ローカルグローススタジオは、「地方企業にスタートアップのような成長を」というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
このシリーズについて
「○○社に学ぶシリーズ」では、急成長している企業の実践事例から、地方企業の経営者や地方スタートアップが自社の成長に活かせるポイントを抽出してお届けします。
大企業の事例をそのまま真似するのではなく、「その企業が何をして、なぜ成果が出たのか?」を分解し、地方企業でも実践できる形に落とし込んでいきます。
今回取り上げるのは、ゲームセンター「GiGO」やカラオケ「BanBan」などを運営する株式会社GENDAです。
参考資料一覧
GENDA社とは?
株式会社GENDAは、ゲームセンターを中心としたアミューズメント企業です。2020年12月に東証グロース市場に上場し、「2040年に世界一のエンタメ企業になる」というビジョンを掲げています。
GENDAは独自の成長戦略で、アミューズメント業界に革命を起こしています。
なぜGENDAから学ぶべきなのか?
55件のM&A実行、PMI施策を実施した全ゲームセンターで増収・増益
2025年10月時点で、GENDAは55件のM&Aを実行しています。そして、2024年4月時点の発表では、PMI施策を実施した全てのゲームセンターで増収・増益を達成しています。
主要な実績(2024年4月発表時点):
- 宝島(ゲームセンター20店舗):売上122%、利益133%
- スガイディノス(18店舗):売上134%、利益546%
- エービス(4店舗):売上118%、赤字から黒字化
- アムジー(1店舗):売上128%、利益3,070%
- プレビ(51店舗):売上111%、利益120%
投資回収の速さも際立っています。宝島(M&A完了から2年強)、スガイディノス・エービス(1年半)の3社合算で、投資した自己資金の215%を回収。つまり、短期間で投資額の2倍以上のリターンを生み出しているのです。
カラオケBanBanの復活劇
最もわかりやすい事例が、2024年2月に買収したカラオケBanBanです。
創業35年間、一度も黒字化できなかった2月を、グループ入り初月で初めて黒字化。既存店の売上は、当初計画0%に対して実績13%成長。わずか数ヶ月で劇的な変化を遂げました。
つまり、GENDAには「企業を成長させるノウハウ」が詰まっている
PMI施策を実施した全てのゲームセンターで成功するということは、運や偶然ではありません。そこには再現性のある「成長のノウハウ」があるはずです。
今回は、そのノウハウを分解して、地方企業でも実践できる形でお伝えします。
地方企業が学べる3つのポイント
ポイント① 「最初の100日」から学ぶ、成長の基盤づくり
GENDAが買収後すぐにやること
GENDAは、企業を買収した後、「最初の100日」で成長の基盤を一気に整えます。
PMI(Post Merger Integration)とは? M&A後の統合プロセスのことです。企業を買収した後、どうやって成長させるか。GENDAはこのPMIに独自のノウハウを持っています。
GENDAが重視しているのは迅速さと断続的な施策の繰り出しです。短期・中期・長期の施策をバランスよく仕込み、成長モメンタムを醸成することが肝となります。
Day1-30(初期フェーズ)の重要事項
- コミュニケーション基盤の構築
- Slackなどのコミュニケーションツール導入
- 経営会議と社長会議(1on1)の設置
- 主要人物との懇親会の実施
- データ基盤の整備
- 財務会計データへのアクセス確保
- 経営KPIとレポートの定期作成
- データダッシュボードの構築
- Quick Win(小さな成功)の獲得
- ビジネスデューデリジェンス時点でのシナジー仮説の構築
- 対象会社の有識者との仮説ブラッシュアップ
- パイロットテストの実施とレポート(信頼構築)
Day31-100(中期フェーズ)の重要事項
- 中期経営計画の策定
- 競争戦略の確立とKSF(重要成功要因)の設定
- 3ヵ年の事業・KPI・組織計画の策定
- 全従業員への説明会
- 組織改革及び人事制度の見直し
- 中期計画推進における組織課題の特定
- MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の再定義
- 組織図、人事制度、採用戦略などの見直し
- 360度フィードバックなどの施策実施
- 継続的なデリバリーサイクルの確立
- 最低月1回以上の施策実行サイクルを確立
- 経営会議などでの継続的なレポート
- 会社が進化している状態をつくり、成長モメンタムを醸成
組織とカルチャー統合の方針
GENDAは、中長期的な成長のために組織の質を高く保つことを重視していますが、独特のアプローチを取っています。
強制的なカルチャーの上塗りは行わない
- 理由:市場、ビジネスモデル、フェーズごとにKSF(重要成功要因)が異なるため
- グループ各社の強みやカルチャーを尊重する
ただし、ネガティブなカルチャーは必ず解消する
- 意思決定の遅さ
- ギスギスした人間関係
- 非生産的な業務慣習
同時に2つを追求する
- 一人あたり生産性の改善(テクノロジー活用による非生産的業務の自動化)
- 関係性の質の改善(360度フィードバックなどによるモニタリング)
結果として、業績とエンゲージメントの両方が向上します。
あなたの会社でできることは?
