ローカルグローススタジオは、『地方企業にスタートアップのような成長を』というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
この記事は、『Claude Code とは何か、そして私たちつなぐスタジオが実際にどう活用しているか、15 の具体例』について、前編・後編の2本立てでまとめています。
Claude Code は、ブラウザで動く ChatGPT や Claude とは異なり、自分のパソコンの中(ローカル)で動く AI ツールです。指示を出すと、自分のパソコンの中のファイルを直接読み、必要な処理を自走しながら手を動かします。この点が、ブラウザ型の AI との大きな違いです。
なお、本記事で取り上げるのは、複数ファイルの横断・外部サービスとの連携・定時実行・構造化データの大量処理といった使い方です。ブラウザで使う ChatGPT や Claude は、1回のやり取りで渡せる情報に上限があり、手元のフォルダや外部サービスに直接つながったり、決まった時間に自動で動いたりはできません。本記事で扱う使い方は、自分のパソコンの中でファイルを横断し、外部サービスに接続し、定時で動ける Claude Code だからこそ実現できます。
本記事(前編)では、その 15 の使い方をテーマ別にお伝えします。後編では、メディア事業「グローススタジオレポート(report.lgstudio.jp)」を立ち上げる中で得た、1 万ページ超のメディアを Claude Code で作るときの落とし穴と解決策を、より実装寄りの形でまとめます。
Claude Code とは
Claude Code は、米国 Anthropic 社が提供する、AI モデル「Claude」をローカル(=自分のパソコンの中)で動かすためのツールです。
ChatGPT や Claude をブラウザから使う体験は、もう多くの方が試したことがあると思います。Claude Code は、その同じ Claude を、ブラウザではなく自分のパソコンのターミナル(黒い画面)から動かす仕組みです。
「ターミナル」と聞くと身構える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、入力するのは普通の日本語です。「このフォルダのデータを集計して、ダッシュボードを作って」「このメールに返信案を3つ書いて」と話しかける感覚で指示すれば、Claude Code が必要なファイルを自分で読み、必要なツールを自分で呼び出し、最後まで進めます。
つまり、Claude Code とは「自分のパソコンの中で、自走しながら手を動かす AI」です。
「聞いて答える AI」から「実行する AI」への進化
ChatGPT や Claude をブラウザで使う体験は、便利ではあります。しかし、業務を本気で変えるところまでは届きにくい、というのが正直なところです。
理由は単純で、「聞いて答えをもらう」 AI は、最終的に人間がコピペし、人間がファイルを開き、人間が手を動かす必要があるからです。AI がどれだけ賢くなっても、その後工程が人間に閉じている限り、業務全体のスピードはほとんど変わりません。
ここ1年で起きた本当の進化は、AI モデルが少し賢くなったことではありません。AI が「手を動かす」役割を担えるようになったことです。具体的には、以下のようなことが、人間の指示だけで AI 側で完結するようになりました。
- 自社のデータファイルを読み込み、集計し、ダッシュボードの画面を生成する
- 検索エンジンや社内ドキュメントを横断して、根拠付きのレポートを書き上げる
- 既存の Web サイトを読み解き、修正案を提示し、その場で反映する
- 業務手順を自動化し、毎朝決まった時間に動かす
これらはすべて、半年前までは「エンジニアにお願いしないとできないこと」でした。それが今、Claude Code によって、非エンジニアの経営者でも指示するだけで動かせるようになっています。
つまり、AI との付き合い方の主役が「賢いチャットボット」から「自走するスタッフ」へ変わった、というのがこの1年の本質です。
WEB で動く AI と、ローカル(=パソコンの中)で動く AI の違い
ここで多くの方が引っかかるのが、「ローカルで動く AI って、結局エンジニア向けの話なのでは」という疑問です。たしかに、Claude Code はターミナル(黒い画面)で動かすツールという見た目をしています。
