ローカルグローススタジオは、「地方企業にスタートアップのような成長を」というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
この記事は、「地方企業の採用力を高める!無料採用ツールの活用法」について記載しています。
はじめに:地方企業の採用課題
地方企業の採用(特に人口10万人以下の地域)は、ハローワーク一辺倒というケースが非常に多いのが現状です(実際、過去に支援する企業のほとんどがハローワークのみの採用活動でした)。しかし、適切な採用ツールを組み合わせることで、応募数を大きく伸ばすことができるのです。
大手企業やスタートアップで事業責任者として採用を行っていた経験と、地方での起業経験から言えるのは、地方企業の採用では「無料ツールの活用」が想像以上に効果的だということです。
なぜなら、都市部では求人の競合が多く、人材獲得のために一定のコストが必要になるケースが大半です。対して地方では、競合が少ないため、無料のツールで情報を適切に届けるだけでも、一定の応募を見込むことができるのです。
つまり、地方企業の採用では、「いかに無料ツールを効果的に活用するか」が重要なポイントとなります。この記事では、これまでの経験から実践してきた採用チャネルの整備方法と、段階的な有料ツールの活用について、具体的にお伝えしていきます。
地方企業の採用で大切なこと
地方で人材を採用する際に最も大切なのは、「地域内での認知と信頼」です。大手企業と異なり、地方企業は会社名だけでは応募を集めることが難しいのが現実です。だからこそ、地域内でのプレゼンスを高め、「働きやすい会社」「成長できる会社」というイメージを定着させることが重要になります。
地方の求職者は、以下のような傾向があります:
- 地域内のネットワークを重視する
- 安定性を求める傾向が強い
- ハローワークの利用率が高い
- インターネットでの情報収集も併用する
これらの特性を理解した上で、複数の接点を用意することが採用成功のカギとなるのです。まずは無料ツールを活用した基盤づくりから始めていきましょう。
無料ツールからはじめる採用チャネルの整備
地方企業の採用で最も重要なのは、「無料ツールを使って求人の文章や条件を磨いていく」というステップを踏むことです。これにより、コストパフォーマンスの良い採用が実現できます。具体的な手順を見ていきましょう。
1. 無料ATSの活用からスタート
まず取り組むべきは、無料のATS(採用管理システム)の導入です。具体的には、「engage」や「Airワーク」といったツールが効果的です。これらのツールを使うメリットは以下の3点です。
- 複数の無料求人媒体に一括で掲載できる(Indeed、タウンワークなど)
- 応募者の管理が効率化できる(エクセルでの管理からの脱却)
- 応募データが蓄積され、採用活動の改善につながる
無料ATSを活用する際の具体的なポイントは以下の通りです:
- 求人タイトルの工夫:検索されやすいキーワードを含める
- 良い例:「【未経験OK】地元で長く働ける製造スタッフ」
- 悪い例:「製造部門 社員募集」
- 魅力的な求人文の作成:「なぜこの会社で働くべきか」を明確に
- 仕事内容だけでなく、会社の成長性や職場環境も伝える
- 具体的な数字を盛り込む(例:「社員平均勤続10年以上」「年間休日120日」)
- 写真や画像の活用:職場環境や雰囲気が伝わる写真を掲載
- 実際の作業風景や社員の様子がわかる写真
- 清潔感のある職場環境の写真
これらのポイントを押さえた求人を作成し、複数の媒体に一度に掲載できるのが無料ATSの大きなメリットなのです。
2. ハローワークインターネットサービスの活用
次に行うべきは、ハローワークインターネットサービスでの求人掲載です。ここでのポイントは、ATSで作成した求人内容をそのまま転載することです。なぜなら:
- 求人内容の一貫性が保てる
- 更新作業が効率化できる
- 応募者の混乱を防げる
ハローワークでの求人掲載を効果的に行うためのポイントは以下の通りです:
- 求人条件の明確化:
- 必須条件と歓迎条件を明確に分ける
- 年齢制限は必要最小限に(若年層だけでなく、幅広い層が応募できるように)
- 更新タイミングの工夫:
- 月初や週明けなど、求職者の活動が活発な時期に更新
- 定期的な更新で常に上位表示を維持
3. 自社の採用基盤の整備
さらに重要なのが、自社の採用基盤の整備です。具体的には:
- 自社HPでの求人ページの作成
- Googleマイビジネスでの求人情報の掲載
- 社員インタビューなどのコンテンツ追加
これらは一度作れば継続的に効果を発揮する「ストック型」の施策です。
自社メディアを整備する際のポイントは以下の通りです:
- 採用専用ページの作成:
- 会社の理念や魅力が伝わるデザイン
- 社員の声や実際の職場写真を掲載