では、この「最初の100日」の考え方を、あなたの会社に当てはめてみましょう。M&Aをしていなくても、新しいプロジェクトを始める時や、事業を改革する時に応用できます。
チェックリスト:こんな状態になっていませんか?
- □ 経営会議が不定期で、議題も曖昧
- □ 売上や利益の数字を、月末にしか確認していない
- □ 新しいことを始めても、途中で立ち消えになる
- □ 3年後の目標が、社内で共有されていない
- □ 半年以上、大きな改善施策を実行していない
- □ 意思決定が遅く、改善が進まない
もし1つでも当てはまるなら、GENDAのやり方から学べることがあります。
すぐにできる改善策
1. コミュニケーションを整える
- 経営会議と社長との1on1を設定
- SlackやChatworkを導入(月1,000円/人程度)
- 経営会議で必ず数字を見ながら議論
2. データを見える化する
- エクセルで週次の売上・利益グラフを作成
- 経営会議で毎週確認
- 「なんとなく」ではなく「データで」判断する習慣
3. 3ヶ月で達成できる小さな目標を設定
- 飲食店なら:新メニュー3品を開発して、3ヶ月で売上の10%を占める
- 小売店なら:店舗レイアウトを変更して、3ヶ月で客単価5%アップ
- 製造業なら:改善提案を3件実行して、3ヶ月で不良率を半減
4. 月1回は必ず新しいことを実行する
- 毎月1日に「今月の新施策」を決める
- 月末に振り返りをして、次月につなげる
- 小さな改善でもいいので、必ず何かを実行
5. ネガティブなカルチャーは徹底的に解消する
- 意思決定が遅い会議を見直す(結論を出す会議に変える)
- 非生産的な業務慣習を洗い出して廃止する
- 360度フィードバックで人間関係の質をモニタリングする
ポジティブなカルチャーは無理に押し付けず、ネガティブなカルチャーだけを取り除く。このバランスが重要です。
ポイント② 「専門機能の集約と会議体設計」から学ぶ、効率化と連携の仕組み
GENDAの組織設計:「本社」と「現場」の役割分担
GENDAは、役割を明確に分けています。
GENDA本社(空中戦)が担う機能
- ファイナンス:資金調達、財務管理
- 経営戦略:M&A戦略、PMI推進、中期計画
- マーケティング:ブランド戦略、データ分析、広告運用
- テクノロジー:AI、DX、システム開発
- 人事・組織設計
グループ各社(地上戦)が担う機能
- ドメイン知識(業界の専門知識)
- きめ細やかな店舗運営
- 業界での関係資産(取引先との関係性)
- 現場の経験とセンス
重要なのは、各店舗では揃えにくい専門機能を本社に集約していることです。
経営戦略チームは25名(2025年10月時点)。出身企業はDisney、L’OREAL、リクルート、BCG、Kearney、LINE、メルカリ、GREE、hulu、Goodpatch、SmartHR、バンダイナムコなど。多様なプロフェッショナルが、専門性を発揮しています。
3層の会議体設計:専門性と連携の両立
GENDAの特徴は、Oneチームで各社のValue-Upを推進することで、心理的・物理的な連携ハードルを最小化していることです。
具体的には、3つの階層で会議体を設計しています。
①チームMTG(職能別会議)
- 同じ職能のメンバーで業務共有
- 例:マーケティングチーム、財務チーム、ITチームなど
- 専門性の高い議論と知見の共有
②企業MTG(企業別会議)
- 担当企業のメンバーで業務共有
- 例:GiGO担当、BanBan担当など
- その企業固有の課題や施策を議論
③企業横断MTG(全体会議)
- 各企業ごとの状況や施策を共有
- 成功事例を横展開する場
- グループ全体のシナジーを生み出す