しかし、本当の進化は「コードを書ける」ことではありません。「パソコンの中で動く」こと自体が一番大きな進化です。WEB 上で動く AI と、ローカルで動く AI には、4つの本質的な違いがあります。
(1) 早い
WEB 上の AI は、毎回ブラウザを開き、画面に貼り付け、結果を待ち、結果をコピーし、貼り付け先を開き、整える、というステップが必要です。ローカルで動く AI は、自分のパソコンの中で完結するため、この往復がありません。1つの指示で複数のファイルを同時に読み、同時に書き換えます。
(2) 自走できる
WEB 上の AI は、一問一答が基本です。「次にこれをやって」と指示しない限り次に進みません。ローカルで動く AI は、「このフォルダのデータを集計してダッシュボードを作って」と一度指示するだけで、必要なファイルを自分で探し、必要なツールを自分で呼び出し、最後まで通します。途中で分からない点があれば質問して、確認しながら進めます。
(3) 自社のデータを直接見せられる
WEB 上の AI に自社の顧客データや売上データを貼り付けるのは、情報管理の観点で抵抗のある方が多いはずです。ローカルで動く AI は、自分のパソコンの中のフォルダを参照させる方式です。「このフォルダの中のファイルだけ見ていいよ」と範囲を指定でき、データが外部に丸ごとアップロードされる心配がありません。
(4) WEB 側のボトルネックを受けない
WEB 上の AI は、利用が集中する時間帯に「混み合っています」と弾かれることがあります。長い文章を投げると応答が遅くなることもあります。ローカルで動く AI は、API を通じてモデルとやり取りしますが、操作環境そのものは手元のパソコンに閉じています。長時間の作業も、長い手順の自動化も、安定して回り続けます。
この4つの違いがあるため、ローカルで動く AI は「AI に業務を任せる」という意味で、WEB 上の AI とは使い方の幅が大きく変わります。エンジニア向けに見えるのは、あくまで起動方法だけです。指示自体は日本語の文章で十分に成立します。
ローカルで動く AI の主な選択肢
ローカルで動く AI には、いくつかの選択肢があります。ここでは、現時点で本格的に使えるツールをご紹介します。どれが正解というよりは、自社の使い方に合うものを選ぶ、という考え方が大切です。
Claude Code(Anthropic)
- 提供元:Anthropic(Claude を開発している米国企業)
- 料金:月額20ドルの Pro プラン以上で利用可能(2026年6月時点、為替・改定で変動あり)。チーム / エンタープライズプランあり
- 強み:長い文脈を保持したまま複数ファイルを扱う精度が高い。日本語の指示理解が安定している。エージェントを並列で動かす機能が早期から実装されている
- 想定ユースケース:データ分析、ダッシュボード構築、メディア・Web サイト運営、ドキュメント執筆支援、業務スクリプトの設計
Codex CLI(OpenAI)
- 提供元:OpenAI(ChatGPT を開発している米国企業)
- 料金:ChatGPT Plus 以上で利用可能(2026年6月時点)。API 課金ベースの利用形態もあり
- 強み:OpenAI のモデル群と同じ生態系で完結する。ChatGPT で慣れた書き口がそのまま使える
- 想定ユースケース:既存の ChatGPT ワークフローをそのままローカル化したい場合、コード補完や軽量な自動化
Gemini CLI(Google)
- 提供元:Google
- 料金:Google アカウントベースで無料枠あり、有料プランも提供(2026年6月時点)
- 強み:Google 検索や Google サービスとの連携が前提に設計されている
- 想定ユースケース:Google ドライブや Google スプレッドシートを軸にした業務、リサーチ系のタスク
私たちつなぐスタジオは現時点で Claude Code を主軸に置いていますが、これは「日本語の長文指示の安定度」と「複数エージェントを並列で動かす機能の成熟度」が、メディアサイト運営という用途に最も合っていたためです。皆さんの会社の業務でも、まずは1つ選んで触ってみて、肌に合うものを軸に据える、という選び方をおすすめします。
