ローカルグローススタジオは、「地方企業にスタートアップのような成長を」というテーマで、コンテンツ発信と支援サービスを展開しています。この記事では、実践的なビジネスノウハウを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
この記事は、「地方企業でも使える!スタートアップがよく使う無料マーケティングツール入門」について記載しています。
なぜ今、マーケティングツールが重要なのか
「うちはまだデジタルマーケティングは早いかも…」 「高額な費用がかかりそう…」 「専門的な知識がないと使いこなせないのでは?」
地方企業の経営者からよく聞く声です。こうした疑問や懸念は、私が地方で起業した際にも抱いていたものでした。しかし、実は無料で使える優れたツールがたくさんあるのです。
デジタルマーケティングツールの重要性は、ここ数年で急速に高まっています。その理由はシンプルです。顧客の行動がデジタル上にシフトしているからです。特に地方企業にとっては、限られた商圏を超えて顧客にアプローチできる可能性が広がります。
今回は、スタートアップ企業がよく活用している無料マーケティングツールをご紹介します。これらは地方企業でも十分に活用可能で、しかも効果の高いものばかりです。専門知識がなくても基本的な機能から段階的に活用していくことで、大きな効果を生み出すことができるのです。
基本の4つのツール
まずは、デジタルマーケティングの基盤となる4つの無料ツールについて解説します。これらは互いに連携することで、より効果的なマーケティング活動を支援してくれます。
1. Googleアナリティクス
ウェブサイトの基本的な分析ツールです。訪問者の数や属性、行動パターンを分析することができます。
主な機能:
- アクティブユーザー数の確認
- リアルタイム訪問者数の把握
- アクセス元の分析
- 滞在時間や離脱率の確認
- コンバージョン(成果)の計測
サイトの状態を把握する基本的なツールとして、最初に導入すべきです。特に「どのページが人気なのか」「どこから来訪者が来ているのか」を知ることで、効果的な改善につなげることができます。
2. Googleサーチコンソール
検索エンジンからの流入を分析するためのツールです。ここで注目してほしいのが「表示回数」というKPIです。実はページへの訪問数以上に重要な指標なのです。なぜなら:
- どれだけのユーザーに選択肢として表示されたか(機会の大きさ)
- どんな検索ワードで表示されているか
- 実際のクリック率はどうか
という「見られる機会」を測定できるからです。
この「表示回数」と「クリック率」を最大化していくことで、自然検索(オーガニック)からの流入が着実に育っていくのです。サーチコンソールで得られるデータは、コンテンツ戦略の方向性を決める重要な指針となります。
3. Googleタグマネージャー
様々な計測ツールの設置を簡単にしてくれる便利ツールです。通常、各種分析ツールの導入には、サイトのソースコードに「タグ」と呼ばれるプログラムコードを埋め込む必要がありますが、タグマネージャーを使えば一元管理が可能になります。
主なメリット:
- 計測タグの一元管理
- 設定変更の柔軟性
- エンジニアに依頼しなくても運用可能
タグマネージャーは、他のツールをスムーズに導入・運用するための基盤として、早い段階で導入しておくことをお勧めします。
4. HubSpot(無料版)
問い合わせ管理の基本となるツールです。お問い合わせから顧客管理までをカバーする総合的なマーケティングツールで、無料版でも十分な機能が提供されています。
主な機能:
- 簡単な操作で問い合わせフォームが作成可能
- メールやSlackへの通知連携
- CRMとしてデータベースに顧客情報を蓄積
- 顧客との対応履歴の記録
- メールマーケティング機能(月間2,000通まで無料)
HubSpotの無料版は、問い合わせ管理だけでなく、簡易的なCRMシステムとしても活用できるため、地方の中小企業にとって非常に大きな武器となります。
Ahrefsで見えてくる新しい世界
上記4つは基本的な初期設定のツールですが、今回、私が特にお勧めしたいのがAhrefsです。実は、多くのデジタルマーケティング代理店が活用している非常に有能なツールなのです。