この3層構造により、「専門性の深掘り」と「横の連携」の両方を実現しています。迅速かつ密なノウハウ共有やシナジーが創発される体制です。
財務規律:投資の質と量のバランス
GENDAは、借入をしながらM&Aを進めていますが、明確な規律を持っています。
Net Debt/EBITDA倍率 = 1.5倍
これは何を意味するかというと、「借入を1.5年で返済できる状態」を維持しているということです。
- Net Debt:借入金の合計(現金を引いた正味の借入)
- EBITDA:本業で稼ぐ力(のれん償却などを除いた営業利益)
- 倍率が低いほど、財務が健全
また、29社以上の金融機関と取引してリスクを分散。1つの銀行に依存しない体制を作っています。
投資の質と量のバランス
GENDAは「投資効率の基準を守りながら、投資額を最大化する」という方針を掲げています。
GENDAのアプローチ:
- 投資効率の良い案件には積極的に資源を投下
- 投資効率の悪い案件は改善するか、見切りをつける
- 「質の悪い投資はしないが、質の良い投資は積極的に拡大する」という姿勢
地方企業への応用:投資の見極め基準を持つ
既存事業の見極め:
- 過去3年の売上・利益の推移を確認
- 伸びている事業:リソースを追加投入
- 停滞している事業:改善策を3ヶ月試して、効果がなければ縮小を検討
新規事業の見極め:
- 最初の3ヶ月で小さく試す(パイロットテスト)
- 顧客の反応を見て、拡大か撤退かを判断
- 「もう少し頑張れば…」ではなく、データで判断する基準を持つ
AI活用:効率化と売上向上の両立
GENDAは、AIを積極的に活用して、オペレーションの効率化と売上向上を実現しています。
①データの最適化(GiGO:景品流通の最適化)
課題:
- プライズゲーム(クレーンゲーム)の景品が、人気店では品切れ、不人気店では在庫過多
- 機会損失(売り逃し)と廃棄の両方が発生
AI活用:
- 各店舗の景品の動き(何がどれだけ取られているか)をデータ化
- AIが需要を予測して、最適な配送計画を立案
- 人力では検証が不可能だった無数の割振パターンを、AIのマシンパワーで総当たり計算
- 品切れと廃棄を大幅に削減
②オペレーションの自動化(SMART EXCHANGE:現金補充の最適化)
課題:
- 外貨両替機320店舗の現金補充を、人力で計画していた
- 配送ルートが非効率で、人件費と物流費がかさむ
AI活用:
- 全国320店舗の配送ルートをAIで最適化
- CMS(Cash Management System:全社資金管理システム)と組み合わせて資金効率を改善
③顧客データの活用(Brand Tracker)
課題:
- 270万人のGENDA ID会員がいるが、誰にどんなマーケティングが効くかわからない
AI活用:
- 49個のBrand Image項目を調査・クラスタリング
- シェアに直結する因子を統計的に特定
- セグメント別のキャンペーン認知を分析
- 認知に伸びしろがあるセグメントに広告を集中投下
- 結果:高いROAS(広告費用対効果)で売上を大幅に伸長
地方企業でもできるAI活用
「AIなんて、うちには関係ない」と思われるかもしれません。しかし、小規模でも使えるAIツールは増えています。
すぐに始められるAI活用:
- 需要予測:Googleスプレッドシートのアドオンで、過去の売上データから発注量を予測
- 顧客対応:ChatGPTを使って、よくある質問への回答文を作成
- 画像認識:商品の検品や在庫確認をスマホアプリで自動化
少し本格的なAI活用:
- 配送最適化:外部サービス(配送ルート最適化SaaS)を月数万円で利用
- CRM:LINE公式アカウントで顧客データを蓄積し、セグメント別配信
重要なのは、「すべてをAIで」ではなく、「一番効果の高い部分から試す」ことです。
あなたの会社でできることは?