- モバイル対応(スマホからのアクセスを考慮)
- Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)の最適化:
- 基本情報(住所、電話番号、営業時間など)の正確な記載
- 求人情報の掲載(Google for Jobsとの連携)
- 応募フォームの設置:
- シンプルで入力しやすいフォーム設計
- 必須項目は最小限に(ハードルを下げる)
- 送信後の自動返信メールでフォロー
このように、無料ツールを組み合わせることで、地方企業でも十分な採用効果を得ることができます。
有料ツールの段階的な活用方法
無料ツールでの採用基盤が整ったら、次は有料ツールの活用を検討していきます。ただし、ここで大切なのは「やみくもに有料ツールを導入しない」ということです。
では、有料ツールをどのような順番で検討していけば良いのでしょうか。
1. インターネット求人の有料プラン
まず検討すべきは、すでに使っている無料求人サイトの有料プランです。
- 掲載順位が上がり、応募数が増加する
- 週単位での掲載が可能(必要な期間だけ出稿)
有料プランを活用する際のポイントは以下の通りです:
- 出稿期間の最適化:
- 採用したい時期の2-3ヶ月前から出稿開始
- 繁忙期や閑散期を考慮した期間設定
- 予算配分の工夫:
- 人気職種には予算を多めに配分
- 応募が少ない職種は文面の見直しを優先
- A/Bテストの実施:
- 異なる文言やデザインの求人を出し分け
- 効果の高い方に予算を集中
有料プランは無料版よりも様々な機能やオプションがあるため、それらを活用することで費用対効果を最大化できます。しかし、闇雲に予算をかけるのではなく、データに基づいた出稿判断が重要です。
2. Wantedlyの活用
次に検討したいのが、Wantedlyです。月額5-6万円~程度で以下のメリットが得られます:
- 会社の魅力やビジョンを体系的に発信できる
- 複数の求人を同時掲載できる
- ビジョンに共感する若手人材との接点が作れる
Wantedlyを活用する際のポイントは以下の通りです:
- ストーリー性のある会社紹介:
- 創業の背景や企業理念を物語として発信
- 経営者の想いや将来ビジョンを具体的に
- 職場の雰囲気が伝わるビジュアル:
- 実際の仕事風景を撮影した写真
- 社員同士のコミュニケーションがわかる写真
- カジュアル面談の活用:
- 気軽に会社を知ってもらうための仕組み
- オンラインでの初期面談も効果的
Wantedlyは特に「なぜこの会社で働くべきか」というビジョンや価値観に共感する人材を集めるのに効果的です。地方企業でも、独自の強みや地域貢献などの魅力を発信することで、都市部からのU・Iターン人材にアピールできる可能性があります。
3. ビズリーチの活用
即戦力となるビジネスパーソンの採用には、ビズリーチの活用を推奨します。
- 月額費用+採用成果報酬のモデル
- スキルの高い人材にアプローチ可能
- スカウト機能による能動的な採用活動
ただし、コストが高額(初期費用+月額約10万円~+採用成功報酬)なため、明確な採用要件と予算が必要です。
ビズリーチを活用する際のポイントは以下の通りです:
- ターゲティングの明確化:
- 求める経験やスキルを具体的に設定
- 地方勤務のメリットを明確に(生活環境、待遇など)
- 効果的なスカウト文の作成:
- パーソナライズされたメッセージ
- 候補者のキャリアを理解した上での提案
- 面接プロセスの効率化:
- オンラインでの初期面談の活用
- 意思決定プロセスのスピードアップ
ビズリーチは特に管理職や専門職など、高いスキルを持つ人材を採用したい場合に効果的です。地方企業がこうした人材を獲得するためには、単なる仕事内容だけでなく、地方ならではの魅力や、裁量の大きさなどをアピールすることが重要です。
4. その他のスカウトツール
状況に応じて、以下のツールも検討の余地があります:
- リクルートダイレクトスカウト
- Doda
- YOUTRUST
- Green
- 転職ドラフト(特にエンジニア採用時)
これらのツールは、求める人材像や予算に応じて選択するとよいでしょう。特に専門職種(エンジニア、デザイナーなど)の採用では、その職種に特化したプラットフォームが効果的な場合があります。
5. 人材紹介エージェントの活用
最後の手段として、人材紹介エージェントの活用があります。
- 成功報酬型(採用時のみの費用発生)
- 専門的なポジションの採用に効果的
- エージェントによる候補者のスクリーニング
ただし、年収の30-35%程度の手数料が発生するため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
人材紹介エージェントを活用する際のポイントは以下の通りです:
- エージェントとの信頼関係構築:
