろうとせず、手元の資料をいくつか入れて「この情報を元に、○○について整理して」と頼むところから始めます。慣れてきたら、Gmail、スプレッドシート、Slackをつなぐのが次の段階です。
ターミナルが難しそうなら、Claudeの提供元であるAnthropicのCoworkという入口もあります。黒い画面を使わずに、普段のツールをつないでAIに作業を頼めます。
私(代表の佐久間)も、まずCoworkでデータの接続を試して慣れてから、Claude Codeに移りました。
4. 自社でできるか、外部の専門家が要るか
AI活用が止まる理由は4つに分かれる
ChatGPTやClaudeに日々の資料を作らせ始め、Claude Codeを触り始めた会社は、次に「ここから先を自社で進められるのか」で迷います。止まる理由は4つに分かれます。
1つ目は、入力のルールがなく、社員が個人の判断で無料のAIに顧客情報を貼っているため、会社として使い方を広げられない場合です。
これは自社で解決できます。日本ディープラーニング協会の生成AI利用ガイドラインのひな形を自社向けに書き換えれば初版ができます。そのルールを決めるのは経営者か役員です。
2つ目は、AIの答えをそのまま使ってよいか判断できる人がいない場合です。これも自社で解決できますが、確認の手順を決めるまでは使う業務を広げないようにし、専門家への確認を手順に組み込みます。
3つ目は、売上はExcel、顧客はメール、受注は基幹システムにあり、AIに読ませる前に集める作業が要る場合です。「見てよい資料」のフォルダに集めるまでは自社でできますが、基幹システムやCRMとつなぐ段階は外部の手が要ることが多くなります。
4つ目は、試す人はいるが、手順書とルールまで作る時間が取れず、最初の業務から次の業務へ広げられない場合です。手順書とプロンプト集の作成は、自社の運用を見ながら書く作業で、まとまった時間が要ります。
1つ目と2つ目は自社で決めることで、3つ目と4つ目が外部に頼む分かれ目になります。
自分で進める、社内で育てる、外に頼む
| 進め方 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分で進める | ChatGPTやClaudeを日々の業務に使っている段階か、Claude Codeに「見てよい資料」のフォルダを読ませ始めた段階です | 月数千円で始められます。会社のルールがないまま個人の判断で広がりやすいので、入力ルールだけは先に決めます |
| 社内で担当者を育てる | 使う業務が複数あり、続ける前提があり、担当者の時間を週に数時間確保できる会社です | 専任を置ける会社は少ないので、兼任で進めるなら、本人の通常業務との配分を先に決めます |
| 外に頼む | 手順書とルールまで一度に整えたい、ダッシュボードや自動化を作りたい、基幹システムやCRMとつなぎたい会社です | 頼む範囲を決めないまま任せると、ツールの契約だけが続いて使われないことが多くなります。次の章の3つの頼み方で範囲を決めます |
中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査(2025年11月から12月に実施、この設問の回答1,568社)では、AI・IT導入の専任担当者がいる企業は3.0%でした。社内で育てる場合も、専任ではなく兼任から始まります。
5. 外部に頼むときの3つの頼み方
研修、実装の代行、Claude Codeの設定支援
私たちが受けている形は3つで、どれも納品物が先に決まっています。
| 頼み方 | 何を頼むか | 納品物 | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| 研修 | 業務の棚卸しから、自社の業務別の使い方を決め、社内に広げます | その会社の業務別AI活用手順書、プロンプト集、社内利用ルール | ChatGPTやClaudeを個人で使い始め、会社として揃えたい段階の会社です |
| 実装の代行 | ダッシュボード、週次レポート、自動掲載のような仕組みを作ります | 動く仕組みと、設計書、更新の手順書 | 経営の数字を毎週見たい、転記や集計をなくしたい会社です |
| Claude Codeの設定支援 | Claude Codeの初期設定を一緒に行います | Claude Codeへの指示書(CLAUDE.mdというファイル)、フォルダ構成、最初の自動化、出力を確認する仕組み | Claude Codeを自社で運用したいものの、最初の設計に自信がない会社です |
研修の進め方は、業務を棚卸しして「AIに任せられる作業」と「人が判断する作業」を分け、手順書とプロンプトを作り、担当の方と実際の業務で2回使って直し、社内ルールと更新のしかたを残す、という順です。
頼む前に自社で決めておく4つ
発注前に決めておくのは次の4つです。経済産業省の「AI導入ガイドブック」(需要予測編、2021年)と「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月)の項目に、私たちが「社内の担当者」を加えました。
| 決めておくもの | 中身 |
|---|---|
| 対象業務 | 「営業の効率化」ではなく「見積書の下書き作成」「毎週の流入レポート」のように、作業の単位で決めます |