「うちには25名も採用する余裕はない」と思われるかもしれません。でも、考え方を変えれば実践できます。
ステップ1:「本社機能」と「現場機能」を分ける
複数店舗や複数事業を持つ企業なら:
- 本社:メニュー開発、マーケティング、財務、IT
- 店舗:接客、オペレーション、地域顧客との関係
製造業なら:
- 本社:営業戦略、財務、人事、技術開発
- 工場:製造、品質管理、納期管理
全員が全部やろうとせず、役割を明確にすることが第一歩です。
ステップ2:本社機能は3-5名でスタート
必須機能(優先順位順):
- 財務・経営管理 → 数字で経営を見る
- マーケティング → 顧客を理解する
- IT/DX → 効率化を進める
- 人事・組織 → 人材を育てる(最初は兼任可)
兼任でも構いません。重要なのは「誰が何の専門家か」を決めることです。
ステップ3:外部人材を活用する
すべて自社で抱える必要はありません。
- マーケティング:副業人材を週1日、月10万円で活用
- IT:外部のエンジニアと契約
- 財務:税理士や会計士と密に連携
「コア人材3-5名 + 外部専門家ネットワーク」の方が、柔軟で効率的です。
ステップ4:会議体を設計する
GENDAの3層構造を参考に:
- 部門別会議(営業、製造、総務など)
- プロジェクト別会議(新商品開発、店舗改装など)
- 全体会議(月1回、各部門の状況共有)
最初は全体会議だけでもOK。徐々に部門別会議を追加していきます。
ステップ5:財務規律を自社なりに設定
GENDAのように「1.5年で返済できる借入」という規律を参考に:
- 「借入は年商の○○%まで」など、自社なりの上限を設定
- 複数の金融機関と取引(最低3行以上)
- 月次で借入残高と返済計画を確認
「なんとなく借りる」ではなく、「規律を持って借りる」ことが重要です。
ステップ6:投資判断の基準を持つ
GENDAの投資判断から学べることは、「投資の見切り基準を持つ」ことです。
地方企業でも:
- 新規事業は3ヶ月で見切りをつける基準を設定
- 既存事業も、過去3年の推移を見て判断
- 「伸びている事業に集中、停滞している事業は縮小」を徹底
ステップ7:共通機能を集約してコスト削減
即効性が高い施策:
- 電気・ガス契約を一括見直し
- 印刷物・制服・消耗品の共同購入
- ITツールのグループライセンス契約
これだけでも、年間で大きな削減効果が見込めます。
ポイント③ 「施策の体系化とGENDA ID」から学ぶ、シナジー創出
GENDAの施策一覧:やることを「見える化」する
GENDAが全案件で成功する理由は、PMI施策を体系化していることにあります。
ゲームセンターでのPMI施策例
| 施策の種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 売上向上 | |
| 1 | GiGO限定景品を含む景品ラインアップの拡充、最適な景品ラインアップの提供 |
| 2 | GiGOのデータベースに基づく適切なゲームミックスにするためのプライズゲーム機の増台や機器融通 |
| 3 | GiGOのマニュアルやレイアウトのノウハウを水平展開 |