- 会社の魅力や求める人材像を丁寧に説明
- 定期的なコミュニケーションの維持
- 地域特化型エージェントの活用:
- 地元に強いエージェントを優先的に選択
- UIターン専門のエージェントも検討
- 複数エージェントの併用:
- 2-3社のエージェントを併用して幅を広げる
- エージェント間での競争意識を喚起
人材紹介エージェントは、自社だけでは接点を持ちにくい潜在層へのアプローチが可能です。特に地方企業がUターン人材を獲得したい場合や、専門性の高いポジションを埋めたい場合に効果的な手段となります。
実践的なアクションプラン:地方企業のための採用チャネル整備ステップ
ここまで解説してきた内容を、実践的なアクションプランとしてまとめていきます。地方企業における採用チャネルの整備は、以下の順序で進めていくことを推奨します。
【ステップ1:無料ツールの整備】
まずは無料のツールで採用基盤を整えます。
- 無料ATSの導入
- engageまたはAirワークのアカウント作成
- 求人原稿の作成(職種ごとに強みを明確に)
- Indeed、スタンバイなどの無料媒体への一括掲載
- ハローワーク連携
- ハローワークインターネットサービスでの求人掲載
- ATSの原稿内容との整合性確認
- 定期的な情報更新の仕組み構築
- 自社メディアの整備
- 自社HPでの求人ページ作成
- Googleマイビジネスでの求人情報掲載
- 採用に関する問い合わせフォームの設置
【ステップ2:効果測定と改善】
無料ツールからの応募状況を見ながら、改善を重ねます。
- 応募数や採用率のデータ収集
- 応募者からのフィードバック分析
- 求人内容の継続的な改善
実践的な改善のポイントとしては、以下の3点に着目すると効果的です:
- 応募者の声を活かす:
- 面接に来た方へのヒアリング(「どこで求人を知ったか」など)
- 応募しなかった理由の分析(可能であれば)
- 競合分析:
- 同業他社の求人内容をチェック
- 自社の強みを際立たせる差別化ポイントの発見
- データ分析:
- 各媒体ごとの応募数と質の把握
- 曜日や時間帯による応募傾向の分析
【ステップ3:有料ツールの段階的導入】
効果が見えてきたら、有料ツールを検討します。地方企業での推奨順序は:
- 無料ATS&ハローワーク
- 自社HP+Googleマイビジネス
- Wantedly
- ビズリーチ
- 人材紹介エージェント
※エンジニア採用の場合は、転職ドラフトの優先順位が上がります
この順序で進めることで、コストパフォーマンスを維持しながら、効果的な採用活動を展開できます。ただし、業種や求める人材像によって最適な順序は変わってくるため、自社の状況に合わせた調整が必要です。
実践時の重要ポイント
1. 求人の出し分け戦略
一つの職種に対して「スペシャリスト枠」と「チャレンジ枠」の2つの求人を出し分けることをお勧めします。これにより:
- 必須条件と歓迎条件を明確に分けられる
- 応募者の幅が広がる
- 採用後のキャリアパスが明確になる
「未経験OK」の求人と「経験者優遇」の求人を分けることで、それぞれのターゲット層に明確なメッセージを伝えることができるのです。
2. 効果測定のポイント
採用活動の効果を測定する際には、以下の3つの指標に注目しましょう:
- 応募数/採用数の推移
- 採用単価(採用1名あたりのコスト)
- 応募者の質(スキルマッチ度)
これらの指標を定期的に確認することで、どのチャネルや施策が効果的かを判断し、次の一手を打つことができます。
まとめ:採用成功の鍵
地方企業の採用成功の鍵は、以下の3点に集約されます:
- 段階的なアプローチ:
- 無料ツールからはじめ、効果を見ながら有料ツールへ
- 一貫したメッセージング:
- すべてのチャネルで会社の魅力を一貫して伝える
- 求職者の視点に立った情報提供
- 継続的な改善:
- データに基づいた改善サイクルの確立
- 応募者からのフィードバックを活かす姿勢
これらのポイントを押さえることで、地方企業でも効果的な採用活動を展開することができます。採用は短期的な成果ではなく、中長期的な企業価値の向上につながる重要な投資です。限られたリソースの中でも、工夫次第で大きな成果を上げることができるのです。
「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。

執筆者 : 佐久間 一己 (さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカルグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店を設立。BtoB事業でWEBメディアを立ち上げオーガニック流入を3か月で20倍に伸ばすなど、シード/シリーズAの知名度・ブランドが乏しい時期のマーケティング手法を地方企業向けにアレンジします。