| 現状の時間 | その作業に、誰が、月に何時間かけているかです。試しに使ったときに記録した、時間短縮につながった作業の一覧がここで使えます |
| 使うデータ | AIに読ませる文書とデータは何か、顧客情報や個人情報が含まれるかです。入力したデータが発注先の使うAIの学習に使われないかを、契約前に聞きます |
| 社内の担当者 | 試す人と、ルールを決める人(経営者か役員)です |
4つを決めてから、発注先に見積もりを頼みます。契約は、月額で一緒に進める準委任(作業時間に対して払う契約)か、納品物を決める請負(完成した納品物に対して払う契約)かのどちらかになります。
AIは精度の保証が難しいため、請負でも「手順どおりに動く」「出力を確認する手順がある」「効果を測るために作業時間を記録できる」を完成の条件にするのが現実的です。
6. 費用
自分でやるときのツール代
各社の料金ページ(2026年10月11日時点)によると、主なAIの有料版は、ChatGPTのPlusが月3,000円、ClaudeのProが月20ドル(約3,000円、年払いなら月17ドル相当)、GeminiのGoogle AI Proが月2,900円です。
Claude CodeはClaudeのPro以上のプランに含まれ、CodexはChatGPTの無料版を含む各プランで使えます。
無料版でもChatGPTとClaudeはプロジェクトを作れます。NotebookLMは無料で使え、1つのノートブックに読み込める資料は50件が上限です。
この記事の1章から3章の範囲を自社でやる場合、費用は月に数千円(上位のプランを使うなら数万円)です。
頼むときの相場
研修や導入支援の料金として、各社が公開しているもの(2026年10月11日時点、税の表記は各社のまま)を並べます。
| 種類 | 会社 | 公開されている料金 |
|---|---|---|
| 公開講座の研修 | インソース | 「ChatGPTのはじめ方研修」半日24,400円、「業務効率化のためのChatGPT活用研修」48,800円(同じ名前の半日研修にワークを加えて時間を延ばした版)で、いずれも会員価格 |
| 公開講座の研修 | トレノケート | 「ChatGPTで学ぶ生成AIビジネス活用」1日33,000円(税込) |
| AI顧問(月額) | 日本AI導入支援協会 | 月5万円(チャットのみ)から30万円(税の表記なし) |
| AI顧問(月額) | CES UP | 月5万円から(税抜) |
| AI顧問(月額) | HiroshimAI | 月10万円から50万円(税別) |
| AI顧問(月額) | BoostX | 月11万円から(税込) |
| Claude Codeの導入支援 | Fyve | 月5万円、20万円、40万円の3段階(税別、6か月契約)と、スポット相談30分1万2,000円 |
私たちは、マーケティング支援の月額4万円を基本とし、必要な施策と制作物の分だけご発注いただく形で受けています。
必要な施策だけ取り組みたい、ウェブサイトやダッシュボードを制作したい、といったニーズに合わせて、単発のプロジェクト発注を1か月単位から受けています(1か月単月15万円から)。
研修、実装の代行、Claude Codeの設定支援のどれも、この単発のプロジェクト発注でお受けします。
研修は、業務の棚卸しから社内ルールと更新のしかたを残すまでで、私たちの稼働35時間が目安です。実装の代行は、1か月単位の発注額に、制作物に応じた制作費が加わります。
他社と比べるときは、表の金額だけでなく、研修の時間数と打ち合わせの回数を先方に聞き、業務の棚卸しから社内ルールまでという同じ範囲にそろえて比べます。
2026年度の補助金
| 制度 | 対象 | 上限と補助率 | 締切 |
|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠) | 事務局に登録されたITツール(AIを使うものも含むソフトウェア)の導入費です | 補助額は5万円以上450万円以下です。補助率は2分の1以内で、最低賃金の条件を満たす事業者は3分の2以内です | 次の締切(6次)は2026年10月30日17時です |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 人手不足を補う設備やシステムへの投資です | 補助上限は従業員5人以下の750万円から101人以上の8,000万円まで、補助率は中小企業2分の1(小規模事業者は3分の2)です | 第8回の締切は2026年10月16日17時です |
表の日程は、公募要領と公式サイトの2026年10月11日時点の記載です。次回以降の日程は公式サイトに出ます。
デジタル化・AI導入補助金は、事務局が認めたIT導入支援事業者と一緒に申し込みます。
補助率が3分の2以内になるのは、2024年10月から2025年9月の間に、2025年度改定後の地域別最低賃金を下回る賃金で雇う従業員が全従業員の3割以上だった月が、3か月以上ある事業者です。
導入コンサルティングや研修は、ツールとセットのときだけ対象になります。これらと保守サポートの費用は合わせて、1回の申請あたり200万円が上限です。
省力化投資補助金では、生成AIのツール単体が対象になるかが公募要領に明記されておらず、事務局への確認が要ります。