15 の使い方実例(つなぐスタジオで動いているもの)
ここからが本記事の中心です。私たちつなぐスタジオで実際に Claude Code で動かしている 15 の使い方を、テーマ別に整理しました。いずれも、複数ファイルの横断・外部連携・定時実行・大量データの構造化といった、ローカルで動く Claude Code の強みが出る使い方です。数字は守秘の関係でぼかしてありますが、すべて稼働中のプロジェクトです。
目次から興味のある領域だけ拾い読みいただいても、内容が成立する作りにしています。
A. マーケティング・データ分析(3つ)
(1) マーケダッシュボード自動構築
GSC(Google Search Console)・GA4(Google Analytics 4)・Google 広告・YouTube 各種データを Google スプレッドシートに自動同期し、Claude Code が必要な集計と可視化を行います。毎週土曜の朝、Slack の経営チャネルに「先週の流入とコンバージョン状況」が、サマリと内訳の2層構造で上がってきます。「CV 率の改善余地が大きいこと」「特定の YouTube 回が刺さっている兆候」など、毎週のレビューで自然に浮上する発見が、次の打ち手の起点になっています。
(2) HubSpot アカウントの読み込み・棚卸し
HubSpot を Claude Code から読み込み、Company / Contact / Deal の網羅状況、「業界の偏り」「フォロー漏れの可能性が高いリード」「パイプライン設計の抜け」を一覧化できる状態にしています。なお、過去の受注からの ICP(Ideal Customer Profile=理想の顧客像)再構成までは、まだデータ数が少なく、着手前の段階です。
(3) 顧客状況スナップショット
複数社の顧客先 Slack と社内 CRM(HubSpot)を横断して、各社の直近の動き、健全度、リスク警告、次のアクションを1ページに整理させる使い方ができます。まだ定例的な再生成までは運用化しておらず、提案や面談のタイミングで最新状況を確認するために Claude Code に問い合わせる、というスタイルから始めています。担当者の頭の中にあった「あの会社はちょっと心配」という感覚を、可視化してメンバー全員に共有できる土台として整える余地があります。
B. 営業・コミュニケーション(3つ)
(4) 受信フォーム営業の毎週自動トリアージ
会社のお問い合わせフォームには、営業の売り込みが大量に届きます。その中に紛れる「本命の見込み顧客」「顧客の採用ニーズに刺さるパートナー」を取りこぼさないために、週2回(月・木の朝)に Claude Code が自動で全件レビューします。3分類(本命 / 様子見 / スルー)+ 返信下書きを Slack のスレッドに投下する仕組みです。判定基準は「自社にもメリットがある協業や提携の話か」「自社の強みが直接活きるか」といった社内ルールを CLAUDE.md に書き込んでおき、Claude Code がそれに沿って仕分けます。
(5) アウトバウンド営業のリスト + メッセージ文面の生成
新しいエリアに支社を構えたタイミングで「関西の VC とスタートアップに直接ご挨拶アプローチをしたい」となったとき、Claude Code に「関西の VC 一覧」「関西のスタートアップ一覧(調達済を中心)」をリサーチさせ、相手の特性に合わせたメッセージ文面のたたき台を一気に生成しました。実際に動かしたケースでは VC 45 件・スタートアップ 50 社分のリストと文面を、半日で1セットとしてレビューに回せる状態に整えられました。
(6) X 投稿の毎日下書き
毎朝9時に Claude Code が3本の X 投稿案を提案し、私が1本を選んで手を入れてから公開する運用です。投稿テーマは「マーケ」「人材」「ローカル」「経営」など複数のピラーから自動でローテーションされ、過去の投稿履歴とその月の発信方針に沿って提案されます。完全な代替には今のところ届かず、提案精度には日々の調整が必要ですが、ネタ出しの土台として有効です。
C. 長期プロジェクトの情報整理(1つ)
(7) 長期プロジェクト・復活プロジェクトの情報整理