Ahrefsは、無料プランがあり、競合分析などの重要なデータを取得しておくことで、その後の戦略立案に大きく役立てることができます。
Ahrefsでは以下のような分析が可能です:
1. SEOのキーワード分析
- オーガニックキーワード数の把握
- オーガニック流入数の推移
- 競合サイトとの比較分析
- キーワードごとの検索ボリュームの確認
- 検索意図の分析(情報収集目的か購買目的か)
2. ドメインの強さを測定
- 被リンク(他サイトから貼られているリンク)の分析
- 参照リンク(自サイトから貼っているリンク)の確認
- ドメインランクの測定
- 競合サイトとの比較
- コンテンツギャップの特定(競合が上位表示されていて自社が表示されていないキーワード)
特筆すべきは、過去数十年にわたるインターネットのログを保持している点です。自社ドメインが過去からどのようなパフォーマンスを出してきたのか、ヒストリカルに確認することができるのです。
実際の活用方法としては:
- 自社サイトの現状分析
- オーガニックキーワードのボリュームと順位を分析
- 強いページと弱いページの特定
- 改善の優先順位付け
- 競合サイトの設定と比較
- 同業他社の分析
- 競合が上位表示されているキーワードの特定
- 被リンク状況の比較
- 継続的な対策とその効果測定
- 重点キーワードの設定
- コンテンツの改善
- 定期的な効果確認
このサイクルを回すことで、着実にSEOの改善を図ることができます。
各ツールの具体的な活用法
それでは、これらのツールを実際にどのように活用していくのか、具体的な例を見ていきましょう。
Googleアナリティクスの活用法
- サイト改善のPDCAサイクル
- 最も離脱率の高いページを特定し、改善する
- モバイルとPC、それぞれでの使いやすさを確認
- 滞在時間の長いコンテンツの特徴を分析し、他のページにも適用
- 流入元の最適化
- どの流入元(検索、SNS、他サイトなど)からの訪問者が問い合わせにつながりやすいかを分析
- 効果の高い流入元に重点的にリソースを配分
- コンバージョン計測の設定
- 問い合わせや資料ダウンロードなど、重要な行動を「目標」として設定
- 目標達成までの導線を分析し、ボトルネックを特定
サーチコンソールの活用法
- キーワード戦略の立案
- 表示されているが、クリックされていないキーワードを特定
- メタディスクリプション(検索結果に表示される説明文)の改善
- 新たなコンテンツの企画につなげる
- 技術的な問題の特定と修正
- モバイルユーザビリティの問題点を確認
- インデックスエラーの修正
- サイトマップの最適化
- 季節変動の分析
- 時期によって検索されるキーワードの変化を把握
- シーズン前に適切なコンテンツを準備
タグマネージャーの活用法
- 詳細な行動分析
- フォームの入力開始数と完了数の差を計測
- スクロール深度の測定(どこまで読まれているか)
- 外部リンクのクリック計測
- マーケティングタグの一元管理
- Google広告、Facebook広告など、各種広告タグの管理
- リマーケティングタグの設置
- コンバージョン計測の精緻化
HubSpotの活用法
- 顧客管理の効率化
- 問い合わせ履歴の一元管理
- 対応状況の可視化
- フォローアップのタイミング管理
- メールマーケティングの実施
- 見込み客へのフォローメール
- ニュースレターの配信
- 開封率・クリック率の分析
- 顧客育成フローの設計
- 初回問い合わせからの段階的なアプローチ
- 顧客セグメントごとのコミュニケーション設計
- 再購入・リピート促進策の実施
地方企業での実践ステップ
地方企業がこれらのツールを導入・活用していくための具体的なステップを提案します。
Step 1: 基盤の整備
- Googleアナリティクスの設置
- Googleサーチコンソールの登録
- タグマネージャーの導入
- 基本的な計測タグの設定
ここで重要なのは、「とりあえず導入して計測を始める」という点です。完璧を目指すよりも、まずはデータ収集を開始することが第一歩です。
Step 2: データ収集と分析
- アナリティクスでのユーザー行動分析