補助金の要件は公募の回ごとに変わるため、申請を前提に発注するなら、発注先が支援事業者として登録されているか、申請の締切と納品の時期が合うかを、最初の打ち合わせで確認します。
7. 目標にする数字と、納品物の確認のしかた
初年度の目標は、時間、人数、自社で作れた件数、手順書の有無
| 目標 | 測り方 | 見方 |
|---|---|---|
| 対象業務の作業時間 | 発注前に書き出した「月に何時間」と比べて、導入後の時間を月1回記録します | 週次レポートなら「管理画面を見て回る作業がなくなったか」のように、作業が消えたかで見ます |
| 使っている人数と頻度 | 週に1回以上使った人数を、対象部署の人数で割ります | 「個人の判断で使う」状態から「決めた業務で全員が使う」状態になったかを見ます |
| 自社で作れるようになった制作の件数 | 以前は外注していたサイト、ページ、ダッシュボード、資料のうち、自社で作れるようになったものの数を数えます | 「外注していたサイトが年1万円の自作サイトに置き換わった」のように、お金を払っていた制作が置き換わったかを見ます |
| 手順書とルールの有無 | 入力してよい情報の線引き、出力の確認手順、更新の担当が文書になっているかを見ます | 「ある・ない」の2択です。これがないと担当者が変わったときにAIの活用が止まります |
納品物の確認のしかた
| 確かめること | 見方 |
|---|---|
| 自社の担当者だけで2回動かせるか(1回は偶然でも動くためです) | 発注先がいないと動かないものは、納品物ではなく発注先の作業にとどまります |
| 出力を確認する手順が書かれているか | AIの出力には誤りが混ざります。確認する人と手順が決まっていないものは、使い続けられません |
| 設計書と更新の手順書があるか | 頼んだ側の会社の担当者が、自分たちの環境で作り直せるかが基準です。私たちがダッシュボードを納めるときは、設計書と、作り直すためのAIへの指示書を付けます |
| 公開後の実物で確かめたか | 「自分のパソコンで完成」と「公開されたものが動いている」は別です。公開後に実物で動くことを確かめる工程を最後に入れます |
ローカルグローススタジオの観点
ここまでは、どの会社にも当てはまる進め方を書きました。ここからは、私たちがAIの実装を頼まれるときに大事にしている、「何を資産として残すか」を先に決める考え方です。
私たちは間違ってはいけない戦略の順番|ビジョン→事業→商品→営業→組織で、戦略を考えるときに、目の前にあるリソースやすぐに実行できることから発想してしまいがちなこと、制約から考え始めると現状維持型の戦略になることを書きました。
AIも同じで、「使えるツールがあるから何かに使う」ではなく、「どの業務の時間を、誰のために空けるか」を先に決めてから道具を選びます。
顧客獲得コストを下げるには「ストック>フロー」を意識しようでは、広告のように費用がかかり続ける「フロー型」の施策と、オーガニック流入のように一度構築すれば継続的に効果を発揮する「ストック型」の施策を分け、ストック型を優先する考え方を書きました。
AIの実装で残すものも、この分け方で決めています。業務ごとの専用SaaSの契約や、ChatGPTやClaudeの月額は、払い続けるフロー型に当たります。
その会社の業務に合わせて書いた手順書とプロンプト集、出力を確認するルール、毎週自動で動く仕組みの3つは、担当者が変わっても残り、次の業務に広げるときにそのまま使えるストック型です。私たちの納品物の中心がこの3つなのは、そのためです。
事例
自社の週次レポートを自動化した例
1章の表に書いた自社の週次レポートでは、土曜のレビューで、届いた数字から「問い合わせ率に改善の余地が大きい」「特定のYouTube回の反応が多い」といった発見があり、それが次の施策の起点になっています。
ダッシュボードの作成を代行した、大学発スタートアップの支援先
複数のファイルに散らばった事業データを、経営者が一目で追えるダッシュボードにまとめたい、というご依頼でした。Claude Codeで作り、先方がOpenAIのCodexを使っていたため、Codexでも同じものを作り直せる形で納めました。
この案件で分かったのは、作る前に「会議で何を決めるための数字か」を決めておくと、画面の数も項目も少なく済み、使い続けやすいということです。
評価制度のたたき台を作った、地方の製造業の支援先
評価制度をゼロから、自社の文化に合った内容で設計したい、というご依頼でした。マーケティング支援や新規事業を一緒に進めるなかで私たちが残してきた経営者へのヒアリング記録と、その会社の事業資料を読み込ませました。
そのため、等級表のたたき台が最初からその会社の言葉で出てきました。最終の制度設計は人の議論で詰めています。
自社で進められることと、相談したほうが早いこと
この記事で紹介したことのうち、外部に頼まなくても自社で進められるのは次の4つです。
- ChatGPTかClaudeの有料版を契約し、習慣的に作る資料や、毎回発生する入力や読み込みをやらせてみます
- 日本ディープラーニング協会のひな形をもとに、入力してよい情報の線引きを決めます
- Claude Codeをインストールし、「見てよい資料」のフォルダに手元の資料を入れて整理を頼みます