数か月単位で動いてきた長期プロジェクトや、いったん中断していたものを再開させたい復活プロジェクトでは、過去資料が散らかっていることがあります。Claude Code に「このフォルダの中の資料を全部読んで、現状の体制・KPI・残タスクを1枚のドキュメントに整理して」と指示するだけで、散らかった状態を1本のドキュメントに集約できます。フォルダ内の数十本のファイルを横断して読み込み、関係性を再構造化できるのが、ローカルで動く Claude Code の強みです。
D. 自社事業の運営自動化(3つ)
ここからは、つなぐスタジオの3事業のうちタレントグローススタジオ(人材紹介事業、talent.lgstudio.jp)の運営を、Claude Code でどう仕組み化しているかをご紹介します。
(8) 求人原稿の構造化 → WordPress 自動掲載
採用企業様からいただいた求人情報は、最終的な相互確認のために PDF で授受するケースが多くあります。この最終 PDF を Claude Code が読み取って、職種・勤務地・年収・必要スキル・タクソノミー(求人の分類)を、構造化データ(項目ごとにきれいに整理された形式。代表例が JSON です)に変換し、そのまま WordPress の REST API(外部のプログラムから WordPress を自動で操作するための窓口)経由で求人ページを生成します。「PDF を開いて WordPress の管理画面で1項目ずつ手入力する」という流れを、整理済みのデータから自動でページを作る流れに置き換えられます。
(9) Google Indexing API で掲載通知を自動化
新しい求人ページを公開しても、Google にインデックス(検索結果に載せるための登録)がされなければ、求職者の検索結果に出てきません。Google Apps Script(Google 上で動く小さなプログラムを作れるサービス)で簡単なプログラムを書いて Google 側に置き、Claude Code が新規・更新した求人の URL を送ると、Google Indexing API(Google にページの登録を依頼するための公式の仕組み)に自動で通知するようにしました。求人を公開してから検索への反映を促す一手を、手を動かさずに済ませられます。
(10) しごと検索向けの JSON-LD / 職種・勤務地タクソノミーの自動更新
Google の「しごと検索」(求人専用の検索枠)に表示されるためには、ページに JSON-LD 形式の構造化データ(検索エンジンが「これは求人情報だ」と正しく認識できる、決まった形式のデータ)を埋め込む必要があります。Claude Code は求人データから自動で JSON-LD を生成し、あわせて WordPress 側のタクソノミー(職種ツリー / 勤務地ツリーといった分類)も、つじつまを合わせて更新します。求職者向けに求人をまとめた一覧ページも、データの更新と同時に作り直されます。
E. 顧客からのご依頼を起点に実行した支援(4つ)
ここからは、顧客から具体的なご依頼をいただいて、Claude Code を使って実行した支援内容のご紹介です。それぞれ、どの業種のご依頼だったかも添えています(社名は伏せています)。
(11) 過去の伴走資料を読み込ませて、企業文化に即した評価制度のたたき台を作成
- ご依頼:評価制度をゼロから設計したい。自社の文化や事業の実態に合った内容にしたい
- 業種:地方の中堅製造業
- 内容:過去にマーケティング支援や新規事業で並走してきた中で蓄積していた、その企業の経営者ヒアリング・事業資料・組織関連の資料を、すべて Claude Code に読み込ませました。Claude Code が企業文化を理解した上で、その企業に固有の文脈に即した等級表案や評価制度資料のたたき台を生成しました。最終的な制度設計は人間の議論で詰めますが、「外部から見たベストプラクティス」ではなく「その企業の実態に即した起点」から議論を始められたのが、最大の効果でした。
(12) 大量の求人案件から、自社で扱う候補を絞り込む
- ご依頼:取扱範囲が広いパートナー企業の求人プールから、自社の人材紹介事業の方針に合う案件だけを選びたい
- 業種:人材紹介のパートナー企業
- 内容:求人プールに対して、まず「エリア・職種・年収」などの条件で1段階目のフィルタをかけ、そのうえで「業界相性・候補者母集団の取りやすさ・年収レンジの妥当性」といった自社基準で2段階目の絞り込みを行います。最終的なショートリストとその選定根拠を、構造化されたファイルとして残します。判断の根拠が記録に残るため、後から「なぜこの案件を取った/取らなかったか」を遡って確認できます。