| 4 | 顧客向けアプリ(GiGOアプリ)や従業員向けアプリ(GiGO NAVI)、デジちゃいむ等のDXツールの活用 |
| 5 | 外観改修 + ブランド変更(内外装・機器・景品をセットで刷新) |
| コスト削減 | |
| 1 | グループに入ることでメーカーからゲーム機を一括して直接購入し、仕入れ価格を抑制 |
| 2 | グループ全体で一括して仕入れることで、景品の仕入れ価格および物流費を押し下げ |
| 3 | 外注していた修理をグループ内で完結 |
| 4 | GiGOで一括契約している清掃会社に委託することで、定期清掃費をコストダウン |
| 5 | 共通インフラ(システム、本社機能)の活用によるコスト圧縮 |
この施策一覧を見ると、売上向上とコスト削減の両方を同時に追求していることがわかります。
売上が伸びると、利益はもっと伸びる
ゲームセンタービジネスは、限界利益率(粗利率)が約70%です。
これが何を意味するかというと:
- 売上が10%増えると、利益は10%以上増える
- 例:宝島では売上122%に対して、利益は133%
つまり、売上向上の効果が、利益に対してレバレッジがかかるのです。
GENDA ID:270万人の顧客基盤でシナジー創出
GENDAは2024年に共通アカウント「GENDA ID」を立ち上げ、現在約270万IDを保有しています(2025年10月1日時点)。
メリット:
- 機能共通化による投資・インフラコスト削減
- 各社が個別にシステムを持つ必要がない
- 共通基盤で効率化
- 複数サービス利用の促進
- GiGOで獲得した会員がBanBanでも使える
- 相互送客によるシナジー
- 横断的な顧客データ分析基盤の整備
- 270万人の行動データを分析
- セグメント別のマーケティング施策を高度化
これにより、グループ全体でのシナジー(相乗効果)を最大化しています。
あなたの会社でできることは?
ステップ1:施策を「売上向上」と「コスト削減」で整理
GENDAの施策一覧から学べるのは、「やることを体系化する」ことの重要性です。
地方企業でも:
- 売上向上施策を5つリストアップ
- コスト削減施策を5つリストアップ
- 各施策の費用対効果を試算
- 優先順位の高いものから実行
例(飲食店の場合):
- 売上向上:新メニュー、SNS活用、リピーター施策、ランチ強化、テイクアウト
- コスト削減:電気契約見直し、仕入先見直し、シフト最適化、廃棄削減、業務効率化
ステップ2:成功パターンを横展開する
GENDAがやっているように、優良店舗のノウハウを他店舗に展開します。
地方企業でも:
- 売上の高い店舗の接客方法をマニュアル化
- 効率の良いオペレーションを他店舗に展開
- 優良店舗の店長に他店舗の研修を担当してもらう
これだけで、全体の底上げができます。
ステップ3:共通IDで顧客を統合する
GENDA IDのような本格的なシステムは難しくても、簡易版なら可能です。
地方企業でも:
- 複数店舗で共通のポイントカードを導入
- LINE公式アカウントで顧客を一元管理
- Googleフォームで顧客情報を収集・統合
まずは簡易的な仕組みから始めて、徐々に高度化していくことが重要です。
まとめ:GENDAから学ぶ、自社の成長戦略
GENDAの成功の本質は何か?