- よろず支援拠点(国が各都道府県に置いている中小企業の無料相談窓口)や商工会議所の無料相談で、補助金の対象になるかを聞きます
ここまでを自社でやると、外部に頼む範囲が「業務別の手順書とプロンプト集」「ダッシュボードや自動化の実装」「基幹システムやCRMとの連携」に絞られ、見積もりが小さくなります。
一方で、次のような状況では、外部に頼むほうが早く進みます。
- 対象業務の候補が多く、どれから始めるかが社内で決まらない状況
- 試す担当者は置けるものの、手順書とルールまで作る時間が取れない状況
- 経営の数字や顧客のデータを使った仕組みを作りたいものの、データの扱いの線引きから相談したい状況
AIの実装、研修、Claude Codeの設定支援は、必要な施策の分だけ、単発のプロジェクト発注(1か月単位から、1か月単月15万円から)でお受けする形です。業務の棚卸しから手順書・プロンプト集・社内ルールの納品、ダッシュボードや自動化の実装まで一緒に進めます。
詳しくはプロジェクト発注のページにまとめました。自社で進められる4つを試してみて、次の段階で手が足りないと感じたときは、よかったらご相談ください。
参考資料
- 自社の記事: 本文中でリンクした前編、後編、具体事例7選、戦略の順番、ストック>フローの5本
- 中小企業庁 2026年版中小企業白書 第2部第2章第2節(2026年4月)
- IPA 国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント(2025年度DX動向調査)(2026年7月16日、回収1,799社)
- 中小企業基盤整備機構 中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月、全体版)
- 経済産業省 AI導入ガイドブック 需要予測編(小売り、卸業)(2021年3月)、AIの利用・開発に関する契約チェックリスト(2025年2月18日)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト、同 公募要領(通常枠)(2026年10月11日閲覧)
- AIの料金ページ(2026年10月11日閲覧): ChatGPT 料金、Claude 料金、Gemini のプラン、Claude Code の動作環境、Codex の料金、NotebookLM のヘルプ
- 研修と顧問の料金ページ(2026年10月11日閲覧): インソース、トレノケート、日本AI導入支援協会、CES UP、HiroshimAI、BoostX、Fyve
- 中小企業省力化投資補助金 一般型、デジタル化・AI導入補助金2026 スケジュール(2026年10月11日閲覧)
- 日本ディープラーニング協会 生成AIの利用ガイドライン
- よろず支援拠点全国本部
まとめ:まず自分で使い、外部に頼むときは手順書と動く仕組みを納品物にする
AIの活用は、ChatGPTやClaudeを日々の業務で使うところから始まり、Claude Codeに自社の資料を読ませる段階へ進みます。
私たちはこの順番で、週次レポートの自動化、支援先に納めた売上ダッシュボード、求人ページの自動掲載までを、業務ごとの専用SaaSを契約せずに作ってきました。
目的を売上ではなく作業時間に置くのは、AIを導入して効果があったと答えた企業の9割が業務の効率化を挙げ、売上や利益の向上を挙げた企業は4%に満たないからです。
私たちが勧める始め方は、有料版を契約して習慣的に作る資料や毎回発生する入力をやらせてみて、時間短縮につながったものをまとめ、担当者ごとのナレッジを社内の集合知にしていく順です。
そこに、入力してよい情報の線引きと「見てよい資料」のフォルダづくりを加えたところまでは、どの会社も自社で進められます。
外部に頼むかどうかは、データが社内に散らばってつながらないか、手順書とルールまで作る時間があるかで決まります。見積もりを取るのは、対象業務、現状の時間、使うデータ、担当者を決めてからです。
納品物は、発注先がいなくても動くか、確認の手順と設計書があるか、公開後の実物で確かめたかで見ます。手元に残すべきものは、ツールの契約ではなく、自社の業務に合わせた手順書とプロンプト集、出力を確認するルール、毎週自動で動く仕組みです。
「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。

執筆者 : 佐久間 一己 (さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカルグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャーを経て、福井県小浜市で道の駅・古民家ホテルの集客支援と行政の産業6次化に4年携わり、その後ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ執行役員、フィンテック事業責任者を務め、2025年に地方企業向けのマーケティング代理店を設立。BtoB事業でWEBメディアを立ち上げオーガニック流入を3か月で20倍に伸ばすなど、知名度や予算が限られる時期に効くマーケティングと採用の手法を、地方企業の規模に合わせて伴走します。