(13) 顧客の事業データを集約したダッシュボードを構築して納品
- ご依頼:複数に散らばった事業データ(受注・営業・顧客分析など)を、経営が一目で追えるダッシュボードにまとめたい
- 業種:大学発のディープテックスタートアップ
- 内容:Excel や各種シートに分かれていた事業データを Claude Code に読み込ませ、セグメント別・指標別に集計したダッシュボードを構築しました。納品物は、ダッシュボード本体だけではありません。最終的に設計書となる md ファイル(Markdown という、文章をまとめるのに広く使われる形式のファイル)と、「どのファイルのどのシート・どの項目が、ダッシュボードのどこと連動しているか」を解説した指示書まで出力し、先方が自分たちの環境で作り直せるところまで納品しました。先方の環境は ChatGPT の Codex だったため、Codex でも再現でき、別の環境にも応用できる形での納品となりました。
(14) D2C のデジタルマーケティングを定期モニタリング
- ご依頼:広告・LP・アフィリエイトなど複数チャネルの数字を、定期的にまとめて把握したい
- 業種:子育て家族向けの D2C ブランド
- 内容:広告の成果、LP の動き、アフィリエイト経由の流入といった、別々のツールに散らばったデータを Claude Code に横断して読み込ませ、定期的なモニタリングレポートにまとめています。複数のチャネルを1つの視点で見られる状態を保っています。
F. メディア・データ事業(1つ、後編で詳述)
(15) グローススタジオレポート:1 万ページ超のメディア自動生成
求人ボックス公開求人を全国規模で継続的にクロールし、エリア × 職種 × 年収帯で構造化、最終的に 1 万ページ超のメディアサイト(report.lgstudio.jp、現時点で 10,453 ページ)を Claude Code 主導で立ち上げました。月次で全件を再取得し、相場の動きを継続観測する体制も Claude Code が回しています。
このプロジェクトでは、観点別の並列レビューエージェントと修正を1セットとして繰り返す「サイクル」を、累計 20 回以上回しています。その中で得た落とし穴と解決策は、後編『Claude Code で1万ページ超えのメディアを27日で作成した実践解説。落とし穴と解決策を紹介』 で、6つのポイントに分けてお伝えします。
以上、15 の使い方実例でした。いずれも、複数ファイルの横断や外部連携、定時実行が要になる領域です。エンジニアを雇用してシステムを発注する規模感の仕事を、Claude Code を1人で運用することで、月数千円〜数万円の費用で動かせています。
得意領域と苦手領域を、正しく理解して使い分ける
ここまで読んでいただくと、Claude Code は何でもできる魔法のツールに見えてしまうかもしれません。しかし、得意領域と苦手領域は明確にあります。地方企業で導入を検討される際は、得意領域から入るのが鉄則です。
得意領域(積極的に任せていい)
- ダッシュボード構築(GA4 / GSC / 広告 / CRM の集計と可視化)
- データリサーチ(求人マーケット、競合分析、業界レポート生成)
- ウェブサイト・アプリの設計と実装(中規模までは1人で十分に運用可能)
- 業務スクリプトの自動化(毎朝の定型レポート、毎週のバッチ処理)
- 長文ドキュメントの構成設計、議事録整理、引き継ぎ資料の再構造化
- 既存資料を横断した社内ナレッジ検索
苦手領域(人間の関与が必要)
- SNS 投稿の感性とトーン(短い文の表現品質は人間の感覚に依存する部分が大きい)
- 画像生成(別ツールに任せた方が品質が高く、Claude Code はあくまで指示出し止まり)
- ブランドの世界観づくり(「らしさ」の最終判断は人間の言葉でしかできない)
- 対人のニュアンス判断(顧客の感情、商談の空気、社内政治)
- 創業者・経営者の個人的な意思決定の根本部分
特に SNS 投稿は、実際に下書きを AI に出させてみると、短文ほど人間の体温や言い回しが反応を左右する、というのが実感です。私たちつなぐスタジオでも、X の投稿は毎朝、AI に3本下書きを提案させたうえで、最終的な1本は人間が選び、必ず手を入れてから公開する運用にしています。短文の感性は、想像以上に人間の固有の領域です。