- サーチコンソールでの検索キーワード分析
- HubSpotでの問い合わせ管理開始
- Ahrefsのトライアル期間を活用した競合分析
この段階では、「現状を正確に把握する」ことに集中します。特に「どんなキーワードで検索されているか」「どのページが人気か」といった基本情報の収集が重要です。
Step 3: 施策の実行
- 分析結果に基づくサイト改善
- 重要キーワードに対するコンテンツ強化
- 問い合わせフォームの最適化
- メール配信の開始
データに基づいて、実際の改善施策を実行していきます。簡単に成果が出せる部分から着手することで、モチベーションを維持しながら進めることができます。
Step 4: 測定と改善
- 施策の効果測定
- PDCAサイクルの確立
- 定期的な競合分析
- 新たな施策の検討
このサイクルを回していくことで、継続的な改善が可能になります。3ヶ月に一度は大きな振り返りを行い、次の期間の方針を決めていくとよいでしょう。
用語解説
ここで出てきた専門用語を整理しておきましょう。
- オーガニック流入:Googleなどの検索エンジンで自然に見つけてもらい、広告費用をかけずにサイトに訪れてくれる訪問者のこと。
- ドメインランク:大手メディアからの被リンクなど、外部からの評価によって決まるサイトの信頼性を示す指標。
- タグ:アクセス解析やコンバージョン測定のために、ウェブサイトに埋め込む計測用のプログラムコード。
- CRM(Customer Relationship Management):顧客との関係性を管理し、問い合わせ履歴や対応状況を一元管理するためのシステム。
- SEO(Search Engine Optimization):Googleなどの検索エンジンで上位表示されるようにサイトを最適化する施策の総称。
- KPI(Key Performance Indicator):アクセス数や問い合わせ数など、目標達成度を測るために設定する重要な評価指標。
- アクティブユーザー:特定の期間内に実際にサイトを訪れて行動を起こしているユーザーの数。
- コンバージョン:商品購入や資料請求など、サイト上で最終的に目指している成果につながる行動。
- 被リンク(バックリンク):他のウェブサイトから自社サイトに向けて張られているリンクのこと。
- キーワードボリューム:特定の検索キーワードが月間でどれくらい検索されているかを示す数値。
- リアルタイム分析:現在サイトを訪れているユーザーの数や行動をリアルタイムで把握する機能。
- フォーム:問い合わせや資料請求など、ウェブサイト上で情報を入力してもらうための仕組み。
これらの用語を理解することで、各ツールの機能や報告書の内容がより分かりやすくなるはずです。まずはこの基本的な用語から、少しずつ理解を深めていきましょう。
まとめ:地方企業でも始められる第一歩
これらのツールは、決して大企業やスタートアップだけのものではありません。
むしろ、地方企業だからこそ、限られた予算で最大限の効果を出すために活用すべきツールだと考えています。
実践のためのステップを再確認しておきましょう:
- まずはGoogleアナリティクスとサーチコンソールの設定から
- タグマネージャーで計測の基盤を整える
- HubSpotで問い合わせの管理を始める
- Ahrefsの無料プランで競合分析と改善策の検討を行う
また、これらのツールの導入・活用は、必ずしも社内だけで完結させる必要はありません。マーケティングの専門家に相談することで、より効率的に進めることも可能です。
「ビジネス知の機会格差をなくす」という私たちのミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひご連絡ください。

執筆者 : 佐久間 一己 (さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカルグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店を設立。BtoB事業でWEBメディアを立ち上げオーガニック流入を3か月で20倍に伸ばすなど、シード/シリーズAの知名度・ブランドが乏しい時期のマーケティング手法を地方企業向けにアレンジします。