GENDAは、2025年10月時点で55件のM&Aを実行し、PMI施策を実施した全てのゲームセンターで増収・増益を達成しています。
その成功の裏には、3つの土台があります。
1. 確立された価値提供の手法
- 限定景品の開発ノウハウ
- データに基づくゲーム機配置の最適化
- 成功店舗の運営マニュアル
- DXツール(アプリ、システム)
2. 蓄積された顧客基盤
- GENDA ID:270万人の会員データ
- 顧客の行動データ(来店頻度、利用金額、好みなど)
- Brand Tracker(49個の指標で顧客理解)
3. 整備されたデータ基盤
- 全店舗の売上・利益データがリアルタイムで見える
- AIによる需要予測、配送最適化
- 経営KPIダッシュボード
だからGENDAは同業種や技術応用可能な業種のM&Aで成功する
GENDAがゲームセンターだけでなく、カラオケ(BanBan)、外貨両替機(SMART EXCHANGE)でも成功できるのは、この3つの土台があるからです。
- ゲームセンターで培ったデータ分析とマーケティングの手法を、カラオケにも応用
- GENDA IDで、ゲームセンターとカラオケの顧客を相互送客
- AI活用のノウハウを、外貨両替機の配送最適化にも転用
つまり、「自社の強みを明確にし、それを他の事業にも展開できる仕組み」を持っているのです。
あなたの会社が今日から始めるべきこと
ステップ1:自社の強みを明確にする
GENDAの成功から学ぶべき最初のステップは、「自社の強みを言語化する」ことです。
問いかけ:
- 自社が他社より優れているものは何か?
- 顧客に選ばれる理由は何か?
- 蓄積されたデータや顧客基盤はあるか?
- 他の事業にも応用できる手法やノウハウはあるか?
これを明確にすることで、次の打ち手が見えてきます。
ステップ2:フェーズに合った改善策を取り入れる
GENDAの「最初の100日」から学べることは、自社のフェーズに応じて取り入れることができます。
創業期・立ち上げ期の企業なら:
- Quick Win(3ヶ月で成果が出る小さな目標)を設定
- 月1回の施策実行サイクルを確立
- データを見える化(エクセルでOK)
成長期の企業なら:
- 専門機能を整理(財務、マーケティング、IT)
- 3層の会議体を設計(部門別、プロジェクト別、全体)
- 顧客データを分析して、ターゲットを2-10個に分類
拡大期の企業なら:
- AI活用で効率化(需要予測、配送最適化、CRM)
- PMI施策を体系化(売上向上×コスト削減)
- 投資判断の基準を設定(何に投資し、何を見切るか)
ステップ3:M&Aだけでなく、協業や連携を模索する
GENDAのM&A戦略から学べるのは、「すぐにM&Aをする」ことではありません。
重要なのは、「自社の強みを活かして、他社と連携する」という考え方です。
M&Aまでできなくても:
- 同業他社との業務提携(共同仕入れ、共同広告)
- 異業種との協業(相互送客、共同イベント)
- 外部人材の活用(副業マーケター、外部エンジニア)
例:
- 複数の飲食店で共同仕入れを行い、コストを削減
- 地域の複数店舗で共同ポイントカードを発行
- ITツールを共同で導入し、グループライセンスで費用削減
GENDAがGENDA IDで270万人を統合したように、小規模でも「連携」によるシナジーは生み出せます。
ステップ4:自社の「再現性のあるノウハウ」を作る
GENDAが55件すべてで成功できるのは、「再現性のあるノウハウ」を持っているからです。
あなたの会社でも:
- 成功した営業手法をマニュアル化
- 優良店舗の運営方法を言語化
- 顧客に喜ばれたサービスをパターン化
これができれば、2店舗目、3店舗目を出す時や、新しい事業を始める時に、同じ成功を再現できます。
最後に
GENDAの事例から学べることは、自社の強みを明確にし、それを活かせる領域に展開する。そのために、仕組みを整え、データを活用し、連携を模索する。
このような学びを活かして実践していきましょう。
「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。

執筆者 : 佐久間 一己 (さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカルグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店を設立。BtoB事業でWEBメディアを立ち上げオーガニック流入を3か月で20倍に伸ばすなど、シード/シリーズAの知名度・ブランドが乏しい時期のマーケティング手法を地方企業向けにアレンジします。