逆に言えば、ダッシュボードやリサーチ、サイト設計といった「論理で組み立てられる仕事」は、ほぼ Claude Code で完結できます。地方企業で「人手が足りない」「専門人材が採れない」と感じている領域があれば、まずそこから入るのをおすすめします。
「0→1」は人間、「1→9」は AI、「9→10」は再び人間
AI と業務を分担するときの考え方として、「0→1」「1→9」「9→10」の3段階で整理しています。
0→1 は人間の仕事です。「何を作るのか」「誰のために作るのか」「どんな価値を届けるのか」を決めるのは、最初から最後まで人間の責任です。Claude Code に「いい感じのメディアを作って」と指示してもうまくいきません。最初の判断基準を人間が立て、それを Claude Code に渡すからこそ、自走できるようになります。
1→9 は AI が高速で形にします。 方針が決まれば、ページテンプレートを書く、データを集計する、エラーを直す、ドキュメントを整える、といった「決まったことを大量に実装する」工程は、人間がやるより速く片付きます。私たちのメディア立ち上げも、コア設計が決まってから初版公開までは、Claude Code がほぼ全工程を動かしました。
9→10 はもう一度、人間の出番です。 ローンチ直前の最後の20%、特に「読み心地」「圧迫感」「言葉の余韻」のような感性領域は、人間が判断するしかありません。ここで時間がかかるのは仕方ありません。むしろ、ここでの判断こそが、その人やその会社の専門性が問われる部分です。
つまり、AI を使うほど「自分は何を判断する人なのか」がはっきりしていきます。AI が手を動かす分、最初の設計と最後の仕上げに集中できる、というのがローカルで動く AI の最大の効用です。
最初の一歩:インストールと「見てよい資料」のフォルダ格納
ここまで読んでいただいた方が、「では何から始めればいいか」と感じられたら、出発点は次の2つだけです。
(1) インストール
- 公式サイト(
https://claude.com/claude-code)からインストール手順を確認 - Node.js(プログラムを動かすための基盤)を入れ、ターミナル(Mac の場合は「ターミナル」アプリ、Windows の場合は PowerShell)で1行コマンドを実行
- Anthropic アカウントでログイン
ここまでで、ローカルで動く AI が手元に立ち上がります。インストール自体は30分程度で終わります。
(2) 「見てよい資料」をフォルダに格納する
これが、地方企業の経営者にとっての本当のスタート地点です。新規フォルダを作り、Claude Code に「このフォルダの中だけ見ていいよ」と教えるための初期資料を入れます。最初に入れるべき資料の例を、業種別にお伝えします。
- 製造業の場合:会社概要、主要製品の仕様書、過去3年の売上推移(エリア別 / 製品別)、主要顧客の業界一覧、求人票、設備一覧
- 小売業の場合:店舗一覧、商品カテゴリ別の売上推移、POS データのサマリ、顧客アンケート結果、SNS 投稿の過去履歴
- サービス業の場合:顧客リスト(個人情報を除いた業種・規模・継続期間)、提供サービス一覧、過去の提案資料、商談議事録の抜粋
- 採用人事を強化したい場合:現行の求人票、過去の採用実績(エリア / 職種別)、社内の組織図、ミッション・カルチャー資料
ここで重要なのは、「最初から完璧なフォルダ構成を作ろうとしない」ことです。とりあえず手元の資料をいくつか入れ、「このフォルダの中の情報を元に、◯◯について整理して」と質問してみる、というのが最初の使い方です。整理する中で、「次はこの資料も入れた方がいい」という提案が Claude Code 側から出てきます。
毎日少しずつ「見てよい資料」を増やしていく、というのが、地方企業で Claude Code を業務に組み込んでいく一番確実な道です。
そして、フォルダの読み込みに慣れてきたら、普段使っているツール(プラグイン)をつないでいくと、できることが広がります。Gmail やスプレッドシート、Slack などをつなげば、それらのデータも Claude Code が直接扱えるようになります。
もし「ターミナルから動かす Claude Code は、やっぱり少し難しそう」と感じたら、Cowork という、より入りやすいツールから始めてもいいかもしれません。Cowork は、黒い画面(ターミナル)を使わずに、Gmail・スプレッドシート・Slack など普段のツールをプラグインとしてつなぎ、AI に作業を頼める使い方です。私自身も、まず Cowork でデータの接続を試して慣れ、そこから Claude Code へスムーズに移れました。入りやすいところから入って大丈夫です。
まとめ:ローカルで動き、自分で実行してくれる AI を、自社の片隅から始めてみる
前編の要点を整理します。
- Claude Code とは、自分のパソコンの中で自走しながら手を動かす AI
- 進化の本質は「賢くなった」ことではなく、「ローカルで動き、自走するようになった」こと
- WEB で動く AI とローカルで動く AI には、4つの本質的な違いがある(早い / 自走できる / 自社データを直接見せられる / WEB のボトルネックを受けない)
- 主な選択肢は Claude Code / Codex CLI / Gemini CLI の3つ。まずは1つ選んで触ってみるところから始める
- つなぐスタジオで動いている使い方は、マーケダッシュボード自動構築から、求人原稿の構造化 + WordPress 自動掲載、1 万ページ超のメディア自動生成まで、本記事で紹介しただけで 15 種類(複数ファイル横断・外部連携・定時実行など、ローカルで動く Claude Code の強みが出る領域)
- 得意領域はダッシュボード、データリサーチ、サイト・アプリ設計、業務自動化。苦手領域は SNS 投稿の感性と画像生成
- 0→1 は人間、1→9 は AI、9→10 は再び人間。自分の専門性は最後の 20% にこそ出る
- 始め方は、インストール → 見てよい資料のフォルダ読み込み → 使うツールの連携。難しそうなら Cowork という入りやすいツールから入る手もある
まずは小さく、入りやすいところから始めてみてください。
なお、後編 『Claude Code で1万ページ超えのメディアを27日で作成した実践解説。落とし穴と解決策を紹介』 では、私たち自身がメディア事業「グローススタジオレポート」を立ち上げる中で積み重ねた、20 サイクル以上の試行錯誤を題材に、Claude Code でメディアサイトやデータプロジェクトを立ち上げるときの落とし穴と打ち手を、より具体に踏み込んでお伝えします。これから本格的に Claude Code でプロジェクトを動かしたい方は、ぜひ後編も合わせてお読みください。
ダッシュボード構築代行 / Claude Code 設定支援のご案内
つなぐスタジオでは、地方企業の経営者の方向けに、以下の2つのサービスを提供しています。
- ダッシュボード構築代行:GA4 / GSC / 広告 / CRM データを統合し、毎週自動更新のダッシュボードを構築。経営判断の起点となる数字を、毎週決まった曜日の朝に揃った状態で見られる体制を整えます。
- Claude Code 設定支援:CLAUDE.md の階層設計、フォルダ構成の初期設計、最初の業務スクリプトの設計、並列レビューの導入支援まで、地方企業の業務に Claude Code を組み込む初期セットアップを伴走します。
「自社の業務にどう組み込めばいいか分からない」「インストールはしたが、何から触ればいいか分からない」という段階からのご相談を歓迎します。
『ビジネス知の機会格差をなくす』という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。
著者プロフィール

執筆者 : 佐久間 一己 (さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / タレント&ローカルグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店を設立。BtoB事業でWEBメディアを立ち上げオーガニック流入を3か月で20倍に伸ばすなど、シード/シリーズAの知名度・ブランドが乏しい時期のマーケティング手法を地方企業向けにアレンジします。
地方とスタートアップをつなぐ事業を、東京・関西・福井の3拠点で展開中